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ソラと警察と

「逮捕…って!?」


 突然の事態に呆気にとられる空とブギたち4人。しかし、冷静に考えれば当たり前の話である。なにしろ勝手に乗り込んで家主のゼオンを裸にしてここまで引きずってきたのだから。警察が騒ぎを聞きつけてやってくるのも当然と言えた。


 ――――そういえば確か警察もグルだったな。


 空はそう考えるとあっさりと罪を認め、おとなしくお縄につくことにする。


「ソラ…」


 不安そうなマリィたちが空に声をかけるが、空は明るく笑いながら


「大丈夫だ。ゼオンが罪を認めたんだ。それに…」

「それに…?」


 マリィが聞き返す。


「俺は捕まらないよ」


 警察が顔をしかめ、そのまま空を連れて行こうとするが、空はゼオンに顔を向けて冷たく言い放つ。


「おい、ブタ。テメーも来い」

「ブヒッ!」


 警察の二人が怒鳴りながら空を連行しようとするが、空は身じろぎすらしない。警察の二人はどうしたものかと困惑する。そんななか空は警察の二人を無視してゼオンの腕を引っ張ると、


「ブヒイィイイ!」

「オイ! 何をやってるんだ! ケガ人だぞ!」


 あわてて警察が止めるが、空は警察の二人をぎろりと睨み、


「このゼオンが警察にも仲間がいるっつってんだ。ソイツ引っ張ってこねぇと院長先生が浮かばれねーだろ?」


 院長先生が誰なのか分からなかったのか警察の二人は目を合わせ、誰だっけという顔をする。

 やれやれと空とマリィたちが警察に孤児院の先生だと説明する。4年前に行方不明になっていたが、ゼオンにより殺害されていたこと、ゼオンが殺害を自供したことを説明すると、あの兎人族の先生の事かと警察の二人は納得する。


 警察の二人は、ゼオンが彼女を殺害しているならば、事情を聞くのは必要だと理解した様子だったが、ケガ人を連れて行く訳にはいかないの一点張りで、空は仕方なく作戦を変えゼオンに問いかける。


「オイ、ブタ! 警察の仲間の名前教えろ」

「………そ、それは」


 ゼオンは気まずそうに押し黙っている。それを見た空は警察の前で言えるわけも無いよなと考え直し、ブギたち4人に付き合うように言う。


「ブギたちもよく考えりゃゼオン組なんだよな。だれか警察で息のかかったヤツ知ってるんじゃねぇか?ちょっと俺と警察来て知ってるヤツ教えてくれよ」

「な、仲間を売れないよ!」

「アタイらそこまで偉くないしねぇ」

「まあ、俺たちを殴ったやつは何人もいるかもしれない」

「ソイツらなら教えてあげるよ」

「「「あははははは」」」


 ブギたちは空の前で楽しそうに笑いあう。

 一方でゼオンを治癒術氏のところへ運ぶための術氏が着たようで、警察が指示している。

 ゼオンが空により酷い目にあったことは街の人の知るところであり、この件が警察にも話が行っていることを考えると、空はとりあえずつかまって寝て話を聞いて脱走すればいっかと軽く考える。そうするとブギたちはいない方がいいかもしれない。

 ゼオンも話す気はないだろうし、一人で乗り込んで行った方が他人を巻き込まないだろう。そう決めた空は警察に一人でいい旨を告げる。


「え、アタイらは行かなくていいの?」


 マリィが驚いた表情で空に詰め寄る。空はマリィの頭をなでながら、


「すぐ帰ってくるからおとなしく待ってろ」

「うん」


 マリィは空の神懸った力を目にしているせいか素直にうなずく。

 二人を見た警察がそろそろいいかと聞き、空もうなずく。手錠とかかけないのか聞いたらどうやら忘れていたらしく、あわてて取り出していた。


「意外に素直に捕まるんだな?」


 意外な素直さに警察の二人はちょっと驚いたようだ。

 まあ、空にしてみればゼオンのような権力者にはそれ以上の暴力で対抗し、それ以外の普通の住民には普通に接するつもりだったので、驚かれたことにちょっとショックを受ける。


「まあ、暴れたのは事実だしな。それよりゼオンに言っとけ。家を掃除して待ってろって」

「うん、帰って掃除しておくよ」

「もし組の連中に酷い目にあったら警察に来い。すぐに乗り込んでやるから」

「確かに簡単に脱走しそうだな」


 ブギのその言葉にみんなうんうんとうなずいている。

 警察の二人は疑っているようだがそれも無理のないことだった。実際脱走できるのだが。


「じゃあな。ちょっと行って来るわ」


 そう言って空は警察に行く。


 そんな空を遠くから紫の瞳が見つめる。


「あの男からはマナをまったく感じぬ。それでいてあの膂力。ふむ、おもしろそうじゃのう」


 星明りを背に、ふさふさとした白銀の尻尾を揺らし、銀狼フェンリルは静かに微笑んでいた。




 

 

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