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第107話 復興の光、迫る影――大戦の予兆

いつもお読みいただきありがとうございます。今回は王都復興という希望に満ちた場面から始まりつつ、その裏で迫り来る新たな脅威が描かれます。ノヴァと師アルスの再会、そして王国を揺るがす重大な予兆――物語は次なる大戦へ向け、大きく舵を切ります。ぜひ最後までお楽しみください。

 休養を終えた星辰魔導騎士団は、王都の再建という新たな使命に取り組んでいた。内乱と帝国軍の侵攻で傷ついた王都アストルムは、至る所に破壊の爪痕を残している。崩れた建物、焼け焦げた石畳、そして人々の疲弊した表情が、戦いの激しさを物語っていた。

 

「ノヴァ、ここから始めるのか?」

 

 ユーリが瓦礫の山を見渡しながら尋ねる。ノヴァは深く息を吸い込み、頷いた。

 

「ああ。まずは大通りから復旧する。人々が希望を持てるように」

 

 ノヴァは杖を構え、目を閉じた。精霊たちの声が聞こえる。彼らもまた、この街の復興を願っている。そして、ノヴァは師アルスから学んだ秘術を思い出す。

 

「Restauratio Magnaレスタウラティオ・マグナ!」

 

 ノヴァの魔力が溢れ出し、崩れた建物が光に包まれた。次の瞬間、瓦礫が宙に浮かび、まるで時が逆行するかのように、元の形へと戻っていく。石壁が組み上がり、屋根が修復され、窓ガラスが元通りになる。わずか数分で、完全に破壊されていた建物が、まるで新築のように蘇った。

 

「うわぁ……すげえ!まるで魔法だ!」

 

 ユーリが目を輝かせる。セレスティアが呆れたように言った。

 

「魔法なんだから当然でしょう。でも、ノヴァ、あなたこんな高等魔法までマスターしていたの?」

 

「昔、師匠アルスから教わったんだ。ただ、大規模に使うのは初めてで……」

 

 ノヴァが額の汗を拭いながら答えると、背後から懐かしい声が聞こえた。

 

「相変わらず、無茶をしておるな、ノヴァよ」

 

 振り返ると、飄々とした笑みを浮かべ、魔法の師であるアルスが立っていた。

 

「師匠!?」

 

 ノヴァは驚きと喜びで声を上げた。アルスは静かに近づき、ノヴァの肩に手を置いた。

 

「久しぶりだな、ノヴァ。お前が王国を救ったと聞いてな、王都に来てみたのじゃが、面白いことをやっておるな。わしも手を貸そうかの」

 

「師匠!今までどちらに!?姉上の……セレナ学院長は、師匠のことをずっと……」

 

 ノヴァの言葉に、アルスは少し寂しげに微笑んだ。

 

「姉上か……。わしはな、ずっと旅をしておった。過去の過ちを償うためにな。だが、お前が王国を救ったと聞いて、もう逃げるのはやめようと思ったのだ」

 

「師匠……」

 

「お前は、わしの教えた魔法を、わしが想像した以上に昇華させた。天理の術まで習得し、剣と魔法を融合させた。お前はわしが目指した境地に、既に到達しておる」

 

 アルスの瞳には、誇らしげな光が宿っていた。ノヴァは師の言葉に胸が熱くなった。

 

「いえ、師匠。俺はまだまだです。師匠がいなければ、今の俺はいません。本当に……本当にありがとうございます」

 

 ノヴァの目には涙が滲んでいた。アルスは優しく彼の頭を撫でた。

 

「泣くでない。お前は立派な魔導師になった。いや、それ以上だ。さあ、昔のように、共に魔法を使おうではないか」

 

「はい!」

 

 アルスは柔らかく微笑み、杖を掲げた。

 

「さあ、仕事だ。お前一人では王都全体の復興は無理だろう」

 

 二人の魔力が共鳴し、光の波が王都全体に広がっていく。アルスの魔力は深く、穏やかで、まるで静かな湖のようだ。対してノヴァの魔力は力強く、精霊たちの声が響き渡る。二つの魔力が絡み合い、まるで交響曲のように調和した。

 

「ほう……ノヴァよ、お前の魔力は精霊たちと完全に調和しておるな。天理の術を極めた証だ」

 

「師匠の教えがあったからです。師匠が教えてくれた『魔法の本質は心にある』という言葉を、俺はずっと胸に刻んでいました」

 

「ふふ、そうか。ならば、わしの教えは無駄ではなかったようだな」

 

 次々と建物が修復されていく。その光景を見た王都の人々は、歓声を上げた。希望の光が、再び王都に灯り始めた。その様子を、遠くから剣聖ギュンターが見守っていた。彼もまた、アルスの到着を知り歩み寄った。

 

「アルス殿、久しいな」

 

「ギュンター卿。お久しぶりです」

 

 二人は握手を交わした。剣と魔法、全く正反対の道を歩む二人だが、ノヴァという共通の弟子を通じて、互いに深い敬意を抱いていた。

 

「ノヴァのおかげで、わしも魔法というものの奥深さを知ったよ」

 

「そして私は、剣の道の厳しさと美しさを知りました。ノヴァは、私たち両方の教えを見事に融合させましたね」

 

「ああ、あの子は本当に大きくなった」

 

 二人は微笑み合い、ノヴァの成長を静かに見守った。復興作業は順調に進み、王都に活気が戻り始めていた。復興作業が一段落した夕刻、ノヴァは王宮に呼び出された。玉座の間には、国王ラファエル、宰相エルドリッジ公爵、ヴァイスブルク侯爵、アルマ侯爵、そしてグロリアス辺境伯が居並んでいた。

 

「ノヴァ、王都の復興、ご苦労だった。民の希望となる素晴らしい働きだ」

 

 国王の言葉に、ノヴァは深く頭を下げた。

 

「陛下、実は報告すべき重要な懸念があります」

 

 ノヴァの真剣な表情に、国王は身を乗り出した。

 

「何だ、言ってみよ」

 

「ギデオン救出の際、ノルレア自由都市群の地下施設で得た情報です。カルザン帝国は、ノルレアを完全に制圧し、次なる標的として我が国を狙っています。そして……」

 

 ノヴァは一呼吸置いた。

 

「このままでは、大陸すべての国を巻き込む世界大戦というべき大きな戦争が勃発する可能性があります」

 

 その言葉に、会議室は静まり返った。エルドリッジ公爵が扇子を開きながら言った。

 

「世界大戦とは、また大げさな。確かに帝国は脅威だが、そこまでの規模になるとは思えんが」

 

「私もそう思います。帝国が王国に侵攻したとしても、他国が巻き込まれる理由がありません」

 

 ヴァイスブルク侯爵も懐疑的だった。しかし、ノヴァは前世の記憶を思い起こしながら、言葉を続けた。

 

「陛下、重鎮の皆様。今回、帝国はわざわざ全世界の国に向け我が国が混乱をもたらす脅威であることを通告いたしました。」

 

 ノヴァは地図を広げ、説明を始めた。

 

「まず、カルザン帝国がノルレアを制圧したことで、海洋貿易の要衝を手に入れました。これにより、帝国は莫大な富と軍事力を得ます。次に、帝国は我が国への侵攻を正当化するため、クライン公爵の反乱を利用しました。これは、他国への侵略の口実を作る常套手段です」

 

「ふむ……」

 

 国王が真剣な表情で頷く。ノヴァは続けた。

 

「そして最も重要なのは、同盟関係です。我が国はヴァルグリア騎馬連邦と軍事同盟を結んでいます。もし帝国が我が国に全面侵攻すれば、ヴァルグリアは参戦せざるを得ません。一方、帝国はノルレアを傘下に収めたことで、海賊や傭兵団という強力な戦力を得ました。さらに、ザガリア砂海合議国は帝国寄りです」

 

「つまり、帝国側と王国側、それぞれの同盟国が戦争に巻き込まれると?」

 

 アルマ侯爵が問う。ノヴァは深く頷いた。

 

「はい。すでにほかの国にも裏でつながっていることが予想されます。そして、聖王国は静観の構えですが、戦況次第では介入する可能性があります。彼らは星辰信仰の総本山として、影響力を維持したいはずです。もし戦争が長期化すれば、大陸全体が戦火に包まれます」

 

 ノヴァの説明を聞いた国王は、深刻な表情で宰相を見た。

 

「エルドリッジ、お前はどう思う」

 

「……ノヴァ殿の分析は、残念ながら的を射ています。私の諜報網からも、帝国が各国に密使を送っているとの情報があります。彼らは、この戦争を大陸全体の覇権争いにしようとしている」

 

 会議室に重い沈黙が降りた。国王は拳を握りしめ、決意を固めた。

 

「ならば、我々は備えねばならない。ノヴァ、お前は嫌がるだろうがここに命じる」

 

「はい」

 

「より強力で広範な効果を持つ付与魔法の開発と、天理の術の体系化を急げ。この二つが、我が国の切り札となる」

 

「っ!!……承知、しました」

 

 その時、エルドリッジ公爵が提案した。

 

「陛下、一つ提案がございます。クライン公爵家の遺児、グレンをノヴァ殿の従者として協力させてはいかがでしょうか」

 

「グレンを?」

 

 ノヴァが驚く。エルドリッジは冷静に続けた。

 

「グレンは父の罪を償うため、命を賭して帝国の補給線を断ちました。彼の戦術眼と忠誠心は本物です。しかし、クライン家の血筋である以上、監視も必要。ノヴァ殿の下で働かせることで、彼の力を活かしつつ、監視もできます」

 

「なるほど……私の甥でもあるグレンか。ノヴァ、お前はどう思う?」

 

 国王が尋ねる。ノヴァは少し考え、答えた。

 

「グレンは、父の罪を償うため、必死に戦いました。その姿を見た私は、彼を信じたいと思います。従者として迎え入れることに、異論はありません」

 

「決まりだ。グレンをノヴァの従者とする。そして、星辰魔導騎士団の力を、さらに強化せよ」

 

「はい、陛下」

 

 会議は終わり、ノヴァは新たな使命を胸に、王宮を後にした。夜空には星々が輝き、まるでノヴァを見守るかのようだった。翌日、ノヴァは星辰魔導騎士団の研究室に仲間たちを集めた。そこには、師匠のアルスと剣聖ギュンターも同席していた。

 

「みんな、聞いてくれ。国王陛下から新たな使命を授かった」

 

 ノヴァが真剣な表情で切り出すと、全員が姿勢を正した。

 

「より強力な付与魔法の開発と、天理の術の体系化だ。これは、来るべき大陸規模の戦争に備えるためのものだ」

 

「世界大戦か……まじかよ」

 

 ユーリが呟く。セレスティアが腕を組んだ。

 

「つまり、私たちの力をさらに高めろ、ということですわね」

 

「その通りだ。そして、もう一つ報告がある」

 

 ノヴァが扉の方を見ると、そこにグレンが立っていた。彼は深々と頭を下げた。

 

「星辰魔導騎士団の皆様、初めまして。グレン・フォン・クラインです。この度、ノヴァ様の従者として、皆様に協力させていただくことになりました」

 

「グレン……お前、本当に来たのか」

 

 ユーリが驚く。グレンは真摯な表情で答えた。

 

「はい。父の罪を償うため、そして王国を守るため、私はノヴァ様に仕えます。どうか、よろしくお願いします」

 

 レオンハルトが一歩前に出た。

 

「グレン、君の覚悟は本物か?君の父はこの国を裏切った」

 

「わかっています。だからこそ、私は命を賭して贖罪します。どうか試してください」

 

 その言葉に、レオンハルトは満足そうに頷いた。

 

「わかった。ならば共に戦おう」

 

 セシリアが優しく微笑んだ。

 

「グレンさん、私たちは仲間です。過去は問いません。これから共に頑張りましょう」

 

「ありがとうございます……」

 

 グレンの目に涙が滲んだ。その時、アルスが口を開いた。

 

「ノヴァ、天理の術の体系化は、容易ではない。精霊たちの力は感情と深く結びついている。それを理論として確立するのは至難の業だ」

 

「わかっています、師匠。でも、やらなければなりません」

 

 ギュンター卿が静かに言った。

 

「ノヴァよ。お前は剣と魔法、そして天理の術を融合させた。その経験こそが体系化の鍵となるはずだ」

 

「はい、師匠」

 

 ノヴァは仲間たちを見渡した。

 

「みんな、これから厳しい戦いが待っている。だが、俺たちには仲間がいる。師匠たちがいる。そして、守るべき民がいる。俺たちは必ずこの国を、そしてこの大陸を守り抜く」

 

「おう!ノヴァについていくぜ!」

 

 ユーリが力強く答える。セレスティアが不敵に笑った。

 

「当然ですわ。私の完璧な魔術で敵など一掃してみせます」

 

「僕もみんなを癒すために全力を尽くすよ」

 

 カイルが優しく言う。セシリアとレオンハルトも頷いた。

 

「私たちは星辰魔導騎士団です。どんな困難も共に乗り越えます」

 

「ああ、共に戦おう」

 

 グレンもまた、決意を新たにした。

 

「ノヴァ様、この命、捧げます」

 

 ノヴァは全員の顔を見て、深く頷いた。

 

「ありがとう、みんな。それじゃあ、今日から新たな修行を始めよう。まずは付与魔法の強化からだ」

 

「了解!」

 

 全員が声を揃えた。その夜、ノヴァは一人、王都の城壁に立ち星空を見上げていた。

 

「父さん、俺はこの国を守る。そして、この世界を戦火から救う。それが俺の使命だ」

 

 風が吹き、ノヴァのマントをなびかせた。遠くで新たな戦いの足音が聞こえる。だがノヴァの瞳には、揺るぎない決意の光が宿っていた。星辰魔導騎士団の新たな戦いが今、始まろうとしていた。

読了ありがとうございました。王都に光が戻る一方で、物語はついに「大陸規模の戦争」という新たな段階へ踏み出しました。グレンの加入、天理の術の体系化という課題も加わり、星辰魔導騎士団はさらなる成長を求められます。次回から本格的に新章が始まりますので、引き続きお付き合いいただければ幸いです。

ここでお知らせです。個人的な話なのですが帯状疱疹にかかりしばらく療養を行いながらの執筆となりますので更新が不定期となります。なるべく早く執筆活動が再開できるよう頑張りますのでご理解のほどよろしくお願いいたします。

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