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アルマゲドンに至るまで 1

ポップなのりに、少し重いテーマを込めてみようと思い、書き始めた作品です。色々見苦しい場面や文章もあるかと思いますが、読んで頂けたら幸いです。

発動までに時間がかかるから、なるべく距離をとろうと思う。だけど、異世界の連中はそんな僕の願いも虚しく、眼前に迫って僕の首をはねようとする。


「勘弁してよ。もうすぐ美佳の誕生日なのに…」


僕は振り返って全力疾走。手頃な廃墟に身を隠す。護身銃の充電にはまだまだ時間がかかりそう。


異世界の連中(鬼みたいというより鬼だねあれは)は僕のことを探してる。腕時計を見ると、午後11時半をちょっと過ぎてて大慌て。頭の中で美佳の言葉が僕を急かした。


『いい?誕生日になった瞬間に、アルタ前で待ってるからね。遅れたら、今度は残り半分の女の子も皆殺しだからね!』


困ったなぁ、全く。

今、僕は大久保辺りにいるだろうから、そろそろあの鬼を何とかしないと、本当に間に合わない。やれやれ、護身銃の充電はどうでしょう?もうちょい…。僕は廃墟の窓から顔を出して異世界の住人(つまり、本当に鬼なんだ)の様子を伺う。真っ赤な体で頭から一本の角。鋭利な爪がもう凶悪に怖い。ブルブル。でも実際美佳に比べたら、てんで全く怖くない。


ピーーー!!という強烈な音。護身銃の充電完了。鬼が気づいてこっちを見る。僕は廃墟ごしに護身銃のトリガーをガシャッ!玩具みたいな護身銃から、エメラルドグリーンの光がブオンと鬼目掛けて一直線。鬼の胸のあたりにクリーンヒット!鬼は

「ギョエ」

という断末魔の叫び声とともに四方八方にビチャビチャ砕け散る。護身銃の名前以上の効果に、いつもながらブルッと震えて、僕は美佳の待つアルタ前に走った。原型なんか留めてないけど。


去年、新宿から半径5キロ四方が消滅してしまったのは美佳のせい…とも言い切れない。いや、まぁ美佳のせいっちゃせいなんだけど、そもそもの元凶は僕にあるし(もちろん千歩くらい譲ればね)、どっちみち意味なんてないんだから、世界中の軍隊さんも躍起になってミサイルやらなんやらを打ちまくるべきではなかったと僕は思う。


そのせいで無関係な人が、関東大震災の百倍は死んじゃったし、その千倍くらいの人が泣いて泣いて泣きじゃくってしまったわけだから、僕が権力を持ったおっさんおばちゃんを少しくらい憎んだって罰は当たらないはずじゃないでしょうか?


かくいう僕だってまだ15才の中学生だったわけで、いくら僕が元凶だとしても、ここまで壊すのはちょっと酷いし、結構\泣いた。


『隼太は悪くないのに何で泣くの!男なら胸を張っちゃいなさい!』

胸なんかどうやっても張れないよ美佳…。と、僕がそんな弱気を見せたら今度は日本が世界地図から消えちゃいそうな気がしたからなんとか我慢したものの、それから僕は美佳のワガママに付き合って、日々命をかけたご機嫌取りに勤しんでる。


美佳とは幼なじみで、小学校から一緒だったわけ。で、僕達は仲良く慎ましく育ってきたんだけど、僕の15才の誕生日に、美佳は僕に告白した。


『隼太の事、ずっと好きだったの。私と付き合ってください!』


と、体育館の裏で手作りのケーキを僕に差し出してそう言った彼女の頬は鬼より真っ赤。僕はその時クラスのアイドルのユミちゃん(あややと宮崎あおいを足して2で割った感じ)が好きで、ごめん無理と断った。美佳はえらいご立腹。


『それじゃ、ユミがいなければいいんだよね?ユミがいなければ、隼太私と付き合ってくれる?』


『いや、そういう問題じゃなくて…つまり僕は好きな人と付き合いたいからさ』


『じゃあ、私の事全く好きじゃない?』


『だって美佳は幼なじみで、恋愛とかそんなじゃないから…』


『じゃあ、世界中に女の子が私しかいなかったら?』


『そりゃ、まぁ、そういう成り行きに…って…おい!?』


美佳は猛ダッシュで教室へ。僕が後を追うと、そこはまったく地獄絵図。美佳は机の上をぴょんぴょん跳ねて、女子を次から次へとジェノサイド。首をチョップでバッサリちょんぎり、胸をパンチでワンツー貫通。阿鼻叫喚に納得して共感できる光景に、僕はすっかり茫然自失。


『オッケイ隼太!まずはアジアの女から皆殺しだね!』


と美佳のVサインで一瞬我に帰って、でもやっぱり目前の光景に我を忘れて、それでも何とか頑張れ隼太と自分にエールを送ったりした。


『みんなよろしく!』


窓に向かって美佳が叫ぶと空の様子がちょぴりおかしい。なんだか徐々にうねりを見せて、うずまきみたいなものが出来て、穴が開いて鬼みたいのがいっぱい出てきた。ここら辺でひとまず僕は気を失った。


目が覚めると、僕はベッドの上にいて、見覚えのあるおばさんがいて、おばさんが美佳のお母さんだと気付いた頃、同時にさっきの光景が蘇ってきた。あ、夢かと一安心。でも何で僕は美佳の家で寝てるんだろうね?

『ごめんね、隼太ちゃん。あの子、一度言い出すと聞かないから』

僕の覚醒におばさんが気付いて、優しく笑ってそう言ったけど、意味が解らないのでポカンとしてた。


『まったく、あれほどこの世界では大人しくしてなさいっていつも口をすっぱくして言ったのに、これじゃ本当にアジア中の女性が死ぬわ。大体、お父さんが悪いのよ?一人娘だからって溺愛するから、あの子あんなにワガママになっちゃったの。もう、これじゃまた一族総出で戦争じゃない。他の連中も美佳が可愛いからって何でも言う事聞いちゃって。限度ってものを知らなすぎるわ。あ、隼太ちゃんは何も知らなかったわね。ごめんなさい、愚痴っちゃって』


変わらず理解不能\なおばさんの言葉はひとまず置いて、僕は壁にかかっている時計を見た。9時ジャスト。晩御飯に大分遅れて、これはまずいと起き上がる。


『ごめんなさい、何だかおばさんに知らないうちにお世話になってしまったみたいで。晩御飯に大分遅れているので、このままだと飢えて死にかねないので帰ります』


と僕がお辞儀すると『まだ外危ないわよ』とおばさんが言う。僕は美佳のお母さんはイタい人なんだなと思い始めていたので、ニコッと笑って逃げるようにゴーホーム、と思ったがしかし、ドアを開けて外へ出ると、道端にたくさん女性が転がっていて、首がなかったり胸に穴が空いていたりで死んでいたので、僕は再び気を失う。


宣言通り、美佳と鬼達はアジア中をビュンビュンぴょんぴょん飛び回って、女の子達をばっさばっさと皆殺し。完全に皆殺しじゃなくて、ちっちゃな女の子とかおばさんとかお婆さんは避けていた。殺されたのは、15〜30くらいの年の頃の皆々様。後に美佳は


『だって隼太、ノーマルでしょ?それにちっちゃな子を殺すのは、何だかかわいそうかな』


と語っていたけど、美佳は全然ノーマルじゃなくない?と聞き返す勇気はもちろんなかった。


そんなわけで世界中が大混乱。美佳と鬼達はその後もばっさばっさと女の子を殺し続け、すっかり国際テロリスト。世界中の半分の女の子が死んだところで、僕はようやく美佳に待ったをかけるのである。


『解った(よく解らないけど)!美佳、君と付き合うよ!とことん君と恋愛するよ!愛して愛して愛しまくるよ!だから女の子を殺すのはもうよそう!僕も今まで、ショックで何が何だか解らなかったけど、やっぱり人殺しはよくないよ!』


美佳は号泣して僕に抱きつき『本当に?』と言う。『本当だとも』と僕は頷く。『だから、鬼達何とかして』

すると美佳は鬼達を集めて集めて集めまくる。美佳の家からほど近い(僕の家からも結構\近い)新宿上空をわさわさわさわさ赤いのやら青いのやら黄色いのやら黒い鬼が埋め尽くした。お陰で若い女の子のいない新宿が大パニック!


『おいおいミカミカ!まずいよだめだよ!これじゃパニック必至だよ!前みたいに空を割るなりなんなりして元に戻して綺麗消してよ!』

なぜか照れ笑いの美佳は『ごめん、みんなこの世界が気にいっちゃって、異次元は勘弁して下さいって』と舌をペロリ。


それはとってもまずい事の気がした僕の予\想はまんまと的中。何と言っても国際テロリストの美佳と鬼達。自衛隊が戦車に乗って新宿中を埋め尽くした。

僕と美佳は鬼達を説得しに新宿へ向かうも自衛隊に阻止される。やっぱり国際テロリストの美佳に向かって僕に構\わず自衛隊がいっぱい発砲。僕に当たりそうな弾をみんな美佳がキャッチして、僕を抱えて空へビュン。


『許さない。私の隼太になんてことするの!』



美佳は鬼達を一斉に自衛隊に向かわせ片っ端からデストロイ。

あっという間に壊滅した。

その後何度か自衛隊がやってくるも、片っ端からデストロイ。

新宿中に人がいなくなった頃、いろんな国からいろんなミサイルが飛んできて、結局いろんな人が死んだ。そりゃあれだけミサイルを打てば、ちょっとの誤差とちょっとの犠牲は想定の範囲内と後にいろんな国の政府は語る。想定の範囲内で死んだ人の中には、ちっちゃな女の子も、おばさんも、お婆さんもいた。

ところで、鬼達はというと、一匹も死なないで元気いっぱい。僕も、僕の家族も美佳が守ってくれたから元気いっぱいなんだけど、美佳と一緒にいるから、僕らもそろってテロリストの仲間入り。


以来、廃墟となった新宿が僕と美佳のデートスポットになった。プラス思考で素敵に思思うことにしたものの、一回のデートに命を賭けるのは、なかなか結構\、骨が折れる。


美佳は街に鬼を放って、僕の首を刈るように命令してる。僕は様々な条件の元、鬼を撃退し美佳の元にたどり着かなきゃならない。参った参った。なんでこんなことをするんだいと僕は尋ねる。


『愛って、困難を乗り越えて初めて手に入れられるものでしょ?』


と美佳は答える。おいおい、僕のことを好きなのは君の方じゃなかったっけと思いながら、僕は渋々美佳に従う。それで僕にこの護身銃(恥ずかしながら水鉄砲にしか見えない)を持たせた訳だけど、鬼達は美佳の仲間なわけで、鬼でも殺すの僕は辛いよと美佳に言う。

『大丈夫大丈夫、砕けちっても異次元に帰るだけだから』


あくまで軽く美佳は言う。そんなものかねと、首を傾げつつも納得して、僕は鬼達と、使い勝手の悪い銃を使ってしのぎを削るエブリデイ。


元々歌舞伎町だった廃墟を、僕は全力ダッシュでアルタ前へ走りまくる。1分前にギリギリで間に合う。美佳が

「やっほう隼太」

と嬉しそうに笑ってる。


「ごめん、待った?」


息も絶え絶え僕は言う。


「大丈夫大丈夫。偉いよ隼太。ちゃんと約束守ってくれたね」


というと美佳は僕の頭を撫でる。ピピピ、という音がなる。午前零時に設定した腕時計のアラームだった。


「誕生日おめでとう美佳」


「ありがと、隼太」


「ところで美佳って何才なの?」


「今年でちょうど百…、隼太、女の子に年を聞くとぶっ殺すわよ」


「オッケイ。一生聞きません」


「よろしい。さぁ、今日どこ行く?」


「美佳の誕生日だからさ、美佳の好きな所に行けばいいよ」


「それじゃ、今日は1日中付き合ってもらうからね!」


美佳は僕の手をひっぱって、廃墟の街を歩き回った。この生活に慣れ初めている事を僕はちょっぴり危惧したが、でもまぁ何を嘆いても始まらないし、美佳の事もちょっとずつ好きになってきたのでよしとした(僕にはMっ気があるらしい)。


ところで余談だが、僕達はこの日、初めてのキスをした。

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