第2羽♡ダイヤのティアラ♡
♡次の日♡
「えー今から各部活・同好会紹介を行います。」
巨大な体育館での新入生オリエンテーションに続いて、部活紹介が行われることとなった。
「我がジュエル女学園は、一人一人の個性が輝く学校です。ぜひ皆さん、自分に合ったものを見つけてみてください。」
「個性…か…。」
私、早乙女リリィは心の中でつぶやいた。
*・゜゜・*:.。..・*:.。. .。.:*・゜゜・*
「南米音楽研究会の皆さん、ありがとうございました。続いて…___。」
そして次の瞬間、ステージを見たみんながざわついた。
「うわ、なんだあれ。」
「なんかすご…。」
そして私は注目を浴びたその人を見て、一瞬で分かった。
「こんにちは、きせかえマグネット同好会ですっ!」
昨日会った人だ…!
声が響いた瞬間、まるでステージの照明が彼女にスポットを当てたように見えて、思わず息を飲んだ。
「なんだなんだ…。」
「私あの人知ってる。二年生なんだよね、去年もすごかったらしいよ。」
「なんか…ゲームキャラみたいな髪してる!」
彩度マックスの派手派手どピンク髪のツインテール。高さ10cmはあるであろう超厚底の靴に、白いニーハイソックス。そして頭のてっぺんにはなんと、ティアラ。
目立たないわけがない。
まるでキラキラした魔法の世界から飛び出してきたお姫様のようだ。
「私は会長の、大谷ティアラですっ!」
みんな(ダイヤ・ティアラ!!!???)
ますます体育館はざわついた。
「…てぃあら、ちゃん?」
そして無意識に、小さな呟きが私の口から漏れ出た。
珍しすぎる名前なのに、なんだろうこの懐かしさは。
それは昨日『きせかえマグネット』という単語を目にしたあの時と似た感覚。
「みなさん、“きせかえマグネット”って知ってますか?」
その大谷ティアラ先輩はそう言うと、手に持っていた小さな箱のような物を開け、中身を取り出した。
そして教壇にあったカメラで、ステージ上のスクリーンにそれを大きく映した。
「これは、マグネットでできた着せ替え人形!
この子に、いろんなファッションを着せて、世界でひとつのコーデをつくるんですっ。」
その紙のようにペラペラとしたマグネットの小さな人形に、同じくマグネットでできたドレスを重ねるてみせる。ピタッと、気持ちの良い音を立てて張り付いた。
そしてシューズ、アクセと手際よく別のアイテムも取り付けていくティアラ。(よくあの長いネイルで細かい作業ができるなぁ…。)
ここは女子校。全生徒が女子なだけあって、
「あ〜!小さい時、あのおもちゃ持ってた!」
「本屋さんの子ども向けコーナーとかに売ってたよね、懐かし!」
という声も上がった。
「アイテムの組み合わせは無限大。全部、好きなように!
誰かのマネじゃない、あなたの“可愛い”をここで形にしよう!」
そして私は、昨日の放課後のことを思い出した。
*・゜゜・*:.。..・*:.。. .。.:*・゜゜・*
「興味あるの?」
そう。今、みんなの前に立っているティアラ先輩に声をかけられたあの時のことを。
「えっ、あっ!?
わ、私別に…ただの通りすがりで…。」
「へへ、そっか〜。」
先輩はそう言うと、厚底の靴でコツコツと、まっすぐ私の方へと歩いてきた。
私が猫背ということもあるけど、厚底を履いたその人はちょっとびっくりするくらい背が高くて、私は彼女を見上げる形になる。
そして先輩はちょっぴり屈んで、私のスクバに付いたチャームを優しくつついた。
「『きせかえ魔女ララandルル』だ!
私も大好きだよ!」
「へっ?」
そのチャームは、昔私が子どもの頃に大好きだった、女の子向けきせかえゲームのアイテムを模したグッツだ。
ララandララを覚えてる人はもういないと思っていたからびっくりしてしまった。
「それの携帯ゲーム版あったじゃん?
部室にあるんだ。今度一緒にやろっ!」
そう言って先輩は手を振ると、すっと背を向けて歩き出し、チラシの貼られていた教室へと入っていった___。
*・゜゜・*:.。..・*:.。. .。.:*・゜゜・*
そんなことがあった昨日を思い返していると、
不意にステージのティアラ先輩と視線が合った。
こちらを見て、ふっとウィンクをした__ように、見えた。
「きせかえマグネット同好会では、新しい仲間を大募集中です!
かわいいものが好きな子も、ファッションが好きな子も、ちょっと人と違うのが好きな子も、みーんな大歓迎!」
ステージの上で手を振るティアラの姿は、春の光をいっぱいに受けて、まるで虹のようだった。
♡つづく♡