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あだなGET!

 小屋に朝日が差し込み、空は目を覚ました。


「あふ…、いま何時だ?」


 時計が無く、時間の概念が不明な世界にいると思い出した空は、軽く舌打ちをする。


「正直、不便でしょうがない。誰に聞けばいいんだ? 時計とかあるのかなぁ?」


 ぶつぶつと独り言を言いながら、昨晩に頭の中でまとめた予定をひとつづつ確認していく。


「えっと…、まずは時計だな。あとは自分の拠点を造りたいな。もっともっと知っていかないといけないことが多すぎる。とりあえずブギたちとしばらくは行動するか」


 金貨を隠し、仕度をしてラテルの街に行く準備をする空は、ふと思いついた行動をとってみる。


「暴力で俺が圧倒的に強いのは分かった。そんな俺ならダッシュしたらすぐに移動できるんじゃね?」

 

 そういって足に力を込め、一気に踏み出す。すると飛び出した瞬間に目の前に木が現れ、そのまま激突しながら木をへし折っていく。


「ぐっ!」


 足に再度力を込め、踏ん張るとピタッと言う表現に相応しい止まり方をする。


「おお、これはすごい。…っていうか俺どうなっちゃってんの? チートにも程があるだろ…」


 折れた木を見ながら身体をぺたぺたとさわり呟く空。あれだけの衝撃で木を倒したにもかかわらず、自分の身体にはどこも傷も無く、痛みも無い。


「まあ、これは練習の必要ありだな…」


 そう言って、今度はゆっくりと歩いて街へ向かうのだった。



 ☆~~~~~~~~~~~~~~~~~~~☆



 空が街に着くと、周りにいた住民が一斉に空を見る。

 昨日のゼオンを屈服させたことは既に住民に知れ渡っている事であり、空が注目を集めるのも無理ないことであった。


「おい、あれ…」

「しっ!」


 ひそひそとした噂話が空の耳に入ってくる。

 さすがに昨日はやりすぎたかと思う空だが、フィオナの無念を思うばかりに正義感を抑えられなくなった結果であり、この性格は直らないと開き直ることにしたとき、こんな噂話が耳に入ってきた。


「…おい、脱がし屋だぜ!」

「…ああ、男専門だってな!」


 なん…だと…! 空の耳がピクリと動く。噂話は続いている。


「…ゼオンはヤられたんだって?」

「マウルとかいう門番もらしい…」

「…しかし、ゼオンも罰があたったんかねぇ? 昨日ヒィヒィ言ってたもんな。よほど激しく…」

「今頃乙女になっちまってるかもな…」

「…ちげぇねぇ」


 思わず噂話をしている集団に振り向くと、集団も空の反応に気付き、『やべぇ、脱がされんぞ!』といって一斉に逃げ出す。

 空は今の噂を聞いて、昨日の件で『男専門脱がし屋』の称号を得た様だと気付く。

 その事実に茫然自失となり、しばらくはふらふらと夢遊病にかかったように歩いていったのだが、空がまあいっかと気を取り直し、ゼオン組に着いたときなにやら周囲が騒がしい。どうしたのかと覗いてみると、ブギたちが警察から事情を聞かれている。


 ヤバイと思った空はこっそり逃げようとするが、


「あっ! ソラ。こっちこっち」


 とマリィの元気いっぱいな呼び声で、警察を含めたみんなが一斉にこちらを見る。見つかった空はもう流すしかないなと思い、


「おはようございます!」


 と元気に挨拶をしたのだが、


「確保ぉ~!!」


 結局また捕まるのだった。



 ☆~~~~~~~~~~~~~~~~~~☆



「どうやって逃げ出した? これからどうなるか分かっているんだろうな?」


 警察が空を問い詰める。今度は4人で取り囲んでおり、逃げるには突破するしかなさそうである。


「どうやってって、普通に出ただけだぞ」

「鍵も締まってたし、別におかしなところも無かった。誰かが出したとしか思えないんだ。仲間がいるんだろう? さあ、吐け! この中にいるんだろう?」

「なんでゼオンをシメて捕まったのに、ゼオン組の連中が俺を逃がすんだよ」

「あいつが嫌われ者だからだ! 全員グルなんだろう? どうだ!」

「あのブタどんだけ人望ねーんだよ…」


 あまりにゼオンの人望の無さに同情を覚えそうになったとき、マリィたちが助け舟を出してくれる。空はいいぞもっとやれと期待するのだが、


「ちょっと! ソラは正義の味方なんだよ。あんまりじゃないか!」

「そ、そうかぁ…?」

「不気味な笑い声をあげて服破ってたぞ」

「確かに怖かったよな」

「「「あはははははは!!」」」


 全然助けになってなかった。こうなったらさっきのダッシュでバックれよう。そう思った空は、


「あっ! あれは!」


 と指で空中を指し、皆の視線を集めると


「とうっ!」


 と、ジャンプしてゼオン組の屋上に着地する。実際は警察の頭を超えて逃げるだけのつもりだったが、加減が分からず飛びすぎた結果である。しかし、


「ば、馬鹿な…」

「いったい何者なんだ…」

「ソラ、すっご~い」

「本当にソラってなんなんだ…」


 うまいことみんなの度肝を抜けたようだ。結果オーライ。

 そんな中、呆然としている周囲のなか唯一人、愛らしい笑顔で手を振っているマリィに手を振り返すと、颯爽と身を翻して立ち去る空。

 と見せかけて、実はこっそりゼオン組の建物の影に隠れて途方に暮れているのだが。


「…腹減ったなぁ。メシでも食いに行くか!」


 警察が立ち去るまで商店街にでも行ってようと足を向けるのであった。





 

 

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