どうしてこうなった?
どうしてこうなった?
俺、青井空は思い出す。いや、理由は知っている。明らかにやりすぎた。ムカついて銀狼族の男を投げてしまったのだ。昔から「怒ると怖い」などと言われてきた。その結果がこのザマだ。
「お、おぬし…」
見ろ。銀狼族の少女がすっかりおびえている。何とかなだめなくては。
「いや~、手が滑っちゃって。てへっ」
頬をぽりぽり掻きながら、フェリィに言い訳をする。
「手が滑った? 何を言っておる! ぶん投げておったではないか! 壁にぽっかり穴があいておるぞ! 石造りの壁なのに! それとなにが ”剥ぎ取りチャンス” じゃ! 吾が止めなければ銀狼殺しで追っ手が来る処じゃぞ!」
銀狼族の少女がまくし立てる。だがこちらにも理由というものがある。キレてしまった理由が。
「フェリィ。俺はナメられんのが大嫌いなんだよ。特に人を”弱人族”などといって見下すような野郎はな。」
フェリィと言われる銀狼族の少女にも同胞の差別思考は思い当たるのであろう。だが少女は男の気を失わせたことに憤慨しているのではなかった。
「た、たしかにあやつはお主に対して傲慢じゃった。じゃがいきなりぶん投げて、しかも皮を剥ごうなどとはあきらかにやりすぎじゃ!あやつが銀狼返りしておらなんだら間違いなく死んでおったとこじゃぞ。吾にも話をさせてくれたらもっと・・・」
泡吹いたまま気を失っている銀狼族の男をみてフェリィは呆れ返る。そもそもこの男はフェリィを連れ戻しに来た自分の婚約者候補であり、銀狼族の若手の中で最高の武力の持ち主でもあった。
それだけの男を叩きのめしただけに、今後起こるであろう厄介事を想像するとフェリィはため息をついた。もっとうまいやり方があっただろうと…。が、聞こえてきたのは反省の弁ではなかった。
「フェリィ、差別意識のあるやつは話なんか聞かねーよ。そもそも銀狼返りして俺を脅そうとしてたじゃん」
空は悪びれることなく言い返す。
そもそもこの男がいきなり脅してきたんだし。そうだ俺は別に間違っちゃいない。ただやりすぎただけだ。と、ひとり空は納得する。Q.E.D
「銀狼返りしたこやつをあっさりと…。ソラはどれだけ力が強いのじゃ。」
「ん~、まあ世界で一番どころか…」
ひと呼吸入れてソラは一人呟く。
「たぶんだけど、あの山くらい持ち上げられるかもしれん」
あっけにとられているフェリィをよそに、空は自分がこの世界に来る前のことを思い出していた。
初投稿です。がんばります。