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第93話 逃走と合流

いつもお読みいただきありがとうございます!

王都を脱したノヴァたちは、国王陛下一行を守りつつグロリアス辺境伯領へ向けて逃走中。しかし、クライン公爵の追撃は激しさを増し、ついに“王都第1騎士団”二千名が進路を封鎖します。王家を守る騎士たちの決死の突破戦、どうぞお楽しみください!

 星辰魔導騎士団とマーカス団長の第7騎士団が合流し、クライン公爵の追撃部隊を撃退した後ノヴァは国王陛下に近づくと頭をたれ提案する。

 

「陛下、緊急の折無作法を失礼いたします。すでにサウスウォール侯爵が敵方に寝返っております。ここはグロリアス辺境伯領へ向かいましょう。あそこなら安全です。わたくしたちと第7騎士団が陛下と皆さまを守り無事お連れ致します。」

 

「頼む、ノヴァ、マーカス。王国の未来を……君たちに託す」

 

 山道を進むのは、グロリアス辺境伯領へ向かう国王一行の護衛にあたる、星辰魔導騎士団と第7騎士団、合わせて約60名の部隊だった。要人30名を守るには、やや手薄な小規模部隊である。


「ノヴァさん、前方に異常な魔力反応」

 

 セシリアが魔力感知用の眼鏡を調整しながら告げる。


「距離は?」


「約二キロ先。しかし、規模が尋常ではありません」


 ノヴァは馬車を止め、精霊たちの声に耳を澄ませる。森の風がざわめき、遠くで雷鳴のような低い振動が伝わった。その先に待つのは、森を割るように進軍する二千の軍勢。黒鷲の旗が翻り、重装騎士の槍列が地を揺るがす。王都第一騎士団――クライン公爵の切り札が、ノヴァたちの前に立ちはだかろうとしていた。セシリアは持ち前の感知能力の高さで相手の規模を読み取る。


「大型の精鋭部隊……約2千名以上」

 

「2千名だと!?」


 ユーリが顔を青ざめさせる。


「恐らく王都第1騎士団だ。クライン公爵の切り札だろう」

 

 エルドリッジ公爵が分析する。前方の森から黒鷲の旗が翻り、重装騎士、従士、戦闘魔術師の大部隊が姿を現した。その中からひと際大きな鎧に身を包んだ壮年の男がこちらに向かい声を張り上げる。


「星辰魔導騎士団よ!」


 指揮官らしき男が甲高い声で叫ぶ。


「我々は王都第1騎士団だ。おとなしく国王を引き渡せば、君達の命は保証しよう!」


「断る!」


 ノヴァは決意を込め言葉で応酬する。


「我々の使命は陛下を守ることだ!」


 敵は即座に魔力障壁を展開した。三重構造の結界が街道を完全に封鎖する。両側の森と谷にも敵の兵が配置され迂回を許さない、絶体絶命の状態だった。


「セレスティア、障壁の弱点を探せ!」

 

「了解ですわ!」

 

 赤い魔力を腕に集め、炎の矢を次々と放つ。魔力の奔流が結界にぶつかり、眩い光と轟音が夜明け前の森を震わせた。しかし結界はびくともしない。


「この障壁!三重構造ですわ。突破には時間がかかります」

 

 セレスティアの表情も厳しい。


「森は迷う恐れがある……、護衛対象者もいる。ここは力押しの正面突破だ!!」


 ノヴァは判断する。


 「ユーリ、ジェイソン、レオンハルトは敵前衛を押し返せ。セレスティア、最大火力で瞬間突破を狙え。カイルとセシリアは王族護衛と仲間の支援を頼む。ロバートとアルフレッドは防御系の魔術を使って側面からくる敵から保護対象者を守れ」


「任せろ!」

 

 ユーリが精霊憑依を発動。風を纏った体が雷光を帯びて疾走する。拳が空気を切り裂き、前衛の騎士たちが吹き飛ぶ。鋼鉄が砕ける音、肉が弾ける音が森にこだました。


「精霊よ、我が想いを受け取れ!連続雷風拳!」


 同時にセレスティアが詠唱を続ける。

 

「我が魔力よ、すべてを燃やし尽くせ!――フランマ・インフェルノ!」

 

 炎の奔流が結界を破り、溶岩のように地面を焼き焦がす。騎士たちは盾を構え備えようとしたが、周囲を炎に囲まれ逃げ場を失った。


「今だ!全員突破しろ。正面突破だ!」

 

 ノヴァが先陣を切り、父の剣に光を纏わせて突入。敵の盾を弾き、剣閃が一瞬で甲冑を裂く。

 

不動重力斬ふどうじゅうりょくざん

 

天地雷鳴剣てんちらいめいけん

 

 ギュンター卿もノヴァの技に合わせ剣聖の奥義を放つ。巨大な斬撃が敵の陣列を押し潰し、土煙と炎が交錯する。しかし敵も圧倒的な数で応戦する。重装騎士の槍列が前進し、魔術師たちが結界を再構築。


 カイルは治癒魔法で仲間を回復し、セシリアは支援魔法をかけていく。剣聖が戦列に加わったことを受けレオンハルトは自身の身に防御魔法をまとい、盾として護衛対象者たちを守る。


「陛下、お下がりください!」


 戦闘は一時間に及んだ。森の木々は斬撃と魔法の衝撃で折れ、血煙が立ち込める。敵兵の叫びと武器のぶつかる金属音が空気を震わせ、戦場は地獄のようだった。


 ついに星辰魔導騎士団は敵陣を切り裂き、王族の安全を確保。だが代償は大きい。ユーリは肩に深い打撲を負い、セレスティアは魔力を使い果たして顔面蒼白。レオンハルトに至っては左腕を骨折してしまう。カイルが慌てて駆け寄り、回復魔法で治癒を開始する。


「みんな、よく頑張った。もう少しだ」

 

 ノヴァの言葉に、一同は残りの力を振り絞った。


 やがて遠くにグロリアス辺境伯領の城門が見え、安堵の溜息が漏れる。

 

「ついに着いた……」


 王妃クラリスがつぶやく。その瞬間、領都の城門から数百名の騎士がグロリアス辺境伯の旗を掲げこちらに向かってきた。グロリアス辺境伯は近くまで来ると馬を下馬し、片膝をつき国王へ話しかける。

 

「陛下、よくぞご無事で我が領までたどり着かれました。このエルネスト・フォン・グロリアス今より陛下を身命を賭してお守りいたします。」


 エルネスト辺境伯が先導して城門へと迎える。しかしノヴァの表情は険しい。精霊たちの警告がまだ続く。

 

「エルネスト卿、警戒を怠らないでください。クライン公爵は追撃してくる可能性は高いはずです」

 

「承知している。我が力のすべてをもって全力で陛下を守ろう」

 

「ユリウス!」

 

 エルネスト辺境伯が筆頭執政官を呼ぶ声が響く。

 

「はっ!」

 

「領都軍の全戦力を招集せよ。さらに旗下の貴族たちにも至急参陣を促すのだ。これは国家の存亡に関わる事態だ」

 

 ユリウスは血相を変えて駆け出していく。その様子を見ながら、レオンハルトは静かに立ち上がった。

 

「ノヴァ、私も父アルブレヒト・フォン・ヴァイスブルクに連絡を取り、状況を確認し協力を仰ごう」

 

「頼む。今は一刻を争う」

 

 ノヴァも疲労を押して立ち上がる。レオンハルトは通信クリスタルを取り出し、精密な魔力操作で遠距離通信を開始した。

 

「父上、レオンハルトです。緊急事態です」

 

 クリスタルの向こうから、アルブレヒト・フォン・ヴァイスブルクの厳格な声が響く。

 

「レオンハルトか?お前たちは無事だったか。状況は把握している。私は旗下の私兵を連れ王都の近郊に身を潜めている。国王陛下はご無事か?」

 

「はい。父上、クライン公爵の追撃を阻止し、現在グロリアス辺境伯領に国王一行を保護し避難いたしました。事は一刻を争います。父上にも王家の忠臣である貴族たちに協力を要請していただけますか?」

 

「すでに動いている。ヴァイスブルク家の全戦力をもって王家をお支えする」

 

 一方、カイルも父のアラステア・フォン・アルマと通信していた。

 

「父上、カイルです」

 

「息子よ、心配していた。話は第7騎士団の騎士から聞いたぞ。そなたが王家の方々をお守りしと共にあることを誇らしく思う。今私も第7騎士団の残兵とともにグロリアス辺境伯領の領都へと向かっている。」

 

 アラステアの穏やかながらも力強い声が聞こえる。

 

「アルマ家も親類、縁のある貴族に声をかけ全力をもって王家をお守りする。近隣の侯爵家にも声をかけ領都に向かおう」

 

「ありがとうございます、父上」

 

 そんな中、エルドリッジ公爵イグナティウスは扇子を手に、冷静に状況を分析していた。

 

「エルネスト辺境伯、貴殿の迅速な対応に感謝いたします」

 

「当然のことです、公爵閣下。陛下をお守りするのが臣下の務め」

 

 イグナティウスは微笑みながらも、その目は鋭く光っていた。

 

「この混乱に乗じて、各貴族がどう動くか見ものですな。忠義と保身、どちらを選ぶか」

 

 ノヴァは精霊の声に耳を澄ませた。王都から遠く離れたこの地でも、精霊たちの思いが聞こえる。

 

「師匠、王都の状況はいかがですか」

 

 辺境伯から情報を共有すべく内容を聞いた剣聖ギュンターが厳しい表情で応える。

 

「芳しくない。クライン公爵の手は確実に王宮を掌握しているようだ。しかし、諦めるには早すぎる」

 

 王妃クラリスが不安そうに国王ラファエルを見つめる中、皇太子リオンが無邪気に質問した。

 

「お父様、僕たちはここにずっといるの?」

 

「いいや、リオン。必ず王都を取り戻す」

 

 国王の決意に満ちた声に、一同の士気が高まる。その時、辺境伯家筆頭執政官のユリウスが息を切らせて戻ってきた。

 

「辺境伯様!領都軍4000名の招集が完了いたしました。また、旗下の貴族からも続々と参陣の報告が届いております」

 

「上出来だ、ユリウス」

 

 エルネストが満足そうに頷く。すると、意外な人物が現れた。ヴァルター・フォン・アウグスト男爵だった。

 

「エルネスト辺境伯様」

 

 ヴァルターは深々と頭を下げる。

 

「私めも、この戦いに参加させていただきたく」

 

 一同が驚く中、ヴァルターは続ける。

 

「これまでの愚行の償いとして、今こそ王家への忠誠を示したいのです」

 

 ノヴァが静かに応える。

 

「ヴァルター男爵、過去は過去だ。今、あなたの心が定まっているなら、共に戦おう」

 

 その言葉に、ヴァルターの目に涙が浮かんだ。

 

「ありがとうございます、ノヴァ様」

 

 こうして、王家を支える戦力が着実に集結していく。しかし、同時に敵の動きも活発化していることを、一同は感じ取っていた。王都から遠く離れた各領地で、貴族たちは重大な選択を迫られていた。クライン公爵の突然のクーデターに、王国全体が動揺している。

読んでくださりありがとうございます!

今回は怒涛の追撃戦となりました。星辰魔導騎士団と第7騎士団の奮戦、そして王家を支える貴族たちの結集……物語はいよいよ大きな局面へ向かっていきます。

次回、ついに“王国再興戦”の布陣が固まり始めます。面白いと思っていただけたら、ブックマークや評価で応援していただけると励みになります!

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