第96話 王都奪還線前日
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いよいよ王都奪還作戦の全貌が明らかになります!作戦の要は、全軍で敵の主力を引き付け、ノヴァ率いる遊撃隊『星辰の矢じり』が高速で王都中枢を強襲する一点突破戦術。ノヴァは、ヴォルター男爵軍300名に自身の設計した付与魔法具を与え、彼らを「戦術的強化人間」へと変貌させます。剣聖ギュンター卿と和解した男爵軍の士気は最高潮に。「1日での決着」という非現実的な目標を掲げ、夜闇に溶け込んだ『矢じり』は、翌朝の国王の檄を合図に王都へ突撃!セレスティアの無限大火柱が城門を粉砕し、王都奪還の火蓋が切って落とされます。運命を賭けた戦いが今、始まります!
国王を含めた会議が終わるとノヴァは即座に、王国宰相エルドリッジ公爵、ヴァイスブルク侯爵とグロリアス辺境伯と共に、作戦の詳細な最終調整に入った。
【第一軍:諸侯連合軍(指揮:ヴァイスブルク侯爵、副:アルマ侯爵)】
任務: 王都南門方面で、敵の貴族連合軍と対峙。倍の兵力を前に、防御に徹し、決して攻め込まない。徹底した持久戦の構えで、敵の主力を完全に引き付ける。
【第二軍~第四軍:帝都騎士団(指揮:各団長)】
任務: 第2、第4、第6騎士団をそれぞれ敵の第2、第4、第6師団に側面から圧力をかけ、孤立させる。ノヴァ隊の突入まで、各師団が王都中央へ向かうのを阻止する。
【第五軍:グロリアス辺境伯軍(指揮:グロリアス辺境伯)】
任務: 王都北門付近で、敵のクライン公爵本隊と対峙。最も統制の取れた精鋭を相手にするが、本隊の動きを封じることを最優先。
【第六軍:王都奪還遊撃隊『星辰の矢じり』(指揮:ノヴァ)】
構成: 星辰魔導騎士団9名、剣聖ギュンター卿と弟子アルス、ヴォルター男爵軍300名。
任務: 敵が最も手薄と予測される地点から、付与魔法具を駆使して高速で王都に潜入。クライン公爵の司令部を直接強襲し、公爵を捕縛または討伐。
敵もまた強大だった。カルザン帝国という後ろ盾を得たクライン公爵の脅威は計り知れない。レオンハルトが静かに呟く。
「僕たちだけで、本当に王都を奪還できるのだろうか」
その不安に、セレスティアが炎のような情熱で応えた。
「弱気になってどうしますの!私たちには、完璧な魔術と星辰魔導騎士団の絆があります」
カイルも優しく微笑む。
「みんなで力を合わせれば、きっと大丈夫だよ」
ノヴァが仲間たちを見渡し、決意を新たにする。
全軍の進発が決定し、大地を揺るがす鬨の声が響き渡る中、王都奪還遊撃隊『星辰の矢じり』は、ヴェイルの城塞内、最も厳重に警備された区画で最後の準備を進めていた。ノヴァは、ヴォルター男爵軍300名を前に、付与魔法具を詰めた頑丈な木箱の山を指し示した。男爵軍は、元々剣聖ギュンター卿の指揮下にあり、練度こそ高いものの、武具は一般兵のそれに過ぎなかった。しかし、ノヴァが開発・量産した付与魔法具は、彼らの戦力を桁違いに引き上げる。
「ヴォルター男爵、そして諸君」
ノヴァはいつもの断定的で説明調の口調で話す。
「作戦の鍵は、速度と破壊力にある。諸君の武具に付与魔法を施した。全て僕が設計し、バルド局長たちと共に短期間で仕上げた特注品だ」
ノヴァが箱を開けると、中には薄い銀色の特殊な生地で作られた軽鎧、そして柄にルーン文字が刻まれた剣や盾が並んでいた。
「その軽鎧には、土魔法による防御強化と風魔法による静音を恒久的に付与している。剣には風魔法と土魔法によるスピード向上と耐久強化、盾には風魔法による衝撃緩和と耐魔・耐元素だ。これにより、諸君は通常の三倍の敵と渡り合える『戦術的強化人間』となる。」
ヴォルター男爵の目が見開かれた。この短期間で、これほどの精巧な付与魔法具を300人分用意したノヴァの『効率』と『構造』への理解は、もはや人間業の域を超えている。
「ノヴァ団長……これを、我々に貸与してくださるのか」ヴォルターは震える声で問うた。かつて自身の傲慢さから追いやった男の養子に命を救われるどころか、新たな力を与えられようとしている。
「もちろんだ。『一本の矢じり』の刃は少しでも鋭い方がいい。『理論』に基づいたこの力で、1日以内に王都を穿つという『真理』を証明する。」
付与魔法具の装備を完了したヴォルター男爵軍の前に、剣聖ギュンター卿が弟子のリアム、そして剣客ジェイソンを伴って現れた。ヴォルター男爵はその場で深く跪いた。
「ギュンター卿……お許しください。この愚かなヴァルターが、再び貴方の前に立つことになろうとは」
ギュンターはその威厳に満ちた佇まいで、ヴォルターを見下ろした。
「立て、ヴァルターよ。」
ギュンターの声は簡潔で重みがあった。
「謝罪を聞くために来たのではない。過去の過ちは未来への糧とせねばなるまい。お前は今ノヴァの『閃光の矢じり』の一員だ。」
剣聖はヴォルターが身につけた付与具を静かに一瞥した。
「ほう、その瞳には王家への忠義が満ちておる。ノヴァはお前を戦う者として信頼しておるのだ。」
ヴォルターは顔を上げ、涙を堪えるように拳を握りしめた。
「私は……卿の汚名を濯ぐためにも、この命惜しみません!」
ギュンターは小さく頷いた。そして他の男爵軍の騎士に目を向けると感心したように話しかける。
「皆久しいな。またともに戦場で戦うことができるようになるとは嬉しい限りだ。ノヴァの『一本の矢じり』が折れることのないよう、お前たち300名がその鋼の軸となれ。」
元上官の言葉ひとつで、ヴォルター男爵軍の士気は限界まで高騰した。彼らにとってこの戦いは王都奪還であると同時に、剣聖ギュンター卿への最後の忠誠を誓う儀式となった。
ヴォルター男爵軍と共にノヴァたち星辰魔導騎士団の9名は、王都へ向かう直前の最終待機場所である森の中で集まっていた。彼らの身はすでに光学迷彩付与布で覆われ、周囲に溶け込んでいる。
レオンハルトが冷静沈着な口調で、再び不安を口にした。
「ノヴァ。1日での決着は、あまりに非現実的だ。僕たちの『魔力』と『付与魔法具』を持ってしても、クライン公爵の本陣強襲は一瞬のミスが全滅に繋がる。」
ノヴァは静かに彼の言葉を受け止めた。
「レオンハルト、君の言う通りこの時間の縛りは最悪だ。しかし、この世界の『魔術』は現象の発動に偏っている。僕たちの『天理の術』は、敵の『常識』の外側にある。クライン公爵は『保守的』だ。彼は本陣にもそれなりの戦力を用意しているはずだ、だからこそ我々のような少数精鋭による本拠地直撃という戦術を最も『考えにくい』と軽視する。」
セレスティアが、炎のような情熱で応じた。
「フン。ノヴァの『理論』は認めてあげますわ。それに私たちの『完璧な魔術』があれば、『破壊と再生』を繰り返す戦場で『無駄』な動きなどありませんわ!」
ユーリが砕けた口調で緊張を打ち破るように笑う。
「うおっ、まじか!1日かよ!やべぇ、縛りじゃん!全部ノヴァのせいだぜ。でも、最高じゃねーか!俺の風と光の精霊魔法で道は開いてやるぜ!」
カイルは穏やかに仲間に癒しの魔力を送る。
「みんな、安心して。僕の治癒魔法も、きっと役に立つはずだ。みんなを僕は支えるよ」
ノヴァは改めて仲間たちを見渡し、深く揺るぎない確信を込めた言葉で締めくくった。
「みんな、気を引き締めていこう。これは単なる王都奪還ではない。王国とカルザン帝国の『未来』を賭けた戦いだ。僕たちの『真理』をこの戦いで証明する。行くぞ!」
光学迷彩付与布に包まれた『星辰の矢じり』は、夜の闇に完全に溶け込み、誰も知らない秘密の進路を辿って、王都ミルウェンの心臓部へと向かった。
運命の半日が、今始まった。
翌朝、グロリアス辺境伯領ヴェイルの城外に集結した2万5千の兵士たちに、国王ラファエルの声が響き渡った。
「聞け!王国の忠臣たちよ!我々は今、内と外、ふたつの危機に直面している!クライン公爵の裏切りと、帝国による侵略だ!」
兵士たちの間に、どよめきが広がる。
「しかし、我々は怯まない! 王都を奪還し、正義の王権を回復することが、王国を救う唯一の道である!王国の未来はこの一戦に懸かっている!」
そして、ヴァイスブルク侯爵が剣を抜き雄叫びを上げた。
「これより全軍、王都ミルウェンへ向けて進軍開始! ノヴァ団長の『星辰の矢じり』が、我らの希望の光となる!進め!王国の名のもとに!」
大地を揺るがすほどの鬨の声が響き渡り王家連合軍は、王都奪還と遠き友邦の救援というふたつの重い使命を背負い、夜の闇を切り裂いて進み始めた。ノヴァと『星辰の矢じり』はすでに誰にも気づかれぬよう、王都の闇へと消えていた。
「よし、王都奪還作戦を開始する」
グロリアス辺境伯領から王家を支持する連合軍が出陣した。総勢約10,000名の軍勢は、朝霧の中を粛々と進んでいく。ノヴァ率いる星辰魔導騎士団は、先行して王都の近く森の中に身を潜め先端が開かれるのを待ち構えていた。迷彩服を身にまといノヴァは周囲を警戒していた。
「精霊たちの声が……より強くなっている」
彼の言葉に仲間たちも緊張を高める。
「ノヴァ、王都まではどのくらいだ?」
ユーリが尋ねる。
「この位置なら、半刻には王都の外郭に到達する」
レオンハルトが地図を確認しながら答える。
「問題は、敵がどの程度の戦力を配置しているかだ」
その時、偵察から戻ったロバートが報告した。
「ノヴァ団長!王都の城門に約2000名の敵軍が展開しています。城壁にも魔術師部隊が配置されている模様です」
「2000名か……」
ノヴァが考え込む。その時、主戦力同士の連合軍が激突した。同時にグロリアス辺境伯が敵本体に突撃する。レオンハルトはノヴァに問いかける。
「ノヴァ、ついに始まったようだ!まずはどうする?」
「正面突破です。星辰魔導騎士団が先陣を切り、城門を突破そののち全員で王都へ侵入します。」
「なるほど、僕たちの実力なら可能だろう。しかし危険だ」
「大丈夫です。僕たちには……」
ノヴァが父の剣を握りしめる。
「守るべきものがある」
王都の城門が見えてきた。高い城壁の上に並ぶ敵兵の姿が、夕陽に黒く浮かび上がる。
「いよいよだな」
ギュンター卿が剣の柄に手を置く。
「みんな、準備はいいか?」
ノヴァの声に、仲間たちが頷く。
「当然ですわ!私の完璧な魔術で、城門など跡形もなく吹き飛ばして差し上げます!」
セレスティアが自信満々に宣言する。
「セレスティア、君の魔術は強力だが、味方を巻き込まないよう注意してくれ」
レオンハルトの指摘に、セレスティアがむくれる。
「失礼ですわね!私の魔術制御は完璧です」
「まあまあ、セレスティア」
カイルが仲裁に入る。
「みんなで協力すれば、きっとうまくいくよ」
敵の城門前300メートルで、敵2000名の守備隊が陣を展開する。ノヴァが仲間たちに指示を出す。
「レオンハルト、まず防御結界を展開してくれ。セレスティア、城門に向けて最大威力の攻撃魔法を準備。カイル、支援魔法で援護を」
「任せて」
レオンハルトが魔力を集中し、星辰魔導騎士団全体を覆う巨大な氷の結界を展開する。
「氷華結界!」
美しい氷の壁が一行を守る。同時に、セレスティアが杖を高く掲げた。
「見せてあげますわ!私の真の力を!フランマ・マグナ・インフィニータ(無限大火柱)!」
彼女の杖から放たれた炎は、まさに太陽の如き輝きを放ち門へと吸い込まれていく。
「うおおおお!」
敵兵たちの悲鳴が響く中、城門が轟音と共に崩れ落ちる。
「やったぜ!」
ユーリが歓声を上げる。
「よし!突入するぞ!」
ノヴァが剣を抜き、馬車から飛び降りる。
「みんな、王都奪還の始まりだ!」
星辰魔導騎士団が崩れた城門に向かって突撃を開始した。王都奪還への道のりは始まったばかりだが、ノヴァたちの瞳には確固たる決意が宿っていた。クライン公爵との最終決戦が、いよいよ幕を開ける。
第96話をお読みいただきありがとうございます。
本話は、満を持しての王都奪還作戦開始と、ノヴァの理論と技術の集大成が光る回となりました。全軍の配置、そして最重要部隊『星辰の矢じり』の構成と任務が詳細に描かれ、物語はいよいよクライマックスへ。ノヴァが開発した付与魔法具により、ヴォルター男爵軍は常識を覆す力を得ました。剣聖ギュンター卿とヴォルター男爵の和解と、高まった男爵軍の士気も、この作戦の成功を強く後押しするでしょう。
そして作戦開始。セレスティアの無限大火柱が城門を吹き飛ばすシーンは、ノヴァたちの持つ「常識の外側にある力」の証明であり、今後の激戦への期待を高めます。次回、ついに王都内部での本格的な戦闘が開始されます。引き続きご期待ください!




