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最後のチャンス  作者: TADA
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心って

第1章 出逢い


 『何がどうなったんだ。』

 『こんな筈では無かった。』


 俺は、1970年富山県生まれの52歳。

 どこにでも居る不細工な中年だ。

 身長168cm 75kg デブで若干ハゲで眉毛も薄い

それでも、既婚者で子供も3人いる。

 近年では、子供が3人もいれば、

少子化問題が騒がれている世の中では、

貢献している方だろう。

 妻は、2023年2月で50歳になった。

 長男は、26歳で会社員で東京在住だ。

 長女は、23歳で看護師で、富山で俺達と同居している。

 次女は、20歳で会社員で、これまた、同居している。

 子供達は、全員無事に社会人になった。

 親としての責任は、一段落した。

 俺は、富山の会社で、鉄鋼関係の営業部長を務めている。

 普段の営業範囲は、北信越地区が中心だ。

状況により関東圏、関西圏、中部圏など、全国的にも出張する。

 営業部長という肩書きを貰っているが、

仕事がそこまで出来る訳では無い。

 経済環境と部下に恵まれて、この立場に居る。

 恵まれるとは、お客様達の経営陣は

 俺と同世代に変わり、俺の役目はトップ営業が主体になり、

小社の経営者にも信頼を得られた。

仕事の方向性が決まれば、部下達に任せることに変わった。

管理者としての仕事になった。

しかも、部下達も俺よりも優秀だった。

 『神様は、上手く人生を作ってくれている。』と思っていた。


 それは、不意に俺の心を襲った。

 2022年9月10日に、新潟県上越市で、

 お客様のゴルフコンペに参加した。

 コンペの参加者は48名だった。

 無事に表彰式も終えて、同テーブルだった5名で、

2次会会場のスナックを探していた。

 寂れた駅前周辺を散策している時と、

あるビルの4階に光るスナックの看板が、目に飛び込んで来た。

 寂れた駅前で、4階ビルであれば、空いているだろうと

 安易な気持ちで、そのスナックへ行くことにした。

 小さなエレベーターで、4階まで上り、躊躇いもなく店のドアを

開けた。

 予想通り、店のお客は疎らで、あっさりと入店が出来た。


 今でも衝撃的に覚えている。

 店のドアを開けた瞬間に、

「いらっしゃいませ」と声が聞こえてきた。

 その女性は、お店のママだった。

 しかし、そのママの声と一緒に飛び込んで来たのは、

『不器用な笑顔』だった。

 長年営業をしている俺にとっては、

スナックはごく普通の空間なのだが、これほど、

『不器用な笑顔』で、迎えられたことは無かった。

本人言うと嫌われそうだが、

確かに外見は可愛いが、容姿はどれも特別では無い。

 どちらか言うと、一緒に経営している妹の方が、

容姿は優れているかもしれない。

 姉妹は36歳と35歳で、既婚者で各々旦那も子供達も居た。

そもそも、お店は2022年7月からで、

 開店して間もない状態だった。

 それで、急に5名の面識もない多少酔っ払い客が飛び込んで来たので、

不安な笑顔だったんだろう。


 それでも、俺はこのスナックママである優希を

一瞬で『好き』になってしまったのだ。

 人生であんなに不安そうに不器用に笑う女性を見たことが無かった。

 そんな素直な彼女に惹かれてしまったのだろう。

 まぁ、人を好きになるのに、理由はないことを改めて、

認識させられたのだ。



『俺の中の何かが、目覚めたのだ!』



 今までの俺なら、外見的に妹の美香を気に入っていた様な気がする。

 スナックのママに恋するなんて、良くあるチープな話しである。

 お客様が熱を上げて、スナック通いしているのを見て、

「相手にされないのに…」なんて思って傍観していたものだ。

 それがどうだ…

まさに、俺自身がその張本人なっているではないか?

 この歳で人を好きになるなんて無いと思った。

 こうなると、中年でもどう気持ちを制御すれば良いか?

分からなくなるである。

 自分でも滑稽だと分かっていても、

『相手に好きになって貰いたい』と思ってしまうのだ。

本来であれば、50歳も過ぎれば、

『大人の魅力で勝負』と、いきたいところだが…

 男として磨いて来なかった自分が露呈している。

 後悔しか浮かんでこないのだ。

 夢見る恋愛バカ親父になったのである。



第2章 努力・努力・努力


 慌てて、モテる中年男性をネット検索してみる。

「清潔感」「鍛えた体」「経済力」「包容力」などと、

今の俺には、縁遠いキーワードが飛び込んで来る。

 急にファッションや髪型を気にする様になり、

鏡を見る度に幻滅する自分と立ち向うことになった。

 体は太り、髪の毛は薄くなり、ファッションは、

量販店で済ませてある。

 これじゃ、好きになってもらえる訳がない。

 まさに、自分磨きをして来なかったツケを、

払うことになるのだ。


 勿論、好きな人が出来たから、何をしても良い訳ではない。

 妻も子供達もいるし、相手にも家族が居るのだ。

 相手家族も崩壊願望もない。

 つまり、告白した場合は都合の良い女性になって

欲しいと遠回しに言っているのだ。

 それでも、人を好きになってしまった。

 この衝動は理屈抜きで制御出来ないのだ。

 それに、この機会を逃したら、

「本当に恋愛出来ないかもしれない。」と内心思っている。

 幸いにも好きなった相手は、スナックのママなのだから、

会いたいと思えば、お店に客として行けば会えるのだ。

 但し、相思相愛になりたい欲求を満たす為には、

何か行動しなければならないのだ。

 さて、どうしょう?何から始める?

 此処で、仕事のスキルを活かさなければ…


 先ずは、自分磨きプランを立ててみよう!

①清潔感を磨く

②身体を磨く

③知性を磨く


①清潔感を磨くとは、なんだろう?

・入浴、洗顔、髭、爪、デオドラント、眉毛、鼻毛、

無駄毛処理、香水、歯磨き、ホワイトニング、皺対策

結構項目をピックアップ出来た。


②身体を磨くとは、なんだろう?

・ダイエット、健康、筋トレ、ランニング

項目をピックアップする度に、眉間に皺が寄った。


③知性を磨くとは、なんだろう。

・情報の整理能力、本を読む、ファッションセンス、

仕事が出来る

これまた、この歳では高いハードルの様に思える。


 それぞれ、『出来ない理由を探す』のでなく、

『達成する為にどうするか?』を

具体的に期間を決めて取り組みたい。

 この辺の思考は、亀の甲より年の功を活かしたい。

プランを全て達成したとしても、好きになってもらえるとは、限らない。

 しかし、好きな人が出来ると、欲望の塊が湧き出てくると

パワーに変換出来るは、まだ、俺の中にも男が

消えていないからなのだろうか?

 これだけ使っているエネルギーは、成就すると不倫を

する為だとは、なんとも皮肉なのだが…

それでも、この恋心はどうにもならないのだ。


 先ず着手したのは、清潔感アップだ。

入浴、シャンプー、トリートメント、洗顔、除毛、ピーリング

入浴後の発毛剤、化粧水、乳液、ボディクリーム、歯磨き、ホワイトニング、洗面所にはズラリとスキンケア商品が並んだ。

 妻から白い目で見られたが、少なくても不潔では無いので、

問題は言われなかったが、かなり不思議に思われた。


 次に身体を鍛え始めた。

元々、近所の24時間営業のスポーツジムと契約していた。

真剣に通うことにした。

 腹筋、背筋から始めて、ベンチプレス、スクワット等々

フリーウエイトやマシンを週2で通う計画を立てた。

並行して、ダイエットも計画した。

 ダイエットは、食事制限を中心に計画を立てたので、

すぐに挫折した。

 営業は接待が多く食事制限は無理があるのだ。

 まぁ、言い訳に過ぎないのだけれど、それなら、

有酸素運動を中心に計画し直す必要があった。

 なかなか、ダイエット計画は立たなかった。


 最後に計画したのが、知性を磨くだった。

 先ずは、読書をして言葉のセンスを磨くことにした。

外見で好きになってもらえることは、

 不可能なのだから、コミュニケーション能力を、

磨くしか方法はない。

 気になった言葉は、メモする様にした。

 部下達からは、「最近難しい言葉を使われますね」と、言われた。

 褒め言葉なのか?チープだと言われているか?

良く分からなかったが、『言葉は使うことで磨かれる』と、

思う様にした。


 彼女と出会ってから、1週間で自分磨き計画を立てて、

1年間継続計画を実行することにした。

 『継続は力なり』ありがちな言葉が頭に浮かんだ。

 俺はこの1年間でどれだけ変われるか?

 自分が自信を持って好きな人に好きだと告白したいのだ。

 人生最後の恋愛チャンスかも知れないのだから…






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