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ゼオン組潜入

 ゼオン組に向かう空。といっても建築屋の向かいにあるのですぐ目の前にある。そこに足を向けながら4人にいろいろと確認する。


「なあ、おまえらも人を殺したりしたのか?」

「し、してない。してないよ!」

「ああ、俺たちは片付けとかしかさせてもらってない」

「兄貴は死体運ばされたっていってたけど…」

「マリィ、思い出させんな」


 どうやらこの子達は下っ端の4人組らしい。たしかに場を片付ける人材も必要であり、ひ弱そうな少年少女にはそれぐらいしかできないだろう。今後は荒事をするかはわからないが。


「お、ここがゼオン組だな。おいブギ、ゼオンがいるか確認して来い。いるんだったら『力自慢の弱人族』がゼオン組に入りたがってるから会ってくれって言って来い」

「えー…、会いたくないよぉ…」


 お互いに押し付けあう4人。どんだけゼオン嫌われてるんだよと思いながら空は作戦を変更する。


「わかった。いるかどうかだけ調べてくれればいいよ」

「ん、それならいい」


 そう言ってマリィが守衛のところに聞きに行く。いなかったらどうしようかと考えてるところにマリィが戻ってきた。


「いるってさ」

「んじゃ、行って来る。お前らはこの金でメシでも食って来い。」


 そういってひとりひとりに金貨1枚ずつ渡す。


「この金貨はここまでの情報料だ。大事に使えよ」

「え、いいのか?こんな大金」

「うわあ! アタイ金貨触ったのはじめてだぁ!」


 はしゃぐマリィたちをよそに、ブギが心配そうに聞いてくる。


「なあ、本当にやる気なのか?」

「ん? ゼオン組は街の人も嫌がってるし。もうゼオン組なんか解散させても誰も困んないだろ? 俺、ああいうゲス野郎嫌いなんだよ。それに殺さず脅すだけだし。」

「もし解散したら俺たちの今後はどうなるんだよ? …どうせ出来ないだろうけどさ」


 解散と聞いた4人が呆れ顔でに空に聞き返すが、空はそのとき考えていたことを4人に告げる。


「しばらく俺の手伝いを頼むわ。家を建てたいんでな。もちろん金は出すぞ」


 そういって空は守衛に向かって歩き出すのだが、また少年たちに止められてしまう。


「やめなよ。絶対殺されちゃうって!」

「手伝いはちゃんとやるからやめとけよ」


 空はやさしくマリィの頭をなでながら、大丈夫だよと諭す。

 空はこの少年たちはやさしくいい子達だと思う。院長先生の教育のおかげだろうか?   

 先ほど囲まれたときも脅すだけで暴力を振るおうとはしていなかった。武器も持っておらず、いきなり襲ってくることも無かった。

 しかもあっさりとゼオン組だと白状し、内情をばらした挙句にそこに向かう空を必死で止めているのだ。

 

 そこに…


「ブギじゃねぇか。何騒いでるんだ?」


 騒ぎを聞いたのだろう。ガタイのいい見知らぬ男が立っていた。


「マウルさん…」


 マウルと呼ばれる男は空をねめつけ、誰だコイツとブギたちに聞いている。ブギが答えづらそうにしていると空がマウルに声をかけた。


「はじめまして、ぼくはソラっていいます。ゼオン組に入りたい力自慢の弱人族です! ぜひゼオンさんに面会させてください!」

「ああん、面会だぁ? テメーみたいな弱人族に会うわけねーだろ!」

「ホントにぼく力持ちなんですよ。馬面のアンタなんかよりよっぽど強いんです。信じてください!」


 空はニヤつきながらマウルを挑発する。


「お、おい、マウルさんは門番やってるんだぞ。そんなこといったら殺されちゃうぞ!」


 しかし、気の短いマウルは激昂し、


「ブギ、もうおせぇよ!」


 ブギの制止もむなしく案の定マウルは怒って挑発する空に殴りかかる。


「上等だぁ! なめんじゃねーぞ! 弱人族がぁ!」


 右ストレートが空の顔面目掛けて飛んでくる。しかし空はあっさりと左腕でマウルの右腕をつかんだ。


「ぐっ、な、なんだ。コイツ…う、腕がうごかねぇ…」


 ぎりっ!みし…っ!


 マウルの右腕は空に万力以上の力でつかまれているためまったく動かない。そして空はつかんだ右腕をさらに強く握り…


「ぐっ、いででででで、は、離せよ、てめぇ」

「くっくっく……」


 ニヤリと口の端を吊り上げながらマウルの腕を握りつぶした。


 ぐしゃ…っ! めきっ!


「うっ、ぎゃあああああああああああ!!」


 空はそのまま容赦なくマウルの右腕を握りながら地面にたたきつける。マウルの右腕には空の手形に沿って血が滲んでいた。筋組織が潰されたのだろう。右腕を潰されたマウルは腕を押さえてうずくまっている。


「があああああっ!! いてぇーっ。いてぇよぉ!!」

「まずいな…。これじゃ簡単に殺しちまう」


 悲鳴を上げながらのた打ち回るマウルを見て、やりすぎたと思った空は殴るよりも効果的に恐怖を与える方法を考え、思いついた空はそうだと指を鳴らし、実行に移る。

 涙を流して悲鳴を上げているマウルの後ろ襟をつかんだ空は、そのままマウルの衣服を引き裂く。


 ビッ!ビリリリッ!!


「ひいっ! な、なにすんだ!」

「ヒッヒッヒ・・・」

 

 突然の空の奇行におろおろとパニックになるマウル。右腕のケガでうまく抵抗できずにいる。さらに空はマウルのズボンのベルトをつかみ、


「お、おい、やめろ!」


 ビリッ、ミシッ・・・ビリリリリリーッッ!!!

 

 ベルトと下着ごとマウルのズボンを引き千切った。


「うわああああああ!! な、なんだよ。なにすんだよおおぉ!!」

「イヒヒヒヒヒ! 怖かろうよ! あーっはっはっはっは!!」


 今まで受けたことも無い暴力に涙と鼻水で顔をくしゃくしゃにしながら泣き叫ぶマウル。弱人族の男に腕を潰され、さらに力づくで裸に剥かれた事実にすっかり恐慌状態に陥っていた。そんな全裸状態のマウルには尻尾が見えており、やはり馬っぽい尻尾だった。それを見た空は大笑いしながら、ちぎった衣服の影に見えた袋を手に取る。


「あー、ハラ痛ぇ。お、コイツ金もってんじゃん。ブギにやるよ」


 マウルの衣服に入っていた巾着袋をブギにむかって放り投げる。ブギたち4人は突然の事態に反応すらできずに呆然と立ちすくんでいた。

 なにしろゼオン組で屈強の門番であるマウルが空に軽々と右腕を潰された挙句に、全裸に剥かれたのだから。空はそんな4人の反応を気にした風でもなく、震えながらうずくまっているマウルの尻尾をつかみ、冷たく言い放つ。


「くっくっく…。オウ、馬面ぁ」

「ひっ! た、助け…」


 マウルはうずくまったまま頭を抑え、身を屈める。


「ゼオンのところまで案内しろ」

「は、はい…」

 

 よろよろとマウルは立ち上がる。馬っぽい顔立ちだけあって股間のモノも馬っぽい大きさである。股間のモノを見た空は目障りだと言って隠すよう指示する。裸にしたのは空本人なのだが。


「ブギ。お前らは花屋の隣の酒場で待っててくれ」


 空は呆然としているブギたち4人に指示をだした。空本人は全く心配している様子もなく、もし帰ってこなければゼオン組でこのままがんばれなどという軽口を言っていた。


「おう、行くぞ」

「……は、はい」

「妙なマネしたらコイツ引きちぎるからなぁ…」

「…っ!」


 尻尾を強くつかまれて、恐怖に震えながらうなずくマウル。

 本来の彼は腕を潰されたくらいではひるむ男でもない。ではなぜマウルがそこまで脅えているかというと、外見上は弱人族である空の未知の力が原因である。

 なにしろつかまれた腕は振りほどけずにそのまま握りつぶされ、さらに門番として”厚手の革製品”を身にも着けていたにもかかわらず、それをなんなく引き裂く男。その男に対し本能が告げたのだ。”頭を殴られれば頭がはじける”と。

 ゼオン組の門番として堂々としていたマウルは恐怖ですっかり小さくなっていた。


「へぇ、ぜいたくしてんねぇ」


 ゼオン組の内部に入った空は装飾品に目を見張る。いろいろな彫像やら絵画やらが立て掛けてあり、床には絨毯、天井には水晶作りの行灯が輝いている。どうやら光源は水晶の上にあり、水晶が光を屈折させているようだ。なかなかのシャンデリアである。


「いらないもんあったら貰いたい位だよ。なあ、馬面ぁ」

「……」

「おいおい、だんまりかよ」

「……い、いえ」

「ま、いっか。ところでお前にも聞きたいことがあるんだけど」

「何だ…っですか…?」


 あわてて敬語に言い直すマウル。空は気にせずに話を続ける。


「ブギたちがいた孤児院の院長先生ってお前らが殺したのか?」

「…っ!」


 突然空が口にした院長先生という言葉に驚くマウル。たしかブギたちと一緒にいたことを思い出し、空が孤児院の関係者なのではないかと考える。


「…どうなんだ?」

「あ、はい…」

「…やったんだな?」

 

 マウルはこくりとうなずく。

 自分の推理通り院長先生が死亡していたことに悲痛な顔をする空。ブギたちがいないところでの話でよかったと思うが、彼女の名誉のためにもいつかは真実を話さなければならないだろう。今後のことを思うと気が重くなる空であった。

 そうこうしているうちにマウルがドアを指差している。どうやらゼオンの部屋に着いたらしい。

 

「あとはゼオンさんから聞いてくれ。俺はあのとき見張りをしていただけだったんだ。」

「あのとき…ね。開けろ!」


 あごをしゃくり、ドアを開けるように言う空。マウルはドアをノックし、中のゼオンに呼びかける。


「ゼオン様、マウルです。至急お耳に入れたいお話があるのですが」

「…こんな時間に何だ? まあいい、入れ」

「失礼します」


 ゆっくりドアを開け、部屋に入るマウルと後に続く空。顔も外見も豚っぽい巨漢が椅子に座っている。どうやら噂のゼオン本人で間違いないようだ。

 

「んん、マウル、オマエなんで裸なんだ? …後ろの貧弱な男は何者だ? 弱人族か? …ブヒッ!」

「馬面は外で見張ってろ」


 マウルに外で見張るよう偉そうに命令する空に対し、ゼオンが怪訝な表情をしている。


「おめぇ…何モンだ?」

「俺か? 俺はな…」


 空は口の端を上げた残忍な表情をゼオンに向け、底冷えする声で言い放つ。


「―――死神の使いだよぅ」


 


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