表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/2

出会い

夕日の残光が闇に融けて辺りが薄暗くなった頃、僕は公園のブランコに腰を下ろし、漂う静寂の中、浮かぶ波の音を聞くとはなしに聞いていた。冬の風が強く吹き付け、体温が少しずつ奪われていく。目を閉じると自分の存在が薄れて、消えていく感じがした。


目を開けるとすぐ近くに少女が立っていた。

「おじさん、大丈夫?」

二十代の半ばを過ぎたばかりだったので、おじさん、という言葉に少なからぬショックを受けつつ、なぜ僕に話しかけてきたのだろう、と思っていると「どうして泣いているの?」と少女はさらに訊いてきた。

その言葉を聞いて初めて、自分の頬をつたう涙に気づいた。

「こんな遅くに一人で出歩いちゃ駄目だろう」僕が少女の問いには答えずそう言うと、少女は悲しげな表情で「ごめんなさい」とつぶやいた。僕は心配になり

「ご両親は?」と訊ねた。

少女は泣きそうな顔で首を横に振った。

「死んじゃった」

僕はかける言葉が見つからず黙り込んでしまう。


吹き付ける風の音と潮の匂いが僕らを包み込む。揺れる木の葉。点滅する常夜灯。

少女は何かを言いたそうにしているがなかなか口を開かなかった。僕から聞き出すこともしなかった。二人の間には長い沈黙が続いていた。


寒さと沈黙に耐えられず立ち上がると、少女は僕の腕をつかみ

「私をあなたの家に住まわせてください」と言った。





評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ