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いざ森へ食料調達


ーーチュン…チュン…


森の朝は、妙に静かだった。高く伸びた木々の間を、鳥のさえずりがすり抜ける。

わずかに漂う湿った空気が、肌にまとわりつく。


「……朝か……」


リクは寝癖のついた頭を掻きながら、目をこすった。テーブルの上に置きっぱなしの錆びたナタを腰に携え、物干し竿とフライパンを手に取り、深く息を吐く。


「昨日は草刈り……今日はメシだな。狙いは、魚……!」


ーーギィ…ギシィ…


重たい扉を開けて、森へ向かう。前に見つけた川まで、足音を忍ばせて歩く。

まだ目覚めきらない森を、慎重に進んだ。


「なあ、ルル。この前の川、覚えてる?」


【座標記録済み】


「便利だなお前」


【ありがとうございます】


ーーザッ…ザザ…


川辺にたどり着いたリクは、靴を脱ぎ、足首までの水に入る。ひんやりとした感触が、全身に冷気を走らせた。

背筋にぞわりとした感覚が走ったが、それを振り払うように川面を見つめ直す。


「よし……作戦は前回と同じ、“追い込み漁”だ」


【成功率41%】


「うん。成功率見ると。なんだろ…楽しさというかワクワク感というか…」


リクは川の下流に回り込み、前回のように石を積み簡易的な“土手”を作る。魚の逃げ道をふさぎ、窪地へと誘導する準備。

冷たい水に触れるたび、意識が研ぎ澄まされていく気がした。


ーーピチャ…パシャ…


川の中を小さな魚影がチラつく。


「よし、追うぞ」


錆びたナタを片手に、もう片方の手には――


「秘密兵器!フライパン!!」


【命名:“打撃音響魚誘導装置”】


「やめなぁ?!」


ーーカン!…カンカン!…カンッ!


錆びたナタとフライパンを打ち合わせ、リクはバシャバシャと水を蹴りながら魚を追い込んでいく。


「逃げんなよぉ〜!?そっちじゃねえぞぉ〜!!」


【左から回り込むと効果的です】


「なら先に言えぇええ!」


ーーガン!…カンカンッ!…バシャバシャッ!


音に驚いて慌てふためいた魚たちが。窪地でぴちぴち跳ねる姿が見えた。


「ニシシッ!!」


ーーザパッ!


リクは手で魚をすくい上げ――


ーーピチッ!


「うわっ!……くそっ!にげんなっ!」


【冷静に掴み方は後方から包み込むように】


「講釈は今じゃなくていいだろルル!!」


ーーバシャッ!…バシャバシャッ!


……数十分後。


「……ふぅ大漁大漁……!」


ーーチャプ…チャプ…


川辺にしゃがみこんだリクは、冷えた指先をこすり合わせながらヌメりを取るために手を洗っていた。

ふと、錆びたナタの刃を見る。

どす黒い茶色や赤茶色。薄茶色の斑点があちこちにこびり付きサビでできたコブすらある。


「……なあ、ルル。川の石で、コイツ……綺麗にできる?」


【可能です適度な硬さと平滑な面を持つ石で擦ると錆を削り取れます】


「マジか。じゃあこの……つるつるしてそうなやつ……っと」


リクは手のひらサイズの石を拾い、ナタの刃をゆっくり擦り始めた。


ーーゴリ…ゴリ…


【擦る角度と研ぎすぎると刃こぼれの恐れがあります】


「研ぎ師か!!」


【はい刃物全般の今の知識を保持しています】


「ルルが本格的になればなるほど俺の生活力の低さが浮き彫りに……」


ーーゴリ…ゴリッ…


しばらくすると、ナタの表面が少しずつ金属の地肌を取り戻し始める。

陽の光が刃にわずかに反射し、小さな光の粒を跳ね返す。


「おお……!ピカってきた……!」


【その調子です使用後は水気を拭き取り植物油などを薄く塗布すると更に良好です】


「油とかないだろ……いや、もしかして魚の脂で……?」


【臭いが残るため非推奨です】


「臭いのはやだ」


ーーパシャ…


リクは、ナタを一振りして腰に携えた。

刃の冷たさが、ほんの少しだけ心強く思えた。


「さて、メシってのは主菜だけじゃだめだろ。なぁ、ルル。野菜とか副菜的なもん?わかる?」


【この付近には食用の山菜キノコ類が分布しています】


「まじか!野菜のある異世界生活、始まったな俺!」


ーーザクッ…ボキッ…


「これは?……なんかアスパラっぽいけど」


【“森芹”。加熱で苦味が減少。炒め物推奨】


「うぉおおお♪……ルル、君は森の博士か……!」


【ありがとうございます】


「じゃあこれは?」


ーーガブ…ムシャムシャ…


【“偽ヨダレ茸”。毒。死亡例あり】


「吐き出す吐き出す吐き出すうぅぅう!!!」


ーーペッ!ペッ!…


「これ!これはどう!?」


【“カイモドキ”。焼いてよし、煮てよし、干してもよし】


「パーフェクトゥ!!」


ーーザッ…ザザッ…


ズボンのポケットの中は魚・山菜・キノコでいっぱいになっていた。リクは鼻歌まじりに森道を歩く。


「これで今夜は豪華飯確定だな……!」


ーーパキッ…グォォ……


「……ん?」


背後から、獣のような、低く湿った息遣いが聞こえた。

リクの肩が、ぴくりと跳ねる。

物干し竿を握る指先に、じわりと汗が滲んだ。


ーーバキッ…バキバキ…グルルル……


茂みの向こう、木々の隙間で、黒ずんだ影がゆらりと揺れた。

冷たい風が、森をなでる。ナタに手を伸ばす。

鳥も、虫も、ひとつも鳴かなかった。


ーーーピコンッ!!


┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈


《対象:瘴気存在》

《分類:低級“ゴルル”》

《行動:接近・捕食》

《対処:撃退または逃走》


┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈


リクはそっと息を飲み、ナタの柄をしっかりと握り。物干し竿を手放す。

わずかに震える手を、ズボンでぬぐう。

さっきより心臓の鼓動だけが、やけに大きく響いていた。


【撃退を推奨します】


┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈

《ステータス》

名前:浅葱リク

種族:異世界人

瘴気:23→23(±0)

魔素:06→06(±0)

魔力:05→05(±0)


《スキル》

理の(ことわり)


《装備》

物干し竿

錆びたナタ

フライパン

┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈

読んでいただきありがとうございました!

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