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黒の暴食<Black Gluttony>  作者: マーブル
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上級職へ

 更に2週間程経った。あれからレベリングを続けて3人のレベルが70まで上がりついに上級職になれる資格を得られた。俺らは上級職になるまで90日程掛かっていたので早い方だろう。


「ついにここまで来たのね…!ウフフ…」


 ミナが不気味な笑顔を浮かべている。漆黒のローブを身にまといっている。これは上級職のダークマジックキャスターの装備品の基本装備である。そう、3人は既に上級職になっているのだ。


「随分と嬉しそうだなミナ」


「ええ!この時をどれだけ待っていたか…!ああ、良いわ!他にどんな装備品があるのかしら。でもこの基本装備のデザインも中々良いわね…見た目はしばらくこれで固定して…」


 ミナがジークに嬉しそうに語っている。長くなりそうなのでそのままジークに相手してもらおう。


「ケージ、それは…」


「はい、僕は『エレメンタルマスター』にしました」


 エレメンタルマスター…剣装備のアタッカーであり、自身の武器に様々な属性を付与して攻撃力を上げつつ臨機応変に属性を変えて戦うジョブだ。炎が弱点の相手には自身の剣に炎をまとわせて戦うといったシンプルであるが、あらゆる状況で活躍できる。ただし魔法剣士や勇者と違って普通の魔法は使えないので、近距離専用のアタッカーになることがデメリットといえるだろう。一見すると勇者の方が便利と思われるが、魔法が使えない分、近接攻撃の火力が高い。寧ろ役割がハッキリとしているので、器用貧乏になりがちな勇者より強いと俺は個人的に思う。


「良いんじゃないか。これからジークと共に近距離でバンバン戦ってもらうぜ」


「はい!」


 嬉しそうな顔をしている。これぐらいのレベルになればもう立派な戦力だ。これから活躍してもらおう。そして最後は…


「スミレは…うん、チアガールだな」


「えへへ…かわいいでしょ、この恰好!」


「お、おう…」


 返事に困る。スミレは手にポンポンをつけて、短いスカートを履いている。


(世間一般のチアリーダーよりも過激な恰好ではないか?普通に青少年に害がある恰好だと思われるんだが、運営は何でこれをOKにした?ってかこの恰好で戦うのか…)


 しかしこのジョブ思ってたより優秀なのだ。回復や味方のバフ効果がある応援をすることでパーティにかなり貢献できる。しかもジョブ固有のスキルで男性には応援の効果が上がるというものもあるのだ。ミナには効果がないが、他3人にはあるので俺らのパーティに噛み合っている。攻撃スキルが無いに等しい分バフの種類も豊富だ。もっと使われても良いと思うが…


「女性限定ジョブなのと、この恥ずかしい恰好が原因だろうな…」


「えー、この恰好かわいいよ?それに私チアリーダーやったこともあるし懐かしい感じもある!」


 おっと、思わず口に出してしまったようだ。スミレが反論してきたが…


「もっとまともな恰好の装備品見つけような」


 ポンと肩に手をやり、そう告げる。本人はえーと言いながら口をとがらせているが、さっきからスミレの恰好をチラチラ見ているジークのためにも何とかしてやらないといけない。


(ジークに服を作らせるのも良いかもしれない。そのためにも裁縫師のレベルも上げてもらうか。)


 そう考えながら俺はパーティメンバーに向かって話し始める。


「とりあえずここまで来ることができた。これからのクエストはお前ら3人にもキッチリと働いてもらうからな。次の目標はレベル100だ。その間にもっと良い装備品も見つけるぞ」


 はーい。と全員が返事をする。まだまだ大会に向けての準備は続きそうだ…





 実は3人が上級職になるまでの間にPVP大会運営が動きを見せた。といっても内容としては開催日時やエントリー期間の発表等であり、他に目新しいものは無かった。一番重要な情報である大会の開催日時は今から約半年後と発表された。半年と聞いて長いように思われるが、全員が全員ずっとゲームが出来るわけでもないので気を抜くとあっという間に半年なんて過ぎてしまうだろう。特に新しく仲間になった3人は大学生であり、今は夏休み期間なので割と自由に出来るが、講義が始まったら毎日こうとはいかないと聞かされている。


(ってかミナとスミレはあれで大学生なのか…リアルでは流石にああでは無いと…)


 思ったが、スミレはあのままな気がした。謎の信頼感がある。一応聞いてみるか…


「なあ、ミナ」


「ん?何よ?」


 一緒に歩いていたミナに話しかける。流石に本人に聞くのは躊躇った。


「スミレってリアルでもああなのか?」


 一応スミレに聞こえないように声を小さくする。


「ああって…スミレはスミレよ?長年ずっと一緒にいるけど本当に裏表が無い子ね」


「やっぱりか…」


「何で急にそんなことを聞いてきたのよ…」


「いや、リアルでもあんな感じの女子大生って想像出来なくて…」


「まあ、分からなくもないけど…あの子私たちの中で一番頭が良いのよ。勉強が出来るという意味で」


「え?マジで?」


 それは予想外だった。


「本当よ。あの子もっと偏差値の高い大学に入れたのに私達に合わせてくれたんだから」


「世の中分からないもんだな…」


 俺が言っていたこのゲームの説明も理解していたように聞いていたが、本当にしていたのか。


(もしかしてミナにすら見せてない裏の顔があるんじゃないか)


 そう思うと若干寒気がしたので、今後は考えないようにした。






 あれから少し歩いて今日の討伐クエストの対象モンスターである「ヒュージコンストリクター」がいた。以前に3人を追っかけまわしていた同種の別個体である。こいつは毒こそないが、その巨体から繰り出される尻尾攻撃や締め付ける力は強力であり、捕まったら大ダメージを受けることになる。そんな巨大蛇に対して最初は逃げることしか出来なかった3人は…


「違うやつとは分かっていますが…僕たちの成長見てもらいます!」


「あの時はよくやったわね…消し炭にしてあげる…」


「この蛇ちゃん美味しいかなー?」


 このようにリベンジに燃えている。何か約1名変なことを言っていたが、気にしないことにした。


「今回は5人で…だな!」


 ジークがそう言うと


「ああ、行くぞ!」


 俺はそう言いながら巨大な蛇に向かって走るのであった。


ここまで読んでいただきありがとうございます。


忌憚のない意見、感想をお待ちしております。

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