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恐れられた教頭 (3/6)

3


 二人は用務員に話を聞くべく、1階にある用務員室へと向かう。


 「おや?あなたは?」飯島は用務員室の前でドアノブに手をかけている白衣姿の短髪の男に話しかける。


 「え?私は教師の利根崎ですが・・・あなたは?」化学科の利根崎勝が驚いた様子で飯島たちを見つめる。


 「私は刑事の飯島です。こちらは部下の加野。こんなところで何をしているのですか?」


 「ああ!刑事さん!いえ、実はちょっと用務員さんに話があって・・・」


 「そうですか。実は私たちも用務員さんに聞きたいことがありまして・・・」


 「え!」


 「どうなされましたか?」


 「いや、実は・・・私、見たんです。」


 「え?見た?」


 「はい。3時間目のときに、ちょっと薬品をこぼしてしまいまして。更衣室に戻ったときに、職員室の前で用務員さんを見たんですよね。」


 「あ!そうですか!その話、聞かせてもらえますか?ここですと、生徒たちも通るので、一旦、職員室の方まで来ていただけますか?あ、それと加野君。用務員さんに事件当時のことを聞いておいてくれ。」


 「あ、いや、用務員さんはいらっしゃいませんでした。ノックしても返事がなかったので、ドアを開けて確認しました。」


 加野は用務員室をノックし、返事がないことを確認してドアを開けてみると、確かに用務員の姿はなかった。


 「ああ、本当ですね。加野君、ここで待っていてくれ。利根崎先生、職員室でお話を聞かせてもらえますか?」


 「はい。」


 2人は2階へと上り、職員室から二部屋離れたところの更衣室の前で立ち止まる。


 「ここが更衣室ですか。職員室を出てすぐ近く。給湯室の隣ということですね。」


 「はい、給湯室の隣ですが、実際に行き来することはできません。」


 「どこで用務員さんを見たのですか?」


 「はい、ちょうどこの辺で見ました。」


 「この辺?職員室を出てすぐの所?」


 「はい、3階で授業をしておりましたので、2階に降りて来たところで、職員室から出てくる用務員さんを見ました。」


 職員室は2階の西側端の一帯が職員室になっており、階段は東西に一か所ずつ配置されていて、職員室の迎えが丁度階段となっている。職員室の扉は中央と南側の2つあり、いまもっぱら問題になっている入口は南側のドアである。給湯室も南にあり、職員室からしか入れない。更衣室は給湯室の東隣りとなっている。


 「用務員さんはどのような様子でしたか?」


 「えー、ちょっと暗そうな感じというか・・・」


 「服装は?」


 「服装はいつとも同じ灰色の帽子と作業服、それに箒などの掃除道具を持っていたと思います。」


 「そうですか。パンダっぽい感じはしましたか?」


 「はい?何のことですか?」


 「いえ、すいません。そういう話があったもので。ええっと、教頭先生の件についてはご存知だと思いますが、先生は職員室には入られたのですか?」


 「いえ、私は着替える用しかなかったので、職員室には入っていません。」


 「では、更衣室で着替えて教室に戻ったと?」


 「はい。」


 「その間、だいたいどれくらいの時間でしたか?」


 「え?時間?計っていないので、正確にはわかりませんが、5分くらいじゃないですか?」


 「着替えるのに5分もかかりますか?」


 「いえ、ですから、正確にはわかりません。ただ、薬品が白衣を通してズボンまで来ていたものですから、心配だったこともあって時間がかかりました。」


 「白衣は何着お持ち何ですか?」


 「えっと、3着ですね。ロッカーに2着と自宅に1着。」


 「白衣の他の色とかあるんですか?赤、白、青みたいな。」


 「白しか持っていません。赤い白衣を着た先生って見たことないでしょ?」


 「ではサイズは全部同じですか?」


 「当たり前でしょ!なんで違うサイズを3着持っているんですか。うちの娘用の白衣があるとでも言うんですか!」


 「ああそうでしたか。えー、ではズボンの方も控えとか持ってきたりするものですか?色も同じなんですか?」


 「ネイビーとカーキです。ちゃんと綺麗にしておかないと、小学校に入ったばかりの娘にも笑われてしまいますから。」


 「ああ、そうですか。でも、いちいちもって帰ったりするでしょうから、面倒な感じがしますけどね。」


 「そりゃあ、しわしわのジャケットに、汚れのついたワイシャツを平然と着ている刑事さんにはわかりませんよ。」


 「ハハハ、そうですか。わかりました。有難うございます。ところで、先ほど用務員室に行かれていたのはなぜですか?」


 「ええ、ですから、その件でひょっとしたら用務員さんが・・・と思って、話を聞いてみようと思ったんです。」


 「何か特別に仲が良いのですか?」


 「いえ、そうではありませんが、今回の事件はおそらく身内の犯行なんじゃないかって。富村先生からも話を聞いていたので、ひょっとしたらと思ったら、急に心配になって・・・」


 「なるほど。最後に先生、これは皆さんにお伺いしているのですが、教頭先生が誰かに恨まれていたとか、そういうことはご存知ないですか?」


 「教頭先生は厳しい方で、色々な方が被害にあっているのかと・・・」


 「被害に?」


 「用務員さんも掃除の仕方が汚いとよくダメだしをされていました。」


 「ああ、そういうことが・・・。先生も被害があるのですか?」


 「私?私はそんな・・・」


 「教えてください。皆さん、何かしらかお持ちみたいで。」


 「生徒の指導方針で意見が食い違ったりして、軽く口論になったりとかしたくらいですよ。」


 「口論ですか。たとえば?」


 「よくある話ですよ。高校生らしい髪型についてどうあるべきだとか、Tシャツの色の決まりとか。スカートの長さについてとか。」


 「ピアスの穴は3つまでとか?」


 「刑事さん。うちの生徒たちはね。牛じゃないんですよ。ピアスなんて空けている子はいません。」


 「そうでしたか。わかりました。ありがとうございます。」

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