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第95話 『星辰の矢じり』と帝国侵攻

本日も読んでいただきありがとうございます!

94話と95話を順序を誤って掲載してしまい申し訳ありません。改めて掲載いたします。

今回は、王都奪還作戦の全容がついに明らかになります。少し長めですが、会議シーンの緊迫感を楽しんでいただければ嬉しいです。それでは本編へどうぞ!


 会議ではシルバーグロウ公爵とホークウィンド侯爵からの返答に貴族たちは皆狼狽した。ホークウィンド侯爵からは地理的に王都を挟んで反対側に領土があるため参陣はできないが食料品の供給を御用商人を経由して送る旨の内容であった。

 

「王国貴族として食料の供給のみ行うとはいかがなものなのか?商人の情報によると敵方にも食料の供給を行っているらしい」


「恥知らずな!このような蝙蝠のようなやりようは如何なものか?」

 

 そしてシルバーグロウ公爵は自身が戦力を保有しておらず、また研究者であることから支持はするが戦闘への参加はできないと返事であった。

 

「これではクライン公爵軍と比べ、此方は数的に不利。やはり講和も視野に置くべきでは?」


 会議では参集した貴族の中から消極的な態度にかわりはじめる者が出てくる。国王は話の流れを変えるべくノヴァに意見を求める。

 

「騒々しい沈まれ!皆にはまだ話していなかったが星辰魔導騎士団に王都への偵察の任務を昨日行わせている。ノヴァ団長ご苦労だった。敵の様子はどうだったか?」

 

「は!では偵察任務の報告をいたします。敵は本体含め37000人程度でした。」


 ノヴァはまず敵の正確な人数を簡潔に伝えた。やはりというか講和派の貴族からい声が上がる。

 

「やはり約4万近くいるのか。現在我々は25000程度話にならないでしょう!国王陛下ここは講和を設けるべきです。」


「まあ待て。ノヴァおぬしの考えを聞きたい策はあるか?」


 事前に話を聞いていた国王は続きを促す。


 「それでは、敵は総数約4万と数だけはこちらを大きく上回っていますが、大半は貴族の連合が占め、しかも統制は取れておりません。そして主力の一角である王都師団、第1団は先の我々との戦闘で被害を受けており今だ回復していません。また他の団と親衛隊についても指揮官級はともかく、一般兵は皆士気が著しく低いことがわかっています。」


 ノヴァはいったん話を切ると国王に向かい反応を確認する。国王は続けろとばかりに頷く。


「まずはそちらの軍を4軍に分けます。ひとつは主力である諸侯軍は第7騎士団とともに、敵の主力である貴族連合と対峙していただきます。しかし積極的に敵に当たる必要はありません。敵の主力である貴族連合を引き付けるのが主な役割です。」


「しかし、それでは我々は倍の敵に向き合うというのか?それでは……。」


 貴族で数名が顔を顰め中には反対意見を述べる者も出てくる。


「積極的に敵にあたることはないと申し上げています。この軍の目的は敵の主力を引き付けること。この軍の指揮官はヴァイスブルク侯爵にお任せします。そして副将にアルマ侯爵。」


 両侯爵とも異存はなく大きくうなずく。両侯爵が了解の意を示したため他の貴族から異論は出なかった。

 

「そして敵の各帝都師団は第2、第4、第6師団にそれぞれ抑えてもらいたい。そして敵の本体であるクライン公爵軍にはグロリアス辺境伯軍にあたってもらいます。」


 王はそこで疑問をノヴァに問う。


「それだと戦力分散になりこちらのほうが数が少ない分不利なのではないかね?それにノヴァ団長よ、あと一軍とはどこにあるのか?」


「あと一軍として我々星辰魔導騎士団9名と剣聖ギュンター卿とその弟子であるわが弟アルス、そしてヴォルター男爵軍300名で敵の本拠地 王都を攻略します。」


 会議に参加している人間からざわめきが起こる。グロリアス辺境伯は思わず意見を述べた。


「それは少し現実的では無いのではないか?少人数であれば、囲まれた瞬間に壊滅の危険がある。」


「『巧遷者は敵の必ず守る処を攻む』と申します。大軍が囮となって敵の注意を引く中、少数の遊軍だけで本拠地を襲うなど、通常考えにくいと愚考します。ヴォルター男爵軍300名はもともとギュンター卿の指揮下にあった部隊で独立部隊として運用可能です。そして付与魔法具により戦力を増すことが可能。そして我々星辰魔導騎士団9名と弟も、少数ながら精鋭中の精鋭。一本の矢じりとしては、十分すぎる戦力でしょう」


 ノヴァは会議の参加者を見渡し最後に一言付け加える。


「今回の敵大将であるクライン公爵は保守的でかなり用心深いと考えます。ならばこそこちらの戦力のすべてが主力と当たっていることに違和感を持たないでしょう。そこにこそ勝機があります。」


 ノヴァの提案は、会議室の空気を一変させた。一見無謀に見えるその作戦は、敵の戦力分析と、クライン公爵の性格を深く見抜いた「奇策」であり、講和に傾きかけていた貴族たちの血を沸騰させた。


「敵の総数は多いが、統制がない。我らが正面で引きつけ、その隙にノヴァたちが王都の心臓を貫くというわけか……」


 ヴァイスブルク侯爵が低く唸るように言った。その顔には、長年の軍務で培った老練な武人の閃きが浮かんでいる。


「そうです。そして敵の士気の低さこそが、この作戦の鍵となります」


 と、ノヴァは続けた。


「敵兵は内乱に疲れ戦意を失っている。我々が王都に突入すれば、彼らはすぐに動揺し、戦線は内部から崩壊するでしょう。この作戦は数で劣る我々が勝利を掴む唯一の道です。」


 国王ラファエルは、静かにノヴァを見つめていた。その表情は、当初の疲労から確固たる決意に変わっている。


「ノヴァ団長、よくぞ申してくれた。余はこの作戦を採用する。『分進合撃、本拠地直撃』。これこそ、我らが王国の旗の下に、正義と奇跡を打ち立てる戦略である!」


 国王の力強い言葉に、ヴァイスブルク侯爵とアルマ侯爵が、剣の柄を叩いて応えた。


「御意に!この諸侯軍、陛下の御意のままに、敵の主力全てを引きつけてみせましょう!」


「アルマ家の治癒の力をもって、王国の盾となる軍を支えます!」


 グロリアス辺境伯もまた、自らの老躯に活力が漲るのを感じていた。


「よし。であれば、我が辺境伯軍は、クライン公爵本隊の精鋭部隊を釘付けにする!ノヴァ、此度の戦いはおぬしたちの鋭利な矢じりに懸かっているぞ!」


 こうして、王家を支持する貴族たちの意志はついにひとつにまとまった。全軍の士気は一気に高揚し、誰もが王都奪還の希望の光を感じ会議室には久しぶりの希望が満ち始めていた。しかし、その高揚感は、廊下に響き渡った一人の伝令兵の絶叫によって、瞬時に凍り付くことになる。


「急報! 」


「カルザン帝国がノルレア自由都市群に侵攻!」

 

「何!カルザン帝国だと。どういうことか」


 国王ラファエルは突然の凶報に驚き、椅子から立ち上がり伝令兵に訊ねる。


「敵の規模は約10万規模。ノルレア自由都市群は剣聖ギデオン・バルドゥスを総大将とし、国境付近で3万5千の軍勢で敵と対峙しているとのこと。それに伴い、ノルレア自由都市群より特使が参っております!」


 宰相イグナティウス・フォン・エルドリッジは、震える手で扇子を握りしめ、国王に進言した。


「陛下、このタイミングは!クライン公爵の陰謀が、我々の想像を遥かに超えていたことを示します!公爵は、王家転覆だけでなく、国家を外敵に売り渡すつもりだったのでわ!?ノルレアは王国と国境を接しており、もし彼らが敗れれば、王国の西部全体が帝国軍の侵攻ルートとなります!」


 会議室は再び混乱に陥った。講和派の貴族からは、王都どころではないと、軍の撤退を主張する声まで上がり始めた。


「王都は一時諦めるべきだ!ノルレアを救援し、国境線を死守しなければ王国は滅びる!」


「しかし、王都を放置すればクライン公爵が王位を僭称し、王国は内側から崩壊するぞ!」


 救援か、王都奪還か、混乱の中国王は目を閉じ、深く息を吸い込んだ。そして、ゆっくりとノヴァを見つめた。


「ノヴァ団長。カルザン帝国がノルレアに侵攻したということは、奴らが本命だ。しかし、この王都奪還作戦は、帝国への最大の牽制にもなる。我々はどうすべきか?」


 ノヴァは、その冷徹な思考をもって、状況を分析した。


「陛下、ノルレアへの救援は現状では不可能です。我々の総戦力2万5千に対し、帝国軍は10万。正面から当たれば全滅します。またノルレアへ向かうにも長大な行軍時間が必要です。我々が到着する頃には、勝負は決しているでしょう。」


 ヴァイスブルク侯爵が苦々しく口を開く。


「では、見捨てるというのか!」


「見捨てるのではありません」


 ノヴァは断言した。


 「優先順位の問題です。今、我々が動ける最速かつ最善の策は、王都の短期決戦を成功させることです。王都が解放され陛下が正当な王位を回復すれば、国内の混乱は収まり全ての資源を対帝国戦に集中できるようになります。」


 エルドリッジ公爵が、ノヴァの言葉の核心を突く。


「つまり、この王都の戦いを一日でも早く終わらせ、その後に救援軍を出すということか!」


 ノヴァは力強く頷いた。


「その通りです。王都を三日以内に奪還できれば、士気の低いクライン公爵軍は瓦解し、我々は疲弊を最小限に抑えられます。その上で我々の精鋭部隊をノルレア救援の先遣隊として直ちに派遣する。それが、王国とノルレアの両方を救う唯一の道です」


 国王は、ノヴァの目の中に揺るぎない確信を見た。そして自らの座を立ち、宰相イグナティウスに向き合った。


「イグナティウス、ノルレアの特使を余が直接迎えよう。余は王国が彼らを見捨てていないことを伝える。だが、援軍は王都奪還後になると正直に伝えるのだ」


「は、しかし……特使が納得するかどうか」


 エルドリッジ公爵の懸念はもっともだった。しかし、国王の決断は揺るがなかった。


「彼らを納得させるためにも、我々は王都を速やかに奪還せねばならぬ!」


 国王ラファエルは、深く、深く、ノヴァに頭を下げた。


「ノヴァ団長。王都奪還の全権を君に委ねる。この戦いを短期決戦で終わらせ、我らをふたつの国難から救ってくれ!」


 ノヴァは、その場に集まったすべての貴族、騎士団長、そして国王の視線を受け止め、静かに、しかし王国の未来を背負う重みを帯びた声で答えた。


「御意。星辰魔導騎士団は、陛下の『閃光の矢じり』となり、王都を貫きます。全軍の諸侯軍、辺境伯軍、そして帝都騎士団の皆様は、我々が王都を穿つまで、敵の主力を釘付けにしてください。1日……、1日で決着をつけます」

 

 ノヴァ率いる『星辰の矢じり』は、「1日で王都を穿つ」という非現実的な目標を掲げ、敵の心臓部へ高速強襲を仕掛ける。王国の運命その全てが、わずか数百名の精鋭たちの一撃に懸けられた。王都の夜は深く、長く、そして血の匂いを予感させる。最速の王都奪還作戦の火蓋が、今、切られようとしていた。星辰魔導騎士団が次に目にするのは、解放の光か、それとも絶望の闇か――。

読了ありがとうございました!

王都奪還作戦が固まりつつある中、今度はカルザン帝国がノルレアへ侵攻。クライン公爵の反乱と帝国の動きが一本の線に繋がり、物語は大規模な戦争編へ突入していきます。

本日は19:20にもう一話掲載いたします。引き続きお楽しみいただければ幸いです。

執筆の励みになりますので少しでも面白いと思われましたらブックマーク・高評価をお願いいたします。

それでは、次話で!

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