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倹約家の彼女

 彼女ほど、私にからんでくる人はいなかった。

「あのサプリ飲んだ事あります?」

 彼女の質問は具体的だ。

「ああ、飲んでるよ、今も」

「どこの会社ですか?」

「D社」

「N社の飲みました?」

「最初は飲んでた。でもちょっと油くさくて。その後はF社の飲んでた」

「違います?」

「油くさくはなかったね」

「で、なんで今はD社のを飲んでるんですか?」

「うーん、価格かな」

「月いくらくらいになります?」

「四千円はこえてるかも」

「高っ!無理。私には無理だな……」

 最後には必ず同じ台詞になる。

 それは、

「高っ!」だったり、

「辛っ!」だったりするが、必ずつくのは、

「私には無理だな」

 質問に答えたこっちはがっくりくる。高くて辛い事をやった私がおバカさんみたいに聞こえて仕方ない。

 履いて家事をやれば汗だくになるパンツは、

「一枚のパンツが高くて洗い替えが買えないから無理」

 ぶるぶる振動するマシンも腸内洗浄も純粋に高すぎる。

 ネットで安く買って、やっと某ダイエット軍隊に入隊したが、

「つらすぎて無理」らしい。

 あんまり文句ばっかり言ってるのでちょっと意地悪な気分になって言った。

「サプリとか続かないでしょ?」

「続きますよ!ビタミン剤、もう七年くらい飲んでます。いいサプリ、親が送ってくれるから」……自分の財布じゃないわけね。

 呆れたけれど、財布も痛まず、辛くもなく、効果の上がる方法は……

「これはどう?」

 何か、楽チンな『ながらダイエット』器具を分割で買う。その支払いの分だけ、食費を減らす。

「運動と節制の両方からアプローチで、はやく効果が……」

「無理です」

「……」

「食費を減らすなんて。無理です。食べちゃうもん」……なすすべ無しですか。

 ダイエットはダイエットと名のつくだけで高い。それはそれで仕方ない事だと思う。だって、禁煙治療と同じだから。

 煙草を吸い始めなければ、禁煙する必要はない。煙草は嗜好品で、吸うも吸わないも本人の意思次第。本人が煙草をやめる必要を感じるから、高いお金を払って治療に通う。

 ダイエットも同じ。

 太っていなければ、痩せる必要はない。太る太らないも本人次第。必要を感じないからお金は払わない。

 かくいう私はヘビィスモーカー。体に悪いものにお金を払っている自覚はあるが、全くやめる気はない。

 私は愛煙家であって、禁煙したいわけではない。

 あ、そうか。

 彼女もダイエット器具なんかの批評家であって痩せたいわけではない。

 だから彼女は太っていない。


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