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類は友を呼ぶけれど、どこまでが類?【中】

 今回の仕事の内容は半世紀近く難攻不落の錬金術師が占拠している迷宮への冒険だ。


 錬金術師の討伐。この迷宮はある国の宗教的な聖地らしく、そこに住み着いた錬金術師が邪魔なのだ。

 説得で迷宮から出てもらうのも仕事の成功になるが人の話を聞くような奴じゃないらしい。他に聖地に安置されている宝を持ち帰る事でも良いとの条件つき。

 生存者が少なく、有名な冒険者で無ければ迷宮に近づくことさえ許されない。俺は仮初でも有名になった。そんな分けで仕事が回って来た。

 迷宮には様々な罠が仕掛けられているらしいのでクリエがいなければ成功はまずありえない。


 迷宮の中に入ると直ぐにゴーレムが待ち構えていた。

 レンガを組んで作られた高スペックタイプのゴーレムだ。他に人型人形のゴーレムが混じっている。

 学校時代に見た粘土細工とは訳が違う。


「ご丁寧に待ち構えているとはね」


 武器を取り出しゴーレムをなぎ払う。

 修行のお陰で簡単に屠れた。理由は何にしても嬉しくない……。


「また腕をあげたな」


「というかなんだ、この剣の切れ味……」


 ファーヴが昔、手に入れた物らしいのだが怪しい光を放つ剣だ。ちょっと血生臭い。

 レンガで造られているゴーレムがまるでバターを切るように簡単に一刀両断できる。


「もっとキレェエェ」


 空耳か不気味な声が聞こえるような?

 この冒険が終わったら、捨てよう。

 入り口にいるゴーレムを倒し終わり部屋の中を確認する。次の部屋への扉が三つあった。仕事を請ける時に渡された地図によると右の扉が階段への道のようだ。


「こっちに行くぞ」


「待て」


 クリエが右の扉に手を掛けていた俺を止めた。


「罠が無駄に多い、どこかに隠し扉があるはず」


「そうなのか?」


「よく考えてみろ、こんな罠が多いところに住めるか?」


「まあ……そうだな」


 さすがレンジャーだ。普通は気づかない事に反応する。

 部屋をくまなく確認すると四つ目の隠し扉を見つけた。入ると同時にゴーレムが起動して襲い掛かってくる。


「恐らく罠が一番少ない部屋に更に隠し扉があるはずだ」


 なんとなく気づいたが敵の多い部屋程、罠が無い。


「どうやら、この部屋にあるようだ」


 行き止まりの部屋にいたゴーレムを蹴散らしてクリエは部屋のあちこちを調べる。


「少し待ってろ……あった!」


 部屋の壁の一部を押すと音を立てて隠し階段が現れた。


「この地図は錬金術師が迷宮の中を改造した時に約に立たなくなったな」


「じゃあ捨てるか?」


「いや、地下二階からは同じ間取りの可能性がある。持っていこう」


 こういうときにレンジャーは頼りになる。

 地下二階から下も罠があるがゴーレムが出ることは無くなった。そして迷い無くクリエは進んでいき、疑問に思い尋ねる。


「どうして道が分かるんだ?」


 するとクリエは壁についた埃に手をつける。


「埃のない道を選んで進んでいるんだ」


 そうか、ここに住んでいるなら正しい道しか使わない、自然と埃が積もらないのか。

 道なりに進むと行き止まりの部屋に出た。


「行き止まり……じゃないな」


 部屋の真ん中に魔方陣が描かれている。その前には水晶玉が浮いていた。


「やられたな。転送装置だ」


 クリエが転送装置を弄った後に悔しそうな言い方で言う。何故だ?


「ここで転送をして更に下の階へ行くんだろうけれど俺達じゃ使えない」


「なるほど」


「フィニがいればもしかしたら転送装置が使えたかもしれないが……それも正直危険か」


 クリエが説明してくれる。魔法で作られている転送装置、魔法使いのフィニならば本来の使い手と偽って作動させられるかもしれないが、本人以外が使うと罠が作動する場合もあるそうだ。


「そうか……なら仕方ないな」


 その後が大変だった。所かまわず罠が仕掛けられていて少しずつしか進めなくなってしまった。

 まだ全体の半分しか進んでいないのに疲れてしまった。


「ここで少し休憩しよう」


 寝室と思わしき古びた部屋で俺はクリエに休憩を申し出た。


「そうだな」


 塔に入ってからかなりの時間が過ぎている……今が何時なのか検討もつかない。

 荷物袋から携帯食を取り出して食事をする。その後、それぞれ仮眠をとることにした。



「……う……ん」


 眠っていると何かガサゴソ音がした。何事かと目を開けるとクリエが手ごろな大きさに裁断された木をナイフで彫り、細工をしていた。


「起こしちまったか、悪いな」


「いや……」


 見るとすごく上手く作られた人形が出来ている。何の人形なのかは分からないけれど。

 ん? フィニが描いていた絵に似ているような?


「昔、フィニと一緒にフィギュアって言うのをイベントで売り出してたんだ」


 思い出を紐解くようにクリエが教えてくれる。そうだ。疑問に思っていたことを聞いてみよう。


「フィニと言えばドウジンシって何だ?」


 クリエは遠い目をする。


「フィニは同人誌、俺はフィギュア……と言うものを作って販売していたんだ」

「へ~……」


 どうやらあの本はフィニが作ったものらしいのは聞いた。それにファーヴは感銘を受けていたのは分かる。しかし限度というものがあるきと思うが。

 あの類には何か変わった空気がある。ファーヴはこういうものが好きなのは分かったが俺は興味なかった。絵描きというのはああ言った職業なのだろうか?


「これはこれで楽しかったんだぜ? フィニは本業にしちまうし、弟子も出来たみたいだしな」


「お前等にそんな趣味があったなんて俺は知らなかったな」


「ジークはその頃、学校で修行に精を出していたから、知らないのも無理ないだろ」


 学校時代、フィニとクリエが眠そうにしていた事を思い出す。成績も向上していたから何か修行を兼用しているのだと思っていたが違うらしい。


「てっきりお前らも修行しているものかと」


「……ジークらしいな、だから癖で今でもフィギュアをこうやって暇なときに作っちまうんだ。自分で言うのもなんだが、忘れられないのかもしれない」


 なんかしんみりした会話になって来た。


「そろそろ行くか……」


「そうだな」


 この空気を吹き飛ばすために進むことにした。こんな会話をしていると誰かが死にそうだ。



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