エピローグ
快晴、木々から差し込む光も、風薫る陽気も体に染みこみ心地よい。
俺は今、墓地へと来ていた。
今まで来れなくてゴメンねとここに来るたび謝罪する。
姉さんの墓前で手を合わせる。あの大会が終わってから俺は毎日ここへと足を運んでいた。
「今日は、良いものを持ってきたよ・・・・・・」
俺は墓前の中央に取り出した丸い何かを供える。
「どうだい、あいつの眼球だよ。しばらく指ばっかりだから飽きてたでしょう? でもしょうがないんだ、あまり一気に取り出すと死んじゃうからね。あいつにはもっともっと苦しんでもらわないと・・・・・・姉さんが受けた仕打ちの何倍も何百倍も与えてあげる。だから・・・・・・安心して眠っていてね、姉さん」
これに加えて花は絶やさない。先輩が作ったグランド一面の花畑のお陰で事欠くことはない。
ノスフェラトウは秘密の場所で監禁中だ。微動だにできないように体を固定されたのち、少しずつ少しずつあいつの体を削ぎ落としてゆく。
「明日は・・・・・・そうだね、耳でも持ってこよう。姉さんの悲鳴を聞いた耳だ、早めに見せてあげなくちゃね・・・・・・」
俺はしばらく目を瞑って姉さんとの会話を楽しんだ。
やがて会話も途切れると俺はすっと立ち上げる。
「では、姉さん、また明日・・・・・・楽しみにしててね・・・・・・」
俺がそう言い、その場から名残惜しくも立ち去ろうとしたとき、俺の携帯がブルブル震えだした。俺は急いでポケットから電話を取り出す。
「はい・・・・・・どうしたんだい、姉さん?」
「ルキ君、少々困った事になった。ちょっと囲まれてな。私一人では手に余る。場所は○○の裏手、相手は二人だ、ちょっと助けてくれんか?」
走っているのか、息が乱れている。先輩を追い込むなんて相当の手練れと見ていいだろう。
「姉さんの頼みなら喜んで・・・・・・」
俺が手を挙げると、護衛兼討伐隊の妖精達が影から姿を現した。
「オベロン様、敵ですか?」
「また、ボコボコにしちょうよ~っ!」
「しかし、うまい具合に引き寄せられますね。お陰で私達は動かなくて済む」
先輩達が共食い者となってからこの街には吸血鬼が集まってくるようになった。俺達妖精の存在意義は吸血鬼の殲滅だから都合がいい事他ならない。それを理由に妖精達には先輩達へ手を出させない。
「対象は吸血鬼二匹だ。さぁ、お前ら、今度はどんな屑か、その顔を拝みに行くとしよう」
「はっ!」
俺は颯爽とこの場を後にする、最後に姉さんの墓前に目を映すと、供えられていた花が風で優しく揺れていた。
数多くの作品から見つけていただき、そして最後まで読んでくださった人がもし一人でもおられたなら、その方へ最上の感謝をこめて。ありがとうございました。