その『小さな親切が大きなお世話』なんだ!【上】
俺の名前はジーク、これから勇者になるために魔王退治を目指している冒険者だ。
ファエルとの出会いで魔王城への行く方法が分かり、城でのゴタゴタが解決したのちに魔王退治の為に旅をしている途中だ。
今、俺は一人だ。何故一人かというと仲間であるフィニとクリエの用事がつかなかったからだ。
もちろん、魔王相手に一人で勝負を売るほど俺は馬鹿ではない。魔王の居城の近くにある町で集合することになっている。
さすがにファーヴ達も魔王とは面識は無いだろう……。いや、城には行ったことがあるような事を言っていたのでもしかしたら面識があるかもしれない。
そんな事もあって俺は一人気楽に集合地点の町に行く途中だ。
そんな機嫌の良いときに。
「キャーーー! 誰かーー!」
と、絹を裂く悲鳴を聞く。しかも聞き覚えのあるような気がする。
「なんだ!」
急いで声のした方へ駆けつける。
「そんな叫ばなくても悪いことなんてしねえよ」
駆けつけてみると小汚い男達が一人の少女に群がろうとしている所だった。恐らく盗賊か強盗だろう。
「やめてください!」
少女は怯えた眼差しでいる。ここは俺の出番だ。って……
「レヴィアさん! お前ら、そこで何をしている!」
駆けつけて庇うように男達の前に出る。今、男たちに囲まれていたのはレヴィアさんという俺が冒険者になる前から知り合いの可愛い女の子だ。
「何だてめえは!」
「通りすがりの冒険者だ、少女一人を相手にお前達こそ何をしようとしてたんだ!」
男達は俺に向かって刃物を向ける。ファーヴから貰った妙に切れる剣だ。正直魔剣なのではないかと疑いたくなるし、声がたまに聞こえるが、この際利用しようと思う。相手は魔王と呼ばれた敵なのだから。
「何も俺達は悪いことなんてしてねえぜ」
小汚い男たちは仲間達に目を合わせている。
「ただ、かわいい女の子がこんな所にいちゃ行けないから安全な所に連れていってあげようとしただけだ!」
言うと同時に俺に向かって刃物を突きつけてきた。
「遅い!」
何人もの男が襲い掛かっていたが今の俺には鈍く見える。剣を引き抜き相手の刃物だけを飛ばす。
「な、何だこいつ! つ、つえぇ……」
強盗の一人が驚いた顔になり。
「あ! こいつは! ジークだ」
そう言うと周りの強盗はさざめき立つ。
「あのドラゴンを退けた冒険者!?」
「いや! 恐ろしい錬金術師から宝を奪還した奴だって聞いたぞ」
と、口々に事実とは違う俺の名声を言い出す。
強盗達に大将格と思わしき男が指示をだす。
「うろたえるな! 相手は一人だ、さっさと殺れ!」
大将を倒せば後の奴らなんて烏合の衆だ。俺は強盗達が体制を立て直す前に大将格に蹴りを浴びせかける。
「グハッ!」
大将はいとも簡単に倒れこんだ。俺は強盗の大将を足蹴にして脅す。
「ここまま立ち去れば命までは取らない。早く立ち去れ」
「くそ! 覚えてやがれ!」
ありきたりな台詞を吐いて逃げて行った。
「大丈夫? レヴィアさん」
俺はレヴィアさんに目を向ける。
「ありがとうございますジークさん」
ホッとした顔をして俺に言った。可愛い彼女を助けられるなんて冒険者冥利に尽きる。
「お礼を言うのはこっちの方さ、君が知り合いに俺の仲間を助ける方法を尋ねてくれたお陰なんだから」
「いえ、私は当たり前の事をしたまでで」
「謙遜しなくても、そのお陰で俺の仲間たちは助かった」
そう、素直に俺は彼女に感謝しなくてはならない。今、仲間たちや俺の命があるのは彼女のお陰と言っても間違いは無いのだから。
「どうしてこんな所で盗賊らしき連中に囲まれていたのですか?」
「興行で移動中だったのですが。知人と逸れてしまって」
「なるほど、それは大変でしたね」
彼女の話では俺の行く町より更に南にある街で仕事があるそうだ。その道中、気がついたら逸れてしまっていたということらしい。そんな所にさっきの強盗達に連れて行かれそうになっていた事を俺に説明してくれた。
「そうか、ここは少し物騒なようだ。途中の町まで送って行くよ」
レヴィアさんはとても可愛く微笑んだ。
「はい! ありがとうございます」
「ジークさんはなんで、こんな所に? もしかして魔王退治ですか?」
「ああ、君のお陰でどうにかね」
「でも、仲間はどうしたのですが?」
彼女はキョロキョロと俺の周りを見ている。
「みんな急に仕事が入ってね。目的の町で集合してから魔王城へと行くことになったんだ」
「なるほど~」
「俺は副業が無いからね。みんなを待つ間。どうやって時間を潰すかが今の課題かな」
集合地点兼、目的地の町に着くまでに俺はレヴィアさんと話をした。彼女は品があって、会話に飽きることが無い。
レヴィアさんが楽しそうに聞いているので俺は調子に乗って、大臣の蛮行から仲間を守った武勇伝を話した。するとレヴィアさんも我が事のように喜んでくれる。
「後は魔王を退治すればジークさんは勇者になれますね」
俺は右腕を上げてガッツポーズを取った。
「うまく行けばね。応援してくれると嬉しいな」
「はい! 私も応援します。頑張ってください」
話をしていると、町に着いた。もう少し話をしていたかったけれど名残惜しい気持ちを抑えて会話を区切る。
「ここまでくれば大丈夫かな?」
「そうですね。多分、私の知人も集合場所にいるでしょうし、ありがとうございました」
レヴィアさんは笑顔で答える。
「後、どれくらいしたら旅立つんですか?」
俺は腕を組んで考えながら。
「仲間をこの町で待つことになるからな~一週間くらいいるよ……」
「そんなに待つのですか?」
俺はフィニとクリエの事を考えた。
二人とも忙しい仕事らしかったが協力を申し出てくれた事には感謝している。
魔王と戦って命を落とす危険もあるのに、協力してくれる。それだけで少しくらい待つのも我慢できる。今は仲間を信じて待つときだ。
「信頼できる仲間が着てくれるまで少しの辛抱だから。どんなに遅くても我慢できるさ」
笑顔で答えた。そう、彼らさえいれば魔王も怖くない。
「素敵な仲間なんですね」
「……まあ、たまに俺を困らせたりするんだけどね」
苦笑いをするとレヴィアさんは笑いながら前に出て振り返った。
「ジークさん、とても楽しかったです……あ、あの」
「何?」
レヴィアさんが何時もの落ち着いた口調とは一転して恥ずかしそうな口調で話しかけてくる。
「この、仕事が終わったら暇になるでしょうか?」
「う、うん。しばらくは仕事をしなくてもよくなると思うけど」
「でしたら。その、よかったら一緒に慰安旅行に行きませんか?」
「え……」
恥ずかしそうに言うレヴィアさん。これは、もしかしたら彼女なりのアプローチ?
「わ、分かったよ。よかったら行こう」
俺が同意するとレヴィアさんはとても嬉しそうな表情になる。
「はい! それじゃあ約束ですよー!」
と、手を振りながら人ごみの中へ入っていってしまった。せめて合流するまで一緒に話をしましょうと呼び止める暇も無い。




