第6羽♡夢の箱庭、”きせかえマグネット”♡
「リリィちゃん。今16時半だけど、まだ時間は大丈夫かしら?」
そう声をかけてくれるサファイア先輩。
美人なだけでなく細やかな気遣いもしてくれる先輩に、出会って間もないのに私はもう、憧れの気持ちを抱き始めていた。
「はい、大丈夫です!」
即答する私に、先輩は良かった、と言い、ふわっと微笑んだ。
そして持ってきてくれたのは、小さな箱がいくつも詰まったピンクのキャリーバッグ。
よく見ると、どの箱にもカラフルな文字とイラストが描かれていた。
「これって…。」
「そう。」
これが部活紹介でも出てきた、そしてこの同好会のメイン活動に使うであろうあの玩具。
“きせかえマグネット”!
マグネットで出来た着せ替え人形で、今もなおおもちゃ屋さんや本屋の子どもコーナーの一角に置かれている女児ホビーアイテム。
紙のきせかえ人形が進化したそれは、お洋服やアクセサリーアイテム一つ一つが、薄いマグネットシートになっている。
それを同じくマグネットシートでできた、インナー姿の女の子キャラの上に”ぺたっ”と貼り、きせかえ遊びを楽しむというもの。
先輩達が手際良く箱をテーブルに並べていく。それは興味のない人から見たらどれも同じような物に見えるけど、全部違う種類のもので…。
なんと全部で10種類近くあった。
「リリィちゃんもこういうの、昔持ってた?」
サファイア先輩が聞いてくる。
「…いえ、欲しかったんですけど、買ってもらえなくて…。」
普通に言ったつもりだったが、少し寂しい感じになってしまっていたのか、それを聞いたティアラ先輩の眉が下がる。
いや、買ってもらえなかったというか、『どうせダメって言われる』って思い込んで、頼みもしなかったのかも。
ただ一回だけ、それを持っていた他の女の子と一緒に遊ばせてもらった気もしないでもない。
女の子とはその一回しか遊んだきり会ってないから、名前すらも知らない子だったけど___。
「そっか〜。」
ティアラ先輩が小さく言う。
なんか私、自分可哀想アピールみたいになっちゃったかな?
「じゃあ尚更、今楽しも〜〜〜〜〜〜っ!!!」
ティアラ先輩の言葉とともに、目の前にずらっと並べられたマグネットの箱たちが次々に開けられていく。
パチン、とフタを開けると、そこは一つ一つが夢の世界で___。
「わぁ……!」
思わず声が漏れる。
特に私の目に留まったのは、新しそうなデザインのきせかえマグネット。
今時の女の子たちの好みに合わせて作られたそれらは、淡いパステルカラーが基調。
繊細なタッチで描かれたキャラクターのペーパードールや、ドレスや靴、バッグ、小物たちが、箱におさまっていた。
チュールやフリルの重なりも、ミニチュアなのにしっかり描き込まれていて、宝石を散りばめたドレスは見ているだけで甘い気持ちになる。
「今時のってこんなかんじなんだ…可愛すぎる…!」
私は夢中になって細かいアイテム一つ一つを手に取って眺めた。
「このキャラの髪色的に言えば、紫系の服が似合うことは言わずもがなだけど…、それでも私は敢えて別の色を着せたいわ。」
「本当はこのトップスとスカートがセットのデザインなんだけどね、別のアイテムと合わせてみるのも可愛い〜!」
ティアラ先輩もサファイア先輩も、夢中でそれぞれの「可愛い!」を組み合わせていく。
そして私も夢中できせかえを楽しんだ。
*・゜゜・*:.。..。.:*.. .。.:*・゜゜・*
「やっぱりこういう時間、最高だわ。」
サファイア先輩が紅茶を一口飲みながら、ゆったりとつぶやいた。
「本当に、一つ一つのアイテムが可愛いですよね。」
私もそう言いながら、細かく描かれたリボン付きヒールのマグネットを見つめた。
「でも、コーディネートを考えていると、意外とシンプルな靴とかバッグとか、そういうのもあったらいいなって思ったり…。」
「そう!そうなんだよっ!」
私の言葉に、ティアラ先輩が立ち上がらんばかりに頷きながら返した。
「分かるわ。リアルクローズのような、色味の少ない無地のアイテムが、他の物と合わせやすかったりするのよね。」
「なんだけど各アイテムがあまりにも全部可愛すぎて、それが無いっ!」
ティアラ先輩の悶絶っぽりに、サファイア先輩と同時に笑ってしまった。
そして私はふと思った。
だったら、そういうシンプルなアイテム、自分で作れたら…?
「そういうの、自分で作れたりってしますかね…?」
何気なく口にしたその一言に、先輩たちの手がぴたりと止まった。
「…リリィちゃん。」
「あなた、今、ものすごいこと言ったわよ!」
サファイア先輩とティアラ先輩が、まるでお宝を見つけたかのような顔をして、私を見つめていた。
“きせかえマグネット同好会”の、本当の活動が、今、動き出したのかもしれない。
♡つづく♡