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第6話 加速する成長、広がる世界

すみません予約投稿の設定を失敗していました。今更ながらですが本日2話目を投稿いたします。明日はまた19時以降に投稿予定です。よろしくお願いいたします。

ここまで読んでくださっている皆さま、本当にありがとうございます。

ノヴァの物語も第6話。彼の成長は加速し、言葉も魔法も、そして世界への興味も深まっていきます。

今回は、光と火、二つの魔法の習得。そして初めての「外の世界」への一歩が描かれます。

小さな好奇心が、大きな波紋を生む――そんな幼年期の躍動をお楽しみください。

 ノヴァがこの世界に生を受けてから、あっという間に一年半の時が流れた。彼の成長は驚異的で、もはや赤ん坊というには語弊があるほどだった。


よちよち歩きはとっくに卒業し、今では宿の中を縦横無尽に駆け回り、小さな身体からは想像できないほどの活力を迸らせていた。


 言語能力は、周囲の度肝を抜き続けていた。彼が発する言葉は、もはやたどたどしいものではなく、感情や意思を伝えるのに十分なほどスムーズになっていた。


複雑な質問にも的確に答え、大人の会話にも臆することなく加わる。


「エルダ、その手紙は、どこからのものですか? 文字の形からすると、北方のものに見えますが紋章が少し独特ですね」


 ある日の昼下がり、ノヴァは帳場で帳簿と格闘しているエルダに話しかけた。エルダは思わず持っていたペンを落とし、ノヴァを二度見した。


「ノヴァ坊……あんた、そんな文字まで読めるのかい? こりゃあ、商人が置いていった、遠い街からの手紙だが……どうして分かったんだい?」


 ノヴァはにこやかに答える。


「前に似たような貨物が届いていたのを、フィーユと一緒に見ましたから。その時、フィーユが『北方特有の荒々しい文字だ』と教えてくれました」


 エルダは「へぇー、フィーユがねぇ!」と感心したように頷いた。フィーユもまた、ノヴァの記憶力と観察力に舌を巻いていた。


彼女が宿にある歴史書や物語本を読んでいると、ノヴァがいつの間にか隣に座り込み、目を輝かせながら質問を浴びせてくる。


「フィーユ、この英雄の記述にある『聖なる剣』というのは、具体的な属性を持つ剣なのですか? それとも、象徴的な表現なのでしょうか?」


「えっと……ノヴァ坊、それは、たぶん象徴的な表現だと思うわ。だって、剣に属性が宿るとしたら、使い手を選ぶってことだし……」


 フィーユはノヴァのあまりに専門的な質問に、時折たじろぎながらも、懸命に答えてくれた。ノヴァはそうしたやり取りを通して、この世界の常識、特に魔法に関する一般的な認識を深く理解していった。


(なるほど。この世界では、魔法は大きく生活魔法と術式魔法に分けられるのか。生活魔法は日々の暮らしを便利にするためのもので、火を起こしたり、水を汲んだり、明かりを灯したり……。一方、術式魔法は人や魔物との戦いに用いられるもので、火の玉を飛ばしたり風の刃を放ったり、地面を隆起させたりする……。そして、魔法の使い手は通常2〜3属性が限界、とされている。4属性使える者は『稀な才能』と称され、全属性を操れる者は1万人に1人いるかいないかという、まさに伝説級の存在とされている、と……。そして、一般的に習得しやすい順は光・火・土・風・水の順。水属性は特に珍しい、と。母さんが使えると言っていたな。)


 夜な夜な、ノヴァは密かに魔法の練習を続けていた。一般的に習得しやすいとされる光属性は、彼にとっても最も手応えを感じやすいものだった。


父親に初めて見せてもらった「ルーメン」の練習から始まり、今ではその成果が目覚ましい。布団の中で、彼は指を掲げ、静かに呪文を唱える。


「ルーメン」


 直径5cmほどの光球が、彼の指先から生まれ、安定して空中に浮遊した。光は青白いながらも、部屋の隅々までをはっきりと照らす。そのまま数分間、光球は揺らめくことなく輝き続けた。


(よし! これで「ルーメン」の基本的な習得は完了だ! 持続時間はまだ短いけれど、安定性はかなり向上した。まさに生活魔法だな。次は……応用だ。)


 彼は前世で学んだ光学の知識を総動員する。光の波長、屈折、反射、そして投影。


「ルーメン……投影プロイエクト!」


 ノヴァが意識を集中させると、指先の光球がわずかに形を変え、壁に彼の小さな手の影が映し出された。さらにイメージを凝らすと、影は彼の描いた簡単な図形へと変化した。


小さな動物のシルエット、鳥が羽ばたく姿。まるで光のパペットショーだ。


「よし、光を操れるということは、幻影や隠蔽にも使えるはず……! これは生活魔法の範囲を超えた、術式魔法への応用も考えられるな!」


 彼の頭の中では、光魔法の無限の可能性が広がっていた。しかし、そんな彼の密かな練習は、ついに目撃される。


 ある夜、喉が渇いて起きてきた母親が、部屋の明かりが漏れていることに気づき、そっと覗き込んだ。そこには、小さな手が光の球を操り、壁に奇妙な影を映し出すノヴァの姿があった。


「何してるのノヴァ坊。夜中に!早く寝なさい!早く寝ないと大きくなれないわよっ!!」


 どうやら今日はここまでの様だ。


 光魔法の習熟に自信を持ったノヴァは、次に一般的に習得しやすいとされる火属性の魔法に本格的に取り組んだ。


宿の厨房で、料理長のガンドルフが使う火魔法の炎の揺らめき、熱の伝わり方、そして食材が焦げていく過程を、彼は毎日飽きずに観察し続けた。


 ある日の夕食時、ガンドルフが大鍋に火を当てながら、新しい呪文を口にした。


「よし、この鍋を後は少し煮てっと……ルクシオ!」


 ガンドルフの指先から、5cmほどの持続炎が生まれ、薪を燃やし、鍋の下で火力が安定する。ノヴァは、この「ルクシオ」という呪文と、持続的な熱のイメージを脳裏に焼き付けた。


(「イグニス」は火球、「ルクシオ」は持続炎か。イメージはより繊細で、熱の「流れ」を意識する必要があるな……どちらも生活魔法の範疇だろうが、火力によっては術式魔法にも転用できるだろう。)


 翌日、ノヴァはまたも厨房に忍び込んだ。ガンドルフが薪を運び出すため外に出た隙を狙い、炉の近くに手をかざす。


前回の「イグニス」の米粒火球の失敗を教訓に、今回はより集中し、燃焼のプロセスをより鮮明にイメージする。


「ルクシオ!」


 ノヴァの指先から、直径3cmほどの小さな炎が生まれた! それは弱々しく揺らめきながらも、確かに燃え続けている。


(やった! 持続した! 前回よりも大きい! これなら、指先コンロとして使えるぞ!これで俺は2属性は使えるてことがわかったよ。)


 喜びも束の間、ノヴァは顔を青ざめさせた。この小さな炎を、どうやって消せばいいのか、彼には分からなかったのだ。


必死に魔力を収束させようとするが、炎はまるで彼の意思を嘲笑うかのように、揺らめき続ける。


  (どうしよう、どうしよう! 消えない! 火が出たのはいいけど、どうやって戻すんだ!? しまった、出すことばかり考えてた……!)


「あちゅい! あちゅい!」


 焦ったノヴァは、近くにあった布巾を掴んで炎を叩き消そうとした。布巾に火が移りかけたその瞬間、まるで雷鳴のような怒声が厨房に響き渡った。


「ノヴァ坊! 何をやってるんだ!!」


 薪を運び終えて戻ってきたガンドルフだった。彼の顔は蒼白で、一瞬でノヴァの指先の炎と、焦げ付いた布巾に気づいたのだ。


 ガンドルフは間髪入れずにノヴァの指先を水桶に突っ込み、同時に焦げた布巾に水をかけた。幸い、大事には至らなかったが、ノヴァは生まれて初めて、父親よりも恐ろしいガンドルフの怒鳴り声を聞いた。


「ノヴァ! 魔法は遊びじゃねぇ! 特に火は、一歩間違えりゃ大火事だぞ! 消し方を知らねぇで火を出すなんて、馬鹿かお前は!!」


 ノヴァは、ガンドルフのあまりの剣幕に、びくっと身体を震わせ、今にも泣き出しそうな顔になった。その様子を見た母親が、慌てて駆けつけ、ノヴァを抱きしめた。


「もう、ガンドルフさん、そこまで言わなくても……ノヴァも、まさか火が出るとは思ってなかったのよ……」


 ガンドルフは深くため息をついた。


「チッ、すまねぇ、奥さん。だが、魔法の恐ろしさを教えとかねぇと、取り返しがつかなくなる。ノヴァ坊、お前さんは賢い。だからこそ、慎重になれ」


 ノヴァは、ガンドルフの言葉を胸に刻んだ。


(そうだ、魔法は諸刃の剣だ。制御できてこその力……。前世の知識に溺れて、危険なことをしてしまった。反省だ。しかし、これで火魔法も習得の兆しが見えた。消し方か……水属性で消すのが手っ取り早いだろうが、俺はまだ水属性を使えない。いや、待てよ。炎を消すイメージは、熱の収束、酸素の遮断、水分子の投入……よし、次からは消すイメージも並行して練習だ!)


 ノヴァは、ガンドルフに怒られたことをしょんぼりしながらも、内心では新たな課題を見つけたことに喜びを覚えた。


 ノヴァの好奇心は、もはや宿の中だけでは収まらなくなっていた。彼は窓から見えるステラ村の様子に、強い興味を抱いていた。賑やかな通り、行き交う人々、そして時折聞こえてくる鍛冶屋の槌音。


 ある晴れた午後、両親が揃って昼寝をしている隙に、ノヴァは宿の扉をガチャリと開け、初めて一人で村の通りへと踏み出した。


「わあ……!」


 彼の小さな目が、見たこともない光景に輝いた。焼きたてのパンの香りが漂うパン屋、色とりどりの布が並ぶ仕立屋、そして、道行く人々が交わす活気ある声。


 ノヴァは、まさに世界が広がったことを全身で感じていた。しかし、彼の小さな冒険は長く続かなかった。


「ノヴァ坊! やっと見つけた!」


 フィーユとエルダが、血相を変えてノヴァを探しに来たのだ。フィーユはあっという間にノヴァに追いつき、彼を抱き上げた。


「もう、心配したんだから! 急にいなくなったらだめじゃない!」


 エルダは心底安心したように、ノヴァを抱きしめた。「本当に……! あなたがいないから心臓が止まるかと思ったわ!」


 母親も慌てて駆けつけ、ノヴァをきつく抱きしめた。「ノヴァ! 二度とこんなことはしないで!約束よ!」


 ノヴァは両親とエルダ、フィーユの温かい腕の中で、叱られながらも、この世界の広さと自分の未熟さを改めて実感した。


(この世界には、まだまだ知らないことがたくさんある。そして、俺はまだ、自分の足で自由に歩き、この世界の全てを探索できるほどの力と知識がない。必ずこの世界の全てを知り尽くしてやる。そして、その知識と力を、誰かのために使えるように……。)


 夜、両親が眠りについた後、ノヴァは月明かりの下、静かに決意を新たにした。彼の指先から、青白いルーメンの光が弱々しく輝き、彼の未来を静かに照らしていた。

ご覧いただきありがとうございました!

ノヴァの成長がいよいよ目覚ましくなってきました。ですが、知識と力は時に危険を孕みます。

火魔法との出会い、そして魔法の恐ろしさを知ったノヴァの姿は、今後の展開に大きな意味を持つはずです。本日はここまでとなります。次回は、さらに外の世界へと視線を広げるノヴァの「初めての出会い」にもご注目ください!

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