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異世界の生活

とある午後の昼下がり―――


一般サラリーマン家庭の三兄妹の末っ子として生まれた私には、豪華すぎるほどのアフタヌーンティーのセットを目の前に考えるのは……今置かれている現状である。


この世界に来て早3週間という月日が過ぎた。


バッシュの気遣いのかいあってか、生活はとても快適だ。


食事のほとんどが、日本で言う洋食のような感じで、とってもおいしい。

さすがお城って感じだが、ときどき見た瞬間に食欲をなくすような青や、紫の物がでる。

口に入れてみればたいていはおいしいのだが、入れるまでの勇気が図り知れない。


服はお城だからなのかドレスが基本。

現代の女子高生には少し動きにくいうえに、コルセットは少し苦しい……。

あとなんでか知らないけど、胸の露出が激しい気がする。こうゆうのが流行りなのか……。


勉強はやっぱり難しい……。

文字は、言葉が通じるからもしかして……と思っていたら読めたのでラッキーだったが、書きはビミョー。

しかし、問題はこれだけではなかった。

礼儀作法は身体動かすことだからまだいいとして、歴史。これが問題だった。

貴族同士のバックグラウンドも絡めて、話されるからわけがわからない。

私、歴史とかやりたくないから理系クラスに進んだのにな……。


あと、お風呂。これはなかなか曲者だった。

この国の主流は蒸し風呂で、あかすり?みたいな奴だった。

気持ちいいんだけど……なんか物足りない。湯船が恋しい。

このことをバッシュに話したら、なんとかしてくれるって言ってたから、もう少しの我慢。


バッシュから私のお世話係に侍女と護衛が付けられた。

侍女はラナン、ナージャ、イルミナの3人。3人ともすごく美人で可愛い。護衛はターナとラシエル2人、こちらも頼りになる姉御肌の美人さんだ。綺麗なモノ好きの私としては、バッシュも含めて、いい目の保養になっている。


侍女も護衛もいらないって言ったんだけど、客人をもてなさない国だと思われると困るって、押し切られた。

百歩譲って、侍女はわかる。恥ずかしいけど、お風呂とか、着替えとか慣れないし、一人ではできないから。

でもなんで護衛……。バッシュは危ないからだっていってたけど、なんで危ないんだろう……。


聞いた話によると、女性の騎士は少なくてすごく貴重らしいのに……。


しかも、危ないからって、この世界に来てから3週間、バッシュ抜きで一度も部屋から出してもらってない。


こんなんじゃ、私の本来の目的が果たせないよ。


城下の街だって見てみたい。

せめて、ストレス解消に好きな時に庭に出るのぐらい許してほしい。


「はぁ……」


思わずため息がこぼれた。


「どうかなさいましたか。勇姫様。」


近くにいた侍女のラナンが反応した。


「う~ん。だって暇なんだもん。部屋の中ばっかりなのはストレスたまるよ……。」

「申し訳ございません。陛下からお部屋から出さないように言われておりますので……。」

「……うん。それはわかってるよ。無理矢理部屋から出て、ラナン達が怒られるのは困るしね。」

「勇姫様……。」


ラナンにすごく心配をかけてしまったみたいだ。

しかし……不謹慎かもしれないが、美人の憂い顔はなんて絵になるんだろう……。

カメラ欲しい。写真撮りたい。


「―――さま。―きさま。勇姫様。」

「は、はい。」


ずいぶん前から呼ばれていたようだ。どうも美人に見とれすぎていたらしい。


「大丈夫ですか?勇姫様。どこか御加減でも悪いのではないですか?」

「う、ううん。平気だよ。」

「なら、よろしいのですが。」

「本当に大丈夫だって。ところで、呼んでたでしょう?なぁに?」

「はい。お暇だとおっしゃられた件ですが……陛下に申してみてはどうでしょう?勇姫様のためであればお時間を作っていただけると思いますし、最低限お庭ぐらいの許可はいただけると思います。」

「そうかなぁ。」

「ええ、陛下は勇姫様からのお願いは断れないですから。」

「う~ん。じゃあ、夕食のときにでも頼んでみようかな。」

「それがよろしいかと思います。ところで、勇姫様。」

「ん。なぁに。」

「今朝も夜着を着ていらっしゃいませんでしたね。」

「……だって、裸の方が気持ちいいんだもん……。」

「……勇姫様……お願いですから夜着をまとってお休みください。獣を刺激し、要らぬ火の粉を被ることになりますよ。」

「……それは、どういう意味?」

「いいえ、なんでもございません……。」


そのまま、火の粉発言は流されてしまった。

しかし、私は、この発言を深く追求しなかったことをのちに後悔することになる。


気付かなかったのだ、侍女たちが、護衛の騎士までもが執拗に私に夜着を着せようとしている理由を。

知らなかったのだ、バッシュが秘密の通路を通って夜中にこの部屋にかよっていることを。


侍女や護衛たちは、こんなにも私を守ろうとしてくれていたのに―――。

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