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第98話 王都を駆ける剣

いつもお読みいただき、ありがとうございます。

ついに王都奪還作戦は、内部での激しい遊撃戦へと移行しました。『星辰の矢じり』は、ノヴァの緻密な作戦のもと、目標を分けて市街地へと深く侵入します。

最重要拠点へと向かうノヴァと剣聖ギュンター卿は、それぞれの隊で、強大な敵勢力と激突。

彼らの持つ技術と武力が、王都の命運を賭けたこの戦いに、決定的な一撃をもたらします。緊張感あふれる都市戦闘にご期待ください!

 敵の指揮官が倒れ、クライン公爵家の私兵軍が総崩れとなった後、『星辰の矢じり』の総勢320名は、ひとりとして脱落者なく無傷で次の作戦へと移行する。


「よし、全員聞け!門前の敵は排除した。ここからが本番だ。王都内部での戦闘は、速さと精度が命だ。混乱に乗じて一気に敵の核を叩く!」


 ノヴァの力強い声が、整列した部隊に響き渡る。


「各隊は目標地点を再確認。現在、敵の主力は門前の敗残兵の収容と、主要施設への防衛配置に追われていると推測できる。この機に乗じて敵の指揮所、魔法省、そして星辰大聖堂を制圧しその後王宮と攻め込み、クライン公爵の権威を完全に断つ!」


 ノヴァは王都の地図を広げ、冷静に状況を分析した。彼にはこの戦いを短期決戦で終わらせる「最適な道筋」が見えていた。打ち合わせした通りここからは4つに隊を分ける。第一遊撃隊はギュンター卿率いる90名、第二遊撃隊はノヴァ率いる90名、第三遊撃隊はレオンハルト率いる90名、第四軍として情報管理と予備兵力として50名。


「予定通り作戦は四部隊に分かれる!いいか、それぞれの隊長は、全責任をもって作戦を遂行せよ!ギュンター卿。私が先陣を切ります。敵の魔法省には、必ずや強力な闇の魔導師が控えています。闇の魔力を叩き潰さねばこの戦いは長引きます。」


 ノヴァは自分の作戦をギュンターに確認した。


「ああ、任せる。お前の魔法と剣術の腕は、もうわしがとやかく言う領域ではない。だが、決して無理はするな。お前は星辰の矢じりの要だ」


「では、行きますよ。レオンハルト、大聖堂は秩序を重んじる君にこそ任せられる。頼んだぞ。」


「任せてくれ、ノヴァ。ヴァイスブルク家の名に懸けて、信仰の府に踏み入る不敬者を打ち払う!」


 レオンハルトは.剣を掲げ返答した。

 各隊は散開し、王都の石畳を駆け抜ける。魔法省の重厚な魔導障壁の前に、ノヴァとユーリ、そしてセレスティアが到着した。

 

 ――ノヴァ率いる第二遊撃隊(魔法省)――

 

 歴史を感じさせる建物の前でノヴァ隊は正門の前を包囲していた。正門には魔法による障壁が展開され、ノヴァ隊の侵入を遮ている。

 

「さあ、炎の魔女様。お手並み拝見といきましょう。この魔法障壁、どう破る?」


 ユーリがニヤニヤしながらセレスティアを煽る。セレスティアはユーリの揶揄に眉を顰めながら魔力感知の眼鏡をかけ魔法を解析する。


「うるさいですわ、風の馬鹿!この障壁は火属性の制約を持つ水属性が核になっている。ノヴァ、あなたの魔法の理論から見て、水属性を最も効率よく無力化できる属性は何ですの?」


 セレスティアはノヴァに問いかける。


「理論的には、水属性が火属性を制約するが、この場合は光属性の『制約せいやく』を用いるべきと言える。水に光を乱反射させ流れを導き、魔力構造を歪ませる。セレスティア、君の火属性もとに光属性を生み出し共鳴させ水を導き、流れがもだれたところに火魔術で障壁に叩き込め!」


「なるほどですわ!面白い、やってやりますわ!」


 セレスティアはノヴァの指示通り、火属性の魔力に極大な魔力を注ぎ、光属性の性質を発現させた。彼女の持つ火の極親和とノヴァの魔法の理論が結びつく。


「火魔法!太陽の暴走ソル・エクスプロージョン!」


 巨大な光と熱の奔流が障壁に衝突した瞬間、障壁は光を乱反射させ崩壊した。しかし、その向こう側からは、青白い炎を纏った十数名の闇の気配をまとった魔術師が姿を現した。彼らはクライン公爵家が密かに研究させていた、闇魔法の使い手であるようだ。


「貴様らがやっていることはこの世の秩序を乱す……闇に還るがいい!」


 闇魔術師の一人が、闇属性の魔力を纏った鎌を振りかざして突進してくる。


「闇は俺が引き受ける!」


 ユーリは即座に風の精霊を再び憑依させ、全身の気を融合させた精霊魔法と格闘術の素早い動きで闇魔術師たちを翻弄し始めた。風を纏ったユーリの動きはまるで幻影のようだ。彼は一人の魔術師の懐に潜り込み、風の気を込めた拳を腹部に叩き込んだ。


 ドゴッ!


「ぐ、があっ!」


 青白い炎が一瞬で萎み、魔術師は呻きながら地面に倒れ伏す。闇魔法の使い手は身体能力が低いようで、ユーリの武術の前には無力だった。


「ノヴァ!こいつらは闇魔法を扱っている。防御は俺に任せて、浄化の術式を構築してくれ!」


 ノヴァは既に戦闘体勢に入っていた。剣は鞘に収めたまま両手で気を練り上げている。彼の瞳は闇魔術師たちの魔力の流れ、そして彼らが発する闇属性の異質な構造を解析していた。


「ユーリ、無理をするな。闇魔法の『逆理ぎゃくり』は、生命力を直接削る術式が多い。接触を避けるのが、最も効率的だ。」


 ノヴァはユーリに警告すると、隣のセレスティアに指示を出した。


「セレスティア、君の火の魔力に私の浄化の力と気を融合させる。そして水属性を逆理させる。目的は、浄化と熱による消滅の複合魔法だ。最大魔力で詠唱を頼む。」


「ノヴァの水の極親和を浄化に使うなんて、もったいないわね。でも、闇を打ち払うにはそれしかないわ!」


 セレスティアは、ノヴァの浄化と気そして水の魔力を受け取り、それを自らの火で包み込んだ。彼女は短く、しかし力強い複合術式の詠唱を始める。


「太陽と水の調和、闇を浄化し、火は熱で消し去る!複合魔法:聖水炎壁ホーリーフレイム・ウォール!」


 セレスティアが掌から解き放った魔力は、一瞬で純白の炎の壁となって立ち上がった。その炎は通常の火属性の赤熱したものではなく、光を帯びた水が核となっており、触れるものを浄化し尽くす力を持っていた。


 闇魔術師たちは驚愕し、青白い闇の炎でそれを防ごうとするが、聖水炎壁は彼らの闇を容赦なく焼き尽くしていく。


「バカな!闇の魔力の力が……なぜ……!」


 闇魔術師の一人が叫ぶが、ノヴァは冷徹に事実を告げた。


「闇魔法は『逆理』の歪んだ力。その摂理に同じ『逆理』をぶつければ。闇は循環する秩序に戻り、不調和な存在として、消滅するのみと言える。」


 その言葉がとどめとなったかのように、聖水炎壁が立ち上がった。光と水が渦巻き、闇魔術師たちの青白い闇の炎を飲み込む。やがてその青白い炎は浄化され、消え去った。


「ふう、なんとか片付いたわね。ノヴァの五理の理論、まさか闇属性にまで応用できるとは、恐れ入ったわ。」


 セレスティアは額の汗を拭いながら、魔導師としての純粋な興味を滲ませた。


「ふん!お前が理論を考える間に、俺は十人ほど拳で黙らせてやったぜ!これで相殺だ!」


 ユーリは誇らしげに胸を叩くが、ノヴァは表情を変えなかった。


「戦闘は、効率的な制圧が全てと言える。無駄な労力を排し、次に備える。ユーリ、君の気力と風の精霊の消費は30%。セレスティア、君の魔力消費は45%。目標:魔法省の中枢制圧。次の敵に備え、移動経路を最適化する。急げ。」


 ノヴァはそう言い残し、誰もいない魔法省の建物の奥へと歩き始めた。彼の背中からは、この戦いを終わらせるという強い意志が感じられた。

 

 ――ギュンター卿率いる第一遊撃隊(敵指揮所)――

 

 敵の指揮所は第一騎士団の建物に配置されていた。過去より王都を守るために改築された建物は堅牢な石造りの要塞のような作りになっていた。正面の門には土属性の結界が張られており一筋縄では突破できそうもない守りに思えた。結界の向こう側には重装甲騎士数十名が隊列を組み待ち構えていった。


「土属性の結界か。このような結界など一気に突き崩してくれるわ!」


 ギュンター卿はそう言うと剣を構え叫んだ


「奥義『天地雷鳴剣てんちらいめいけん』!!」


 門前を守っていた土属性の結界と重装甲騎士数十名を同時に粉砕したギュンターは、剣を一度振り下ろすと、涼しげな顔で号令をかけた。


「全員突入!指揮官を捕縛せよ!ジェイソン、君は後続の敵を警戒!」


 ジェイソンは、一礼する暇もなく、後方から迫るクライン公爵家の増援部隊へ部下二十数名と共にと駆け出した。彼の王龍剣術 聖光流は、単なる個人技ではなく、集団戦での連携と防御を重視する。


「私に続け!隊列を崩すな!」


 ジェイソンは、極致:気力集中オーラフォーカスで剣に気を練り上げ、荒々しい一撃で敵の先頭集団を押し返す。彼は特級:剣客の実力をいかんなく発揮し、男爵騎士団員たちとの連携で強固な防衛線を築き上げた。


「王国の秩序とは私利私欲に走る貴族に従うことではない!星辰の神々が示す調和を乱す者を討つ、それが騎士の真の使命だ!」


 ジェイソンは言葉と剣で、敵の騎士たちの精神をも揺さぶり始めた。


 その間、ギュンターは先頭を走り、指揮所内部へと突き進む。内部は狭い通路と防衛用の区画が複雑に入り組んでおり、多人数での突撃は困難だった。


「チッ、姑息な設計だ。ノヴァならこの構造を幾何学的に分析して、最適なルートを理論的に導き出すだろうが……」


 ギュンターは顔をしかめるが、すぐにその表情は無心流転ゼンスターの境地へと変わる。彼はもはや思考しない。体と剣が、敵の配置、魔力の流れ、風の動きを自然に感じ取り最適解を導き出す。彼の進む道に罠や伏兵はいなかった。彼の無心の剣が全てを先読みし最適ではないもの、すなわち敵を一閃のもとに切り伏せていく。


 通路の突き当たり、広い作戦司令室のような部屋の前にたどり着いた。そこにはクライン公爵家側の中核を担う将軍と、数名の熟練魔術師が最後の防衛線として待ち構えていた。


「よく来たな、老いぼれの剣聖め!貴様の時代は終わった!今こそ我こそが王国最高の騎士となるのだ!」


 将軍はそう叫びながら巨大な盾を構え、魔術師たちに詠唱を指示した。数名の魔術師が同時に土属性と火属性を組み合わせた複合術式を使い巨大な溶岩の壁をギュンターの前に出現させた。溶岩の壁は、剣聖ですら容易には突破できないほどの熱と質量を誇る。


「ほう。なかなか面白い複合魔法を使いおる。だが、力の誇示に過ぎん!」


 ギュンターは心技体の一致を極めた静かな構えをとる。彼の剣に魔力と気が同時に、しかし完璧な調和をもって集中し始める。


双極融合デュアルハーモニー……そして、無心流転。剣が我が魂となる!奥義『閃光絶命剣せんこうぜつめいけん』」


 ギュンターの剣はもはや光となった。溶岩の壁を構成する魔力の核を、その一瞬の光速の斬撃が完璧に捉え寸断したのだ。


 ドシュン!


 溶岩の壁が寸断され、熱い土塊が静かに崩れ落ちる。そして、その背後にいた将軍と魔術師たちは、何が起こったのか理解する間もなく、剣聖の一撃に倒れ伏した。


「……指揮官、捕縛完了。」

 

 ギュンターは剣を鞘に納めた。汗ひとつかかず、冷静に次の行動を決定する。魔法省と指揮所の制圧は完了。ノヴァは仲間たちの安否を確認すると、次の戦場へ視線を向け、ギュンター卿も先を急ぐ。王都の秩序を守る戦いは、今度、レオンハルトの剣に託されていた。

本話は、物語の核心に迫る王都内部での遊撃戦を描きました。主人公たちがこの戦いを短期決戦で終わらせるために、どのような戦術と力を発揮したのか、お楽しみいただけたなら幸いです。彼らの行動は、戦局全体に決定的な影響を与え、敵の体制を大きく揺るがします。この成果をもとに、物語は次の大きな展開へと進んでいきます。

次回、残された重要目標の制圧と、王都を開放する新たな戦いが始まります。引き続き、ご期待ください!

執筆の励みになりますので少しでも面白いと思われましたらブックマーク・高評価をお願いいたします。また次回の話でお会いしましょう。

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