表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
最後のチャンス  作者: TADA
4/4

告白って

第5章 告白って


 優希の『不器用な笑顔から』との出会いから、約3ヶ月が過ぎようとしてた。

 師走から年始への忙しい端境期でも、優希との同伴は月1ペースで継続していた。

 最初は一緒に居られて、多少手が触れる程度のコミュニケーションでも、

本当に嬉しかった。

 但し、50歳を過ぎても煩悩の欲求は増加するばかりなのだから、

人間の欲求とは恐ろしいものだ。

 俺自身の『字本を磨く計画』は紆余曲折はあるものの、実施しているが効果は

期待値には程遠いものだった。

 ファッション関係だけは、富山の唯一のデパートでセンスの良い店員さんと出会えたので

一番変化した部分だろう。

 服だけではなく、靴や小物類、眼鏡、アクセサリーにも投資して、その甲斐あって周辺からも好評だったった。

 

 当然、優希との同伴時にも取り入れた。

 新潟にか基本仕事で出張すので、スーツで優希のお店に通ったが、プライベートファッションでの同伴も試みたりして、仕事とプライベートのギャップの演出計算もした。

 

 優希から「楽しい。尊敬します。」なんて言う言葉を聞く機会が多くなった。

 

 俺はこの3ヶつ間で冗談ぽく「優希が好きだよ。」と、何度も伝えていた。

 

 優希も「ありがとう。優も好き!」と冗談ぽく返答がきていた。

 

 自分磨きも道半ばなのに、優希の営業トークを真に受けてその気になった。

 それにこのままの客とスナックのママの関係だけでは、不満が募ってしまったのだ。

 

 2023年1月16日木曜日の優希との同伴した。

 上越にある駅前の焼肉屋だった。 魚が好きな優希との同伴では、珍しいチョイスだった。

 お店の前の交差点付近で、立って優希を待っていた。

 上越の1月は流石に寒いが、早く優希に会いたかったし、待つ時間も嫌いじゃなかった。

 暖かそうな黒いコートを纏い、息を白くさせて優希は現れた。

 お店では派手な『スナックのママ』って感じのドレスを着ているが、

 同伴時は『可愛い女の子』って感じの普段着に近い恰好だった。

 富山や石川では同伴時も派手な格好をする女の子が多かったので、

 この地味な服装は、普通のデート感覚で、今でも新鮮だった。

 

 「お待たせ!」素敵な笑顔だった。

 

 「久しぶり、髪の色変えたんだね、似合っているよ。」

 

 「ありがとう。」 


 会話しながら、焼き肉屋のドアを開けた。

 

 「いらっしゃいませ」と女性店員が予約席へと案内してくれた。


 「ビールでいい?」と、いつも通りに優希に尋ねた。


 「ビールで!」楽しい同伴が始まった。

 

 牛タン、ロース、カルビ、ハラミを順番にオーダーした・・・

優はホルモン関係は嫌いだった。


 「優のことが好きだよ。手をつなぎたい。」

 

 「ありがとう。いいですよ。」と手をつないだ。


 「もう一度、優が好きだよ。」と告げた。


 不細工な中年男性が同伴の席で、不様な姿を曝け出していることは、

飲酒していても判断できていたのだが、どうにもできなかった。

 

 「ありがとう。」本当に嬉しそうに笑った。


 「客ではなくて、男して優に好きになってもらいたいんだ。」

 「優の家族環境をつもりはないし、俺も離婚するつもりはないんだ。」

 「優と恋人同士の関係になりたいんだ。」

 「恋愛は20年以上前のことだから、自分のこと上手く制御できないんだ。」

 「それくらい優が好きなんだ。」

 

 「・・・」優は、黙って俺の話を聞いていた。


 「都合のいい女になれって言っていることは分かっているんだ。」

 「純粋に優と恋愛がしたいんだ。」と、付け加えた。


 優希が口を開いた。

 「私も好きですよ。ただ、恋愛の好きではなくて...」

 「人間として好きだし、尊敬しています。」

 「お店を開店させて、今は、何とか経営するだけで精一杯で...」

 「恋愛を考えられるほど余裕がないよ。」

 少し、困惑したような感じだった。


 俺を傷つけないように、言葉を選択しながらの模範解答だった。

 まぁ、こうなることは予想できたが、自分の気持ちの落ち込みは予想外だった。

 それでも、俺の真剣さは伝えることができたと思うので、

俺の恋愛は、これからが勝負だった。

 この告白を機に、毎日のLINEのやり取りは止めた。

 優希にフラれたことが、ショックだったことを認識してもらうためだ。

 要するに、『それだけ俺は優希に真剣に恋している。』ことを、

毎日認識してもらうことが目的だ。

 それだけ、接待などで優希のお店を使うときは、LINEで予約連絡した。

 LINEのやり取りは素気無い物に変化して、俺の近況は伝えないようにした。

 優に『俺の事を気にして欲しい。』戦略だった。

 沢山のお客様の中の1人で、面倒なヤツと思われる可能性もあったが、

どうしても優希を入手したいと思えば、こちらから仕掛けるしかなかった。


 富山を含む北信越地方の冬は、悪天候も続くためインドアが多い。

 俺はその環境を利用して、ジムでの筋トレや読書などの自分磨きに注力した。

 その甲斐あって、身体は筋肉が目立つ位になったし、本も月1冊ペースで読んだ。

 有酸素運動が出来なかったから、ダイエットは計画通りに進まなかった。


 優希の同伴は少し時間が空いて、2023年3月1日水曜日だった。

 この日は、優希と初めて同伴した鮨屋でする事にした。

 新たな優希との関係を築くには、『最適なチョイスだ』と思った。

 今日はもっと踏み込んで、優希にアタックする。


 お店前で優希を待つ光景は変わらなかった。


 「お待たせ!」と、優希の変わらない笑顔。


 「久しぶり。」片手を挙げながら、優希に答えた。


 お店に入った。

 

 「いらっしゃいませ!」店員の声と共に、掘り炬燵形式の席に通された。


 「ビールでいい?」


 「ビールで!」と、変わらないやり取りから始まった。


 他愛もない会話を経て、核心に触れた。


 「優が好きなんだ。フラれてもやっぱり好きなんだ。」

静かに伝えた。


 優希は『やっぱりきたか!』って感じの雰囲気を醸し出していた。


 「優とキスしたい!!!」

 より具体的に、優希を求めた。


 「やっぱり、恋愛を考えられるほど余裕がないよ。」

 予想通りの返答だった。


 何故いきなり『キス』かと言うと、優と俺は『抱擁はしあう関係』だった。

 勿論、服を着ての行為だった。

 帰る際に誰も居ないことを互いに確認して、抱擁しあって2人の秘密だった。

 しかも、優希から抱擁してくれたことを、今でも覚えている。

 「お客様で俺としかこういうことはしていないから秘密ね。」って、

言われはことはとてつもなく嬉しかった。

 俺はキスしてから、抱擁しあうことが普通だった。

 抱擁できるのなら、キスだってできるとと思っていた。

 逆に、優希の顧客確保戦略に嵌ったのかもしれない。

 疑似恋愛もスナックの武器なのだから...

 

 この同伴は優希にとって、苦痛な時間だったかもしれないが、

 『好き』って気持ちを伝えたことは、後悔していない。

 

 俺と優希は、新しい関係を築かなければならない環境を俺は作った。

 持論だが『喧嘩と仲直りができる関係』これが一番絆が深まると思っている。

 この後は、優希に如何に『俺を失いたくない。』と、思わせるとこができるかが、

優希を入手できるか?の鍵になるのだ。


  『俺は本当の勝負処に立った。』


 

 


 




  




 

 

 

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ