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第1話 温泉リポーターのおっぱいが丸出しなんだけど!

『美人よりも普通の子のほうがヤれる』なんてことを言うやつがいる。

 

 とても失礼な言い方ではあるが、なんとなくわからないでもない。

 

 言うほど可愛くないのにいつも男にチヤホヤされている子や、彼氏が途切れない子、経験人数がとんでもない数になっている子なんていうのは、案外どこにでもいるものだ。


 おそらくだが、そういう子のほうが美人よりも敷居が低くて付き合いやすいのだろうと俺は思う。

 

 こういうの、皆も心当たりがあるのではないだろうか。

 

 もしこんなことが男女逆――すなわち、貞操観念が逆転した世界の話に置き換わったら、読んでいる男子諸君はちょっといいなあなんて思うだろう。


 自分は決してイケメンという人種ではない。それなのになぜか女子にモテる。彼女が途切れない。びっくりするほどいろんな女の子とヤれる。


 そんなの、最高だよな?


 これから話すのは、そんな『貞操逆転世界』に紛れ込んだ一人のフツメン男が『女子から気軽にヤれると噂のビッチ』になる話。


 ※※※


 平川ひらかわ朝陽あさひ、高校二年生の平凡な男子。

 そんな俺が世界の異変に気づいたのは、流行りの風邪で高熱を出し、学校を休んだ日の昼だった。


 腹が減ったので何か食べようと自室のベッドから重い体を起こしてキッチンへ向かう。

 消化のことを考えてカップ麺のうどんをパントリーから取り出すと、俺は電気ケトルでお湯を沸かした。

 湯をカップに注いで麺が戻るまでの間、時間を持て余してしまうので、テレビのスイッチを入れる。

 

 画面が明るくなった瞬間、俺の目に飛び込んで来たのは、衝撃の光景だった。


『――本日は熱海に新しく出来た温泉施設に来ています。見てくださいこの露天風呂、景色が最高ですよねー。早速ですが浸かっていきたいと思います』


 お昼の情報番組らしく、生放送で温泉地のリポートをする女性タレント。

 海を一望できる絶景の露天風呂だというのだが、俺の視線はそんな景色ではなく、女性タレントの胸部に集中していた。


「……なんでこの人、おっぱい丸出しなんだ?」


 画面の向こうの女性タレントは、お風呂に浸かるためタオルを身体に巻いていた。

 普通、女性なら胸から鼠径部にかけての広範囲を隠すように大きめのタオルを巻くはず。しかしこの人はなぜか男性のように腰にしかタオルを巻いておらず、たわわなおっぱいが丸出しになっていた。


 一瞬俺はまだ熱にうなされているのかと思って頬をつねったり叩いたりした。

 しかし、どうやっても夢から覚めることはない。これが現実なのだ。


 放送事故だろうか?

 いや、それなら生放送中のスタジオにいる人たちが慌てててんやわんやするはず。

 じゃあこれは地上波放送ではなく、ちょっとパロディの入ったアダルトなビデオなのではないか?

 きっとそうだ、最近買い替えたアゾマンファイタースティックTVで親父がアダルト動画を見ていたに違いない。

 

 そう思って俺はファイタースティックTVのリモコンのボタンを押して動画の再生を終わらせようとする。

 しかし、いくら操作しても再生は止まらない。

 もちろん、リモコンの電池切れでもない。

 

 つまりどういうことか。

 今流れている映像はアダルト動画でもなんでもなく、まごうことなき地上波放送であるということだ。


 真っ昼間からお茶の間に女性タレントのおっぱいが放映されている事実に、俺は興奮ではなく困惑してしまっていた。


 なんでこんな異常事態なのに誰もなんとも思っていないんだ……? おかしいだろ……?


 ……それにしてもこのリポーターおっぱいでかいな?

 でかいと垂れるって誰かが言ってたけど全然そんなことないし、むしろハリがあって美しい形をしている。パーフェクトボディだ。


 ――いや、そんなことを考えている場合ではない。


 今目の前で起こっていることが信じられない俺は、確証を得るために今度はテレビのリモコンを手に取ってチャンネルを回す。


 お昼の時間帯はどこもワイドショーばかり。

 そんな中でもとある局だけはドラマの再放送をやっていた。主婦層をターゲットにしたちょっと刺激的でドロドロとした、いわゆる『昼ドラ』だ。 


『そんな破廉恥な格好をして……誘っていたんでしょう私のこと!』

『ち、違う、これはその……事情があって……あっ……やめっ……服、脱がさないでくれっ……!』


 今から濡れ場に突入するというシーン。

 大概こういうのは女性が肌の露出が多い服を着ていて男性のリビドーを煽り、男性から手を出させるように仕向けるものだ。

 

 しかし今観たこのシーンはまるで逆。

 男性は今から筋トレでもするのかという感じのタンクトップを身に着けていて、女性はその姿に異様に興奮している。

 そして我慢の限界を迎えた女性のほうが、男性を押し倒し服を脱がせて身体をまさぐっていく――


 俺はこのシーンで今の自分が置かれた状況を大体理解した。


 なぜかわからないが、男女の貞操観念が逆転している。

 

 だが何が原因でこうなったのかはわからない。自分の足りない頭では考えても答えは出ないだろうと、俺はすぐに思考することをやめた。


 いきなり貞操逆転世界になってしまったのだが、俺はなぜか落ち着いていた。

 むしろこの世界に上手く順応していけそうな変な自信があったのだ。


 それよりも何も食べていないせいで腹が減って仕方がない。体調を回復させるためにも、昼飯を食べなければ。


「……まあ、とりあえずうどんを食うか」


 のびのびになってしまったカップのうどんは、消化に優しくて美味しかった。


 あと、温泉リポーターのおっぱいもちゃんとしっかり目に焼き付けておいた。

 お餅みたいだったので実質このうどんはちからうどんである。


 早く風邪を治して明日からがんばろう。

 

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