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嘲笑う風と小さな決意


天気の回復を待ちながら奥に見える暗い部屋を眺める。特に意味は無いけど。なにかを考えたくてもなんだか頭が働かない。

どんよりとした雨の日は異世界でも気持ちが沈むらしい。


何も考えずぼけ~っとしていると次第に天気は回復してきて、灰色雲の切れ間からは柔らかな陽が射しだし、埃がキラキラと宙に舞っている。

風だけはまだ少し強い。


ーービュー……


「さぶっ…」


濡れた身体や服をどうにかしないとなぁ、と思いながら朽ちた石造りの建物を、外から見てみる事にした。


ずどーん、と横に長いワンルーム。それをただ壁で区切っただけの2DK。

半壊して壁や屋根がない部屋、壁や屋根がまだありそうなキッチン、寝室。


「ふむ……」


寝室に行けばさっきよりはマシに休めそうなので、寝室を見に建物に戻る。


濡れた服を脱いで陽の当たる場所に置き、パンイチ姿となり、キッチンへ。


小さなシンクがあって、埃まみれのテーブルと椅子、朽ちた棚と汚れた食器、錆びた調理器具があった。



「シャキン♪勇者リクは錆びた包丁と盾のフライパンを手に入れた!!!ジャジャーン♪」



かっこよくポーズを決める。

凄く凄く凄く──恥ずかしくなった。

心の声が溢れ出る。


(これが羞恥心…www……異世界来たら勇者がデフォじゃん?)


パンイチ姿で勇者とは──無理がある。


錆びた包丁やフライパンは何かしら使えるだろうから持ち出す事にした。


ーーガシャ……ガシャッ


瓦礫を踏み分けながら寝室を覗く。

藁を布で包んだだけのベッドと、壁際の小さな棚、何冊か本が残っていた。


「……これは」


リクがそっと手に取る。

カビ臭く、表紙もほとんど読めなかったが、中身は意外にもしっかりしていた。藁を包んだ布を剥ぎ取り、ローブ代わりにしてベッドに腰掛けてから、ページをめくる。

文字と簡単な図解が記されていた。


ーーカサ……パラ……


──【魔元素とは】


「……魔元素?」


リクは眉をひそめた。見覚えのない単語だったが、読むうちにその意味が少しだけ理解できた。



──【魔元素とは】

・ルミナスコアが生み出している魔素の元


──【魔素とは】

・魔元素をラプターコアが変質させたもの。


・魔力に変換させる事ができる


・魔素が空気中に留まり続けると瘴気に変質する



ページを繰るたびに、新しい情報が脳に流れ込んでくる。ルミナス?ラプター?コア?──とりあえずは魔素はこの世界に漂っていて、放置すれば、瘴気に変質するとリクは理解する


──【瘴気とは】

・瘴気の濃さは色で識別している

白<黄<赤<青<紫の順に濃くなる


・魔素が空気中に留まり続け瘴気に変質したもの。


・瘴気は生物を理性のないモンスターに変えてしまう


・魔素が瘴気に変質しないように魔素を消費する必要がある


「モンスター!?!?……え?俺なるの!?生き抜くどころじゃなくね??いや生きてはいるか?……え。」


思考が止まり、思わず割れた窓の外に目を向けた。

遠く、山の影に白い靄が漂っている。

あれも、瘴気なのだろうか。続きを読み始める。



──【魔力とは】

・魔素を変換させ保有する力。


・魔力が高ければ高いほど使うスキルの量が増え質が良くなる。


・魔素や魔力の保有量が多いほど基本的に強い。強さのパラメーターになる


ーーパラ…パラ…


「魔元素が原料で…魔素が材料で……魔力が加工って感じか?……ややこしい…」


──【スキル】

・魔素のみで使用可能なスキルがある


・魔素や魔力で使用する事でスキルを使う事ができる


・瘴気で発動するパッシブスキルがある



「…ん?だから…ぐあーってなった時…理性が!」


リクは立ち上がり、集中する。両手を上げ叫ぶ。外の風が吹き荒れるのを感じる。


ーーゴゴゴゴオオォォォ-……


「堕天の祝福。輪廻邂逅。巡る血潮の大過。啼き叫び懺悔せよ!!!うおおおおお!!理性!!発動!!!」


ーー……シーン……


苦笑するように小さくつぶやく。


「ふ……世界はまだ俺を知らぬか……」


とりあえず落ち着いて、物事を考えてみる。

確かに理性って無駄というか無意味というか

──国王の勝ち誇った顔が目に浮かび本を投げつけたくなったが、この本はリクにとって、この世界の“地図”とも言えるもの、投げれなかった。



──【魔石】

・魔石には等級がある

白<黄<赤<青<紫


・魔石には魔素が含まれていて抽出できる


──【魔動力】

・浮遊島や生活用品や飛行船などに運用できる。


──【魔動力入手方法】

・魔石から魔素を抽出して魔力で魔動力を作る


・生物の血液から魔素を抽出し魔力で魔動力を作る


・瘴気からは魔動力が作れる理論はある


・抽出効率

魔元素≧血液≧魔石



ーーパラ……パラ


リクの頭から煙が吹いてる。これは瘴気ではない。


「…むずくね?…よくわかりません!!理性発動してんじゃないの??理性って賢くなるんじゃねぇの?理性さーん」


本を置いて、がさがさの藁の上に寝転ぶ


「ハア……飛行船…瘴気は理論だけかよ…」


泣きべそをかきそうになりながらも、リクは再び本を開き、読み続けた。


ーーヒュゥゥ……


風がリクを嘲笑わっているように鳴く。

それでも、朽ちた石造りの建物の中で、リクは本を読み続けた。


ーーカサ……パラ……


紙をめくる音が、小さな決意と共に静かな空間に溶けていく。


┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈

《ステータス》

名前:浅葱リク

種族:異世界人

瘴気:06(±0)

魔素:00(±0)

魔力:00(±0)


《スキル》

理性


《装備》

錆びた包丁

フライパン

┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈

【魔元素・瘴気・魔素・魔力】


・魔元素

純粋なエネルギーの塊。超濃縮。魔素の原材料。


・魔素

魔元素を「薄めて安定化」したもの。大気中などに普通に存在。

 (使いやすくなったけど純度は下がってるイメージ)


・魔力

魔素を体内に取り込み、変換・制御できる力。

 (体内で精製して使う燃料、エンジンのような役割)


・瘴気

大気中に長時間放置された魔素が変質・腐敗したもの。

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