お題もの、その11
それは僕の一日の中でも、一番何もない時間。
深夜3時くらいの、穏やかな時間。
普通の人、というか子供は寝ているために空白となっている時間に僕は起きていた。
ぴこーん、ぴこーん。
「・・・・・・・・・・・・・・・・」
テレビから発せられる光を無言で浴びつつ、ゲームをしていたのだ。
眼鏡を通してもまだ明るいこの光は、僕を何時までも照らしてくれる。
体にも、目にも悪いのは分かってはいる。
でもやはり日頃のストレスと戦うためには、ゲーム内で戦って経験値をためなくてはならない。
あと一週間くらいで、僕はレベルアップする予定なのだ。
ゲーム内の僕はその間に十倍以上のスピードで成長していくのだけれども。
ぴこーん、ぴこーん。
てれれれれーん。
体力を回復するためのアイテムを取得した。
さくらんぼのアイコンのは半分くらいまで一気に回復する。
いつもじり貧と言うか、体力の限界まで戦っているのでありがたい。
二個あれば完全回復だから。
おいしいったらありゃしない。
出現回数が限られているからこその縛りプレイであるのだけれど。
ちょこちょこ出る回復アイテムだって取っていればもっと簡単なのだろう。
敢えて縛ることに意味があるようにも感じている。
だって、これは、僕の経験になるのだから。
ぴこーん、ぴこーん。
「・・・・・・・あ」
でででーん。
ちょっと手が滑った。
体力がギリギリだったせいで、仮想の僕は死んでしまった。
こんなところで、と悔しい思いをかみ殺して台所へ一時退避。
水を確保して、一息に飲み込む。
冷たくて気持ちいい。
たまにはこんなリアルもいいのかな、と思ってはゲームに戻る。
きっと僕は死ぬまでこうやって現実と、ゲームを行き来して生きるのだ。
ずっと一人で、孤独にソロプレーヤーとして。