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ソラ脱出

「ゼオン組にムシャクシャしてやった。今は反省している。だからもう帰っていい?」


 空はゼオン組で暴れ、ゼオンに暴力を振るった件で警察に取調べを受けている。見るからに反省してないテンプレ通りの答えに対し、警察は呆れ顔をしている。


「そうは言っても、ゼオンは街の有力者で外部警邏隊の長を務めている。そんなゼオンに怪我させたお前が外部からの刺客という疑いもある。簡単には帰すわけなかろうよ」

「警邏隊長って、あんなよわっちいヤツがかい?」

「ゼオンは盗賊を返り討ちにして今の地位を築いたんだぞ」


 ゼオンと言う男は元は小さな地主の子として生まれた。ゼオンは並外れて腕っ節が強く、街の不良を力で纏め上げた。その組織力を使い、土地を強引に貸付て利益を上げてきたのである。典型的な成金であった。

 そんなゼオンが王都へ行く途中、成金丸出し格好をしていたために盗賊に襲われると言う事件が起きたのだが、ゼオンはほとんど一人でその盗賊を返り討ちにしてしまう。

 ゼオン一行は4人だったが、盗賊は10人いた。その10人をほとんど一人で片付けたゼオンの名声は王都でも上がり、それを機にゼオンはすぐに『ラテル外部警邏隊』の組織化を王国に申請し、承認を受けている。


 外部警邏隊を率いることになったゼオンはますます力を強め、周囲に対して威張り散らすようになった。元は不良の元締めである。もともと成り上がり者として街の評判もよくない。

 さらに言えば警邏隊と称して、ラテルの街に来る商人たちに難癖をつけ、通行料として金品を巻き上げたり、捕らえた盗賊でも年若い女性などは慰み者にしてから奴隷商に売り飛ばすなどやりたい放題であった。

 実際に空がゼオンをいたぶってる時、参加はしないが止めもしないという街の住民の態度からもゼオンの嫌われっぷりが見て取れる。


 空はそんなゼオンをあっさりと全裸に剥き、屈服させたのである。警察にしてみればそんなゼオンをリンチしたことなどは瑣末な問題であって、警察が気にする問題とは『空が外部からの刺客なのではないか?』という疑問であった。

 フェンリル王国に無い未知の力。神森国かドラゴナイル国からの刺客か。いずれにせよ詳細がわかるまで刑を確定することは無いと、警察は方針を決めている。


「刺客ねぇ。まあそんな気は無いと言っておくよ。なにしろこの世界のことはさっぱり判んないからな。逆にいろいろと教えて欲しい」

「フム。アオイソラと言ったね。では単刀直入に聞こう」

「ん?」

「君は何者だ? どこから来たんだ? その力は?」


 三つの質問には答えは決まっている。地球と言う星から転生してきた人間だと。力は死神の少女からもらったものだと。空ははっきりと答えたのだった。


「真面目に答えてくれないか? そんなことあるわけ無いだろう。いつまでも帰れないぞ!」


 警察は茶化されたと思い、空にこんなことを言うのだが、空はすべて正直に答えている。少し考えたあとで名案を閃いた空は取調べしている警察官にこう提案する。


「実際に異星人なんだから仕方ないだろう。じゃあこうしよう。とりあえず俺を留置所に入れてくれ。一晩たって俺がそこにいなかったら認めてくれよ」

「脱走するつもりか。まあ出れるはずは無いからまあいいだろう。もう今日は遅いし、本格的な取調べは明日以降からにしよう」


 もう遅い時間だからと言う警察から、すでに深夜だと気付く空。初の異世界での生活に興奮してすっかり忘れていたが、今になって眠気がわきあがってくる。さっさとしてほしいと思う空だが、心配をよそにあっけなく留置所に入ることを認められ、そこに入った空。重厚な壁と太い鉄格子に囲まれた典型的な牢屋だ。一応トイレはあるらしい。


「おとなしく待っていろよ。まあ、出れっこないがね」


 警察はよほど自信があるようで見張りも置かずに立ち去る。ただ眠いだけかもしれないが。しばらくしてあたりに静寂が訪れたとき、空は動き出す。


「ふむ、鍵はかかってる。鉄格子も体が入り込む隙間も無い。壁は重厚そうだ。さすがに自信を持ってるだけはある。しかし……」


 鍵を壊すか鉄格子をねじるか迷ったが、空はちょっとした悪戯を思いつき、実践する。

 まずは鉄格子を馬鹿力でひねり身体をねじ込める隙間を作り、外に出る。そして鉄格子をまっすぐ元に戻すという作業をする。


「馬鹿力でつくる密室トリックってね」


 こうして難なく牢屋から出た空は、近くの窓を開け、外に飛び出すのだった。

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