自己紹介
昨日までパーティを組むことになって、さらにPVPの大型大会に出るなんて誰が予想出来ただろうか。それこそ神様ぐらいだろうな。まあ、神とか信じていないんだが。
新しく入った仲間たちとの情報共有を兼ねて、俺らはまず自己紹介をすることにした。
「じゃあ、俺からな。俺はロジャー。今のジョブはタンク職のシールドブレイダーをやっている。レベルは100だ。他にはアタッカーの双剣士も触っている。まあ、中級職だしレベルはそんなだな。あと生産職として料理人も取っている。」
「へえ、料理出来るんだ」
ミナが意外そうな顔をして言っている。俺はリアルでも料理することがそこそこ好きなので、スターリベルの生産職で一番馴染みのあるものを取ったのだ。ちなみにゲーム内だけどガチで料理する。そこまでリアルにしなければならなかったのかと疑問に思う。
「あのー?」
スミレが首を傾げながら手を挙げている。スミレの容姿自体はすごく良い。黙っていればとてもモテるだろう。黙ることができればな…
「中級職とか生産職ってなんですかー?」
「ああ、そこからか…」
まあ、初心者だしついでにそこらへんの説明も軽くするか。
「まず、ジョブは大きく分けて2種類ある。モンスターと戦ったり、PVPをしたりする時のジョブは戦闘職。まあ、ゲーム始める時に設定するからそれは分かっているだろ。そしてそれ以外が生産職。具体的には、武器を作る鍛冶師や能力を一時的に上げる料理を作ることができる料理人とかだな。」
「ふんふん」
スミレが頷きながら話を聞いている。流石に分かってるよな?
「で、戦闘職は下級職、中級職、上級職、生産職は下級職と上級職に分かれている。」
「戦闘職と生産職で違うんですね」
ケージもこの話は知らなかったようだ。
「ああ、そうなんだ。理由は知らないが…まあ、生産職は下級職でもかなりの数があるからな。必要以上に分ける意味も無かったんだろ。ジョブの細かい話についてはまた今度な」
ついつい語って脱線してしまう前に切り上げる。俺はジークに話を振った。
「んじゃあ、次はジークな。」
「おう!」
ジークがスッと立ち上がる。いや、座ったままでいいだろ。
「俺はジーク。このロジャーの相方な!」
ん?俺らはお笑いコンビか何かか?とツッコミを入れそうになったがやめた。
「ジョブは回復もできるアタッカーのプリーストモンクだ!レベルはもちろん100!他の戦闘職は無し。生産職は裁縫師!布系の防具なら作れるぞ!」
「え、裁縫?」
ミナが驚いている。分かる。俺も初めて聞いた時似合わないと思った。
「似合わないか?ガッハッハ!」
ジークが笑いながらそう言う。自分でもそう思っているのだろう。
「アハハハハハ!似合わなさすぎでしょー!」
スミレが大笑いしている。そこまで笑うのは若干失礼なように感じるが、まあジークだし大丈夫だろう。
「ちょっとスミレ笑いすぎだよ…」
ケージの声が少し震えている。流石に怒られるんじゃないかと思ったらしい。しかしジークは、
「なーに、気にすることはねえよ。自分が1番分かってるしな!」
と絶対に裁縫には使わないであろう筋肉を見せびらかす。何故今そのポーズをするのだ。
「んじゃ、次はケージだな」
ジークがケージに振る。
「は、はい!」
ケージがピシッと立ち上がる。何か自己紹介するやつ立ち上がる流れになったが…まあいいや。
「ケージです。今のジョブは剣士です。レベルは9ですね。将来的には魔法剣士とかになりたいなと思っています」
「魔法剣士か。良いんじゃないか。上級職は流石にまだ決めてないか」
「そうですね。具体的にどういうものがあるのかまだ把握していないですし」
魔法剣士はその名の通り魔法と剣を使って戦うジョブだ。上級職の候補はいくつがあるが、本人のなりたいもので良いだろう。
「僕の紹介できることはこれだけですかね…次はミナお願い。」
「分かったわ。」
ミナがスッと立ち上がる。
「ミナ…です。えっと今のジョブは魔道士…です…」
何か歯切れが悪そうだ。
「別にタメ口で構わないぜ。距離感じるし何よりここはゲームの世界なんだしな!」
ジークが笑みを浮かべて話した。
「助かるわ。正直どうしようか迷っていたのよ」
なるほど。そういうことだったのか。
「俺もタメ口で構わないぞ。2人もな」
俺はケージとスミレに向かって言う。
「わーい!ありがとう!ろー君とじー君!」
「ろー…君…?」
こいつの距離の詰め方バグってないか?と感じたが
「まあ、それでいいや…」
俺は抵抗することを諦めた。
「俺もそれでいいぜ!」
「うん!」
2人でアハハと笑っている。こいつら結構お似合いか?
「えっと僕は…」
ケージが少し困っているようだ。
「まあ、無理にタメ口じゃなくてもいいぞ。自分が楽だと思う話し方にしてくれ」
「すいません。ありがとうございます」
ケージが俺に礼を言う。
「それじゃあ、改めて…」
ミナがコホンと一拍置いて話す。
「ミナよ改めてよろしく。ジョブは魔道士をやっていて将来的にはカッコいい漆黒の魔術師とかやりたいわ!」
ミナが目を輝かせて言っている。アレ?まとも枠かと思っていたけど、もしかして思春期にかかりやすいあの病気を患ってる?
「おう…そうか…」
俺は困惑しながら反応する。一方ジークは…
「そうなのか。そういや魔道士系の上級職にそんな感じのものあった気がするぞ」
普通に応えていた。こいつの心の広さ異常じゃねーか?それとも俺が狭いだけ?
「本当!?」
ミナの目が更に輝きだした。
「あったよなー、ロジャー?」
「え?あー、あったような…?」
いきなり俺に振るな。
「こりゃ神ゲーだわ!」
ミナが鼻息を荒くして興奮している。こいつも見てくれは良いのに中身が…ケージも苦労してんだな。しばらく興奮が収まりそうになかったので、俺が進行した。
「じゃあ、最後にスミレだな」
「はーい!」
スミレが元気よく手を挙げて立ち上がる。
「スミレだよ!ジョブはチアリーダーっぽいやつがあるって聞いたからそれを取ろうとしてるの!今は…何だっけ?」
「僧侶でしょ」
ケージの助け舟が入る。
「あー、それそれ!さすがけー君!!」
アハハと笑いながらスミレは言う。俺はスミレの発言で1つ引っかかったことを口にした。
「チアリーダーなんてあったか?」
「さあ?俺は知らないけどこのゲームならあり得なくはないぞ」
まあ、そうかもしれないが…チアリーダー…味方へのバフ効果を付与するスキルとか?バフ役なら確かに僧侶から始めるのが正解だ。
「ちなみにその情報はどこから知ったんだ?」
「ん?チアリーダーもこと?インターネットにあったよ!なるには僧侶から始めればいいとか教えてくれた!」
「ん?教えてくれた?」
「うん!」
「あー、理解した…」
俺は1つの結論に辿り着いた。おそらくスミレが見たのはスターリベルのネット掲示板。あそこにはよく変態という名の変態が現れる。そこでそのチアリーダーっぽいジョブの話題のスレが立っていて、スミレはそこで色々聞いたんだろう。おそらくあいつらはジョブのエロい衣装を拝めるということで懇切丁寧に教えたはずだ。会えるか分からない人に教えてどうなんだとは思うが、エロ衣装人口が1人でも増えればそれでヨシ!の精神だろうなあそこに蔓延っている奴らのことだし。
「まあ、良かったな。優しい人たちがいて」
「うん!でもお礼とか言いそびれちゃった」
「たぶん大丈夫だぞ」
「そうなの?」
スミレが首を傾げている。世の中には知らなくていいことがあるんだ。と俺は心の中でスミレに言った。
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