死の島 1日目
ーーゴォオオオ――ッ……!
耳をつんざくような暴風音とともに、リクの体は空を落ちていた。視界は灰色の霧に覆われ、上下の感覚さえ曖昧になる。
「う、わぁあああああああああっ!!」
ーーバシャァンッ!
泥水のような湿地に叩きつけられ、全身に鈍痛が走る。肺に泥水が入り込み、むせ返る。
「ゲホッ……ゴホッ……な、なんだよここ……!」
濃密な瘴気が辺り一面に漂い、空気そのものが粘ついているようだった。
視界の先は白く濁り、どこまでもモヤがかかっている。
ここが ──「死の島」
ーーザアアァァ
重たい雨が降り注ぐ。
地面はぬかるみ、足を踏み出すたびにズブズブと泥が靴を飲み込んだ。
「っ……最悪だ。息するだけで喉が焼ける……!」
体がだるい。
意識が朦朧とし、手足に力が入らない。
目の前に、白衣の男が見ていたステータス画面が現れる。
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《…瘴気を感知…》
《スキル:理性を発動しますか?》
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「……え?」
その瞬間、瘴気の流れが見えるような感覚がした。空気の淀みが、淡い紫の流れとして視界に映る。
「これが…瘴気…か?」
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《スキル:理性を発動しますか?》
《はい/いいえ》
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(…はい…)
……痛みも、苦しさも、少しづつ和らいでいく。
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《瘴気:吸収》
《瘴気+6》《魔素0》《魔力0》
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(これが……スキル“理性”の力……?)
知らぬ間に、肌から吸い上げるようにして、瘴気が身体へと取り込まれていく。
ーーゴウ……ゴウ……!
遠くで何かが唸るような音がした、耳を澄ませる。
ーーガルルルッ……
低いうなり声。
いる、何かが、近くに。
「このまま…ここに居たら…やばい!」
リクはその場を離れ、濃霧の中を手探りで歩き出した。
ーーギシ……ギシ……パキンッ!
朽ちた木の枝が足元で割れ、リクはバランスを崩す。
ーードサッ!
転倒。
泥と落ち葉にまみれた地面の上、顔を上げたその先に─黒ずんだ木の扉があった。
「……建物? 廃墟……?」
朽ちた石造りの建物。
蔦が絡まり、屋根は崩れ、半分以上が倒壊していた。
だが……ここは、雨風を凌げる。
「とりあえず……ここに、隠れよう……!」
扉を押し開け重たい軋み音を立てながら中へ入る。
ーーギィィ……ギイ……
中は薄暗く、床には粉々に砕けたガラスや鉄くずが散らばっている。
だが、静かだった。
雨音が遠のき、冷たい空気に少しだけ安堵する。
リクは崩れた壁にもたれ、深く息を吐いた。
「ふぅ……はぁ……生きてる、俺……まだ、生きてる……!」
震える手を握りしめる。涙が出そうだった。王の見下したあの顔がよぎる
「……絶対に、生き延びてやる……ッ」
その目に、再び火が宿る。
こうしてリクの、死の島での1日目が始まった。
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《ステータス》
名前:浅葱リク
種族:異世界人
瘴気:00→6(+6)
魔素:00→(±0)
魔力:00→(±0)
《スキル》
理性
《装備》
装備無し
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読んでくださりありがとうございました!!