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呪詛・つごもり編

 つごもりの場合(小説本編後)



「朔ゥ、この祠見てみぃ。人形打ち込んであるぜ。」

「うっわなにこれ髪の毛で出来てる…きもっ」

「ほんまよぉ!人の髪じゃん、やだー可愛い~!!」

「なんの躊躇いもなく毟り取った!屋根穴空いて……――――晦さん、それ直に触るの良くないんじゃ……呪いじゃないですか?……多分……」

「まじない?あ、ほんとだ中になんか入っちょるわ。えーっと何々?『藤原蜜柑に、どうか幸せが訪れますように。』んー、それな。わかるわ、みーちゃんには幸せになって欲しい。えー俺とおんなじ願いじゃん。おそろーい!縁起良い~!貰って帰ろ。」

「いやいやいやいや晦さん待って!」

「あ、そうだ。祠で思い出したんだけどさあ。朔也、お前ちょっとこの祠壊してくんない?はいこれ、釘バットね。」

「突然何を言い出すんすか!?」

「いやね、この間のオフ会の時、雑魚に言われたんだよ。『俺の祠、今月に入ってもう3組もYouTuberが配信に来たぜ。』『俺ん所にも来た来た。バット持って色々壊してくれてさぁ。お陰で市から予算降りて修繕されたよ。今、社ピッカピカ!』『そーいえば、晦彦様、貴方の村12宇も祠あるのに1宇も壊されてないんですって?』『まじかよ、今どき祠壊されないとかダッセ!』って。」

「そんなマウントの取られ方あるんですか!?」

「俺もう、悔しくてさぁ!」

「誇ってくださいよ、治安いいって事じゃないですか!ツイタチ信仰の教えが行き届いてる証拠ですよ。」

「ほうじゃがの!『そんなんじゃけぇ龍首姫に愛想尽かれて逃げられる』とか言われるわけよ!これだから人の信仰に縋るやつはよぉ!それで人に舐められたら目くじら立てて怒るんだぜ?やばくない?七代先まで呪うとか…ッかー!ケツの穴が小せぇったらねえわ!!」

「だからってそんなの、絶対駄目だよ。怒られるよ。」

「安心しろ!俺が法だ!俺が許す!」

「何も安心できないって!」

「思い出してもムカつくわぁ、三下風情がよ、イキ上がりやがってよ!どこ中出身だよ全く……」

「落ち着いてください、冷静になって。」

「冷静だぁ?無理だね!俺は人に舐められるのは一向に構わん!好きなだけ舐め回して欲しい!余所の子のシャーする姿とか大好き!懐かない他神教徒ちゃん大好き!特に一神教の子の一途っぷりはたまらん!じゃがのぉ、同じ神に舐められるのだけはほんまに我慢ならん!この俺を馬鹿に?造化三神ならいざ知らずたかが小さな祠に構える三下が?!」

「だいぶ興奮してる……」

「ちょーっとネットでバズったからっていい気になりやがってあのボケナス……うちだってあれじゃけえな、本気になれば中四国最強のパワー呪殺スポット出来上がるからねマジで?名前を出せば伝染して広がるからねほんまに。因習村あと5,6村作れるからね?なんなら海外進出とか余裕じゃけぇね?宇宙にも出てやろうか?異世界にも行くが?」

「落ち着いて、晦さん。眼の前のバズを気にして後先考えない行動は控えようよ。絶対良いことないよ。人が巻き込まれたら嫌だろ?」

「凄く嫌だけど、まあしょうがないわな。俺が舐められない事の方が大事。それに人の被害を極力最小限に食い止めたいけぇ、だからこそお前が壊せばええんじゃないか。ほれ、握れ。振れ。」

「ああ、くそ。話が戻った。晦さん、祠って神様のお家だけど、その土地の怖い神様を封じてたりするから安易に手を出しちゃいけないんじゃないんですか?」

「へーそうなの?」

「そうじゃないの?!」

「いや、なんか祀ってんな―ぐらいにしか思わんかったわ。ふーん祠にそんな役割あったんか。知らんかった。まあ関係ないわな、壊せ。」

「絶対にヤダ!!!!そもそもなんでこの祠なんだよ。なにかやばい神様を鎮めてるとか……この人形が原因…?」

「だから無いわそんなん。」

「じゃあなんで……」

「この祠は卯のもんじゃ。普段は倉敷の銀行で働きょうるけぇ、こんな所にゃあおらん。卯はのぉ、前回畜生が大繁殖大暴れした時に、御使いに全集合をかけたんじゃが、あのアマ……――――他の御使い全員と寝よってからに………―――おかげで大朔祭がわやくそになっての。」

「サークル崩壊起きてる!?」

「殴り合いの罵り合い、責任の擦り付け合いの大喧嘩!結局俺と伊吹あのショタコンの二柱でなんとかして事なきを得たんじゃが……ほんまもう……大変で……あー…何が「つごもり様だけですよ♡」じゃ、あのアマァ……日吉にも言ったの思金おもちんから聞いて知っちょるけえな…良くもおれのサークルを……―――」

「サークルって言っちゃったよ。」

「結局俺は搾り取られただけで先っちょも挿れてねえしよぉ~!!チクショウ!!あんなクソ元カノの祠が俺の村にある事が許せねえ!朔ゥ!やっちまいなぁ!」

「絶対に嫌です。」

「ガキが大人に逆らうんじゃねえよ!」

「絶対に嫌です。」

「朔也ぁ~…クソッ、頑固なところがあいつに似てからに……―――どいつも!こいつも!畜生も!この俺を舐めやがって!」

「舐められてもしょうがないようなチンピラじみたメンタルしてるからじゃないですか?」

「あぁ?てめぇ俺の何処がチンピラだぁ?地元最強のこの俺だぜ?」

「本当にチンピラだ…」

「だいたいこの人形もさぁ!うちの神社にはめったに丑の刻参りなんて来ないのに…ッ!すーっごい悔しいッ!!」

「ああもう、怒りが塵積もっていく。そう言えば…―――――えっと、兄ちゃんよく言ってたけど、そういう呪いは回り回って自分に返ってくるから、悪意を持って傷つけるのは良くないって……」

「知るか!最終的に物を言わすのは拳!力こそ全て!目にものを見せてやる!!」

「だったらせめて自分で壊せよぉ!」

「俺がやったらお母さんに怒られるじゃろ?」

「俺がやっても村長さんに怒られるよ!」

「なにをしているのですか?」

「岬先生!」

「みーちゃん!あらー♡みーちゃん♡みーちゃん可愛でちゅね♡♡お買い物帰りでちゅかぁ?えらいねぇ~♡」

「相変わらず気持ち悪……」

「黙ってろガキ。」

「聞いてましたよ、さっきから祠を壊すだの呪いだの不謹慎極まりないことを……」

「だぁってぇーみーちゃん、これみーちゃんに当てた呪いだよお?みーちゃんの守護神《飼い主》たるこの俺を差し置いてこんなクソアマの祠にさあ……」

「おやめなさい。私情で器物損壊など、罰金どころか刑事罰もありえますよ。それに自分で自分の敷地の祠を壊すなんて、完全に自演じゃないですか。自作自演なんて炎上の元、それこそバレたら馬鹿にされますよ。」

「あっ……あーそうか。――――………そうかも。」

「え、納得するの?」

「因習とは自発的な人間の蛮行だからこそ、畏怖と信仰が生まれるんでしょう。そもそも、お前に信仰は必要ですか?」

「いや、俺は別にいらんよ。」

「神々が喉から手が出るほどまで欲する人の信仰をほぼ必要としないほど、お前が古い神格をもった偉大な神である事に間違いはないのですから。いちいち小さな挑発に乗らず、ドンと構えていれば良いんです。そうでしょう?」

「それもそうだな!うん、さすがみーちゃん!許すことが大事だもんな!そーゆー”理”作って人ちゃんを畜生から守ってあげてるし、俺ってやっぱ天才かも!」

「いや……うん、それで祠壊し辞めるなら全然良いけど……所で岬先生、この人形、結局なんなんですか?幸福を願うお呪いにしては不気味だし、やっぱり呪詛なんでしょうか?」

「これは………あー…そう、ですね。はい、んん?あいつの仕業か??」

「……藤原蜜柑という方に心当たりがあるんですか?」

「―――――ええ、まあ、少々。」

「何言ってんの?蜜柑はみーちゃんの……うげっ」

「ああ釘バットで!」

「加護だの呪いだの守りだの下らねぇ。こんなもんで幸福にありつけてたまるかよ。」

「先生?」

「少年、覚えておきなさい。」


「こんな無責任なものに縋った所で、何も変わりはしませんよ。」





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