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黒の暴食<Black Gluttony>  作者: マーブル
3/13

大会

 ケージはロジャーからの意外な返答に呆然としていたが、ふと正気に戻った感覚がした。どうやら夢だったようだ。気を取り直してもう一回同じことを告げる。


「私たちを弟子にしてください!お願いします!」


「いや、2回言っても変わらないから…」


「夢じゃなかった!!」


 ケージは膝をついて落ち込んだ。




「何故なのです!何で断るんですか!」


「いや何故って言われても…」


 ケージにすごい勢いで問い詰められる。顔が近い。真面目なやつだと思っていたが、案外そうでもないらしい。いや真面目だからこそか…?そう思いながら俺は続けた。


「会って間もないやつにいきなり弟子にしてくださいとか言われて快く受けるやつがいるのか?」


「うっ、それは…」


 ケージが口ごもる。逆の立場から考えてみたのだろう。


「まあまあ、話だけでも聞いてやったらどうだ?」


 今まで黙っていたジークが喋り始めた。


「いきなり弟子とか言われてお前も驚いたんだろ?なあ、ケージ。こいつはそんなに愛想は良くないが、困ってるやつはほっとけない俺みたいなタイプなのさ。」


「うっせぇ」


 ってかジークみたいなタイプってなんだ。


「そうですよね…いきなりで申し訳ございませんでした」


 ケージが頭を下げて謝る。どうやら冷静になったようだ。


「あの…」


 ジーク同様黙っていた今までミナとスミレが喋り始めた。


「ケージどういうこと?師匠を探してたの?それに私たちって…?」


「けー君私も聞いてないよー?」


 女子2人は何も聞かされていなかったようだ。というより先ほどの発言はケージの唐突なものであっただろう。


「2人ともアレに出たいんだろ?」


「まあ…」


「そうだよ!ってか出るよ!」


「今の僕たちでは優勝なんて程遠い。時間はまだあるけど有限だ。効率的に鍛えるには先人の教えが必要なんだよ!」


 アレ?優勝?何の話だ?ジークの方をチラッと見たがこいつも分かっていない様子である。


「もしかしてお2人は知らないんですか?」


 そんな俺らの様子をみたケージが問いかけたてきた。


「ああ、何かあるのか?」


「あれほどお強いお2人が知らないのは意外でしたが…」


 ジークは続けて言う。


「PVP大会ですよ!しかもすごく大規模の!」




 PVP…「player versus player」の略称であり、プレイヤー同士が戦う対戦のことだ。スターリベルでもPVPのシステムがあることは知っていたし、何回かだけやったことはある。俺個人としては、クエストでモンスター倒してた方が楽しいと当時は思っていた。結構人気のあるコンテンツとされていて、日々PVPの研究だけをしているプレイヤーがいるほどだ。


 そんな中で、運営が1週間前に大きなPVP大会を開くと宣言したらしい。まだ大会の名前すら決まっておらず、詳細も不明だが、結構大きな規模で動いており、なんとeスポーツ事業の一環としてPVPの大会を開くと言っているのだ。eスポーツといえば、FPS(一人称視点シューティングゲーム)や格闘ゲーム等が主なコンテンツとしてあるが、MMORPGがそこへ参入することは今までに無かったことである。eスポーツ市場に参戦して市場規模を拡大しつつ、スターリベルの名を更に売るためと考えると中々良い戦略なのかもしれない。


 ジークたちはこの大会に参加したいがためにこのゲームを始めたらしい。ちなみに何故この大会に参加したいのか理由を聞いてみると、


「eスポーツの選手はかなり小さい時からゲームに触れている子が多くて、選手層もかなり若いんですよね。僕もゲーム大好きな人間として、何かeスポーツで結果を残したいと思ってたんですけど、既に遅かったんですよね。何歳か下の子たちに勝てる気がしなくて…そこで新しくeスポーツとして参戦しようとしているこのスターリベルに出会ったんです!」


 確かにスターリベルのPVPなら発売してまだ日も浅いし、全く新しいジャンルのeスポーツになると思われるので、今から始めても遅くないだろう。


「それでPVPをやりたくてこのゲームを買ったと…で、そこの2人は何で一緒にやってるの?」


 俺はミナとスミレを見ながらジークに聞いた。


「実はこのPVP大会は5人パーティ制らしくて…」


「だろうな。」


 そうしないとサポーターのジョブは参加できないしな。


「最初にいつも遊んでいるゲーム仲間の2人に声をかけたんです。」


「ふーん、じゃあ3人はリアルの面識があるのか?」


「はい…まあ、ゲーム仲間というか幼馴染なんですよ僕たち。」


「…」


 ラノベ主人公か何かかこいつは?と心の中で思ったが、口に出すのはやめておいた。


「ラノベ主人公みたいだなお前」


 ジークが笑いながら言った。お前ラノベとか読んでんのか。


「まあ、実際に高校生の時とかよく言われていました…でもそんな甘々な関係になるような要素なんて1ミリも無いですよ」


「失礼ね。アンタ」


 ミナがジト目でケージを睨んでいる。うーん、この時点でそれっぽいんだが。ちなみにスミレは…


「私はけー君のこと大好きだよ?」


 という唐突な告白をしてきた。


「言われてるぞ、けー君」


 俺がそう言うとケージは、


「これもいつものことなんです…はあ…」


 飽きれた様子でため息をついてた。なるほど、あいつの大好きは友達としての大好きらしい。


「5歳までは恋心だったんだけどね~!今はもう友達としか見れないよ!」


 スミレはケタケタ笑いながら言っている。


「アンタ、そういうこと本人の前で言うのやめなさいっていつも言ってるでしょ」


「えー、でも本当のことだし~。みーちゃんもそうだったじゃん?」


「う、うるさいわね!」


 ミナが顔を赤くしながら言っている。


「お前も今は好きじゃないのか?」


 ジークがミナに問いかける。


「…昔のことよ。今はそうね…腐れ縁って感じ?一緒にいて苦じゃないし」


「そうなのか」


 ふーんとジークは興味がありそうでなさそうな顔をしている。そういえばいつの間にか話が脱線していたな。


「まあ、お前らの関係はもういいとして…それで2人を誘って3人になった。その後はどうするつもりだったんだ?」


「すいません、話がそれましたね。残り2人はゲーム内で見つけようということにして始めました。リアルで知っている人にこだわってたらいつまで経っても始まられないと思ったので」


「その判断は良いと思うぜ。何事も行動しねーと始まらないしな」


「ありがとうございます。そして目標としてまずはレベル100まで上げる。その過程で残り2人のメンバーを探そうと思ってたんです」


「で、俺達に出会ったと」


「そうです!これは運命の出会いだ!と思って1人で興奮してしまいました…」


 ケージの顔が若干赤くなった。


「なるほど、よく分かったよ」


 ケージは俺らにこのゲームについて色々教えてもらいながら、後にパーティに誘おうとしていたのだろう。そう理解をした俺は考え始める。


(PVP…eスポーツねえ…)


 どちらも知っていることだし興味が無いわけではない。ただ何だろうか…いきなり言われて俺自身気持ちの整理がついていないのか。それすらも分からない。今まで感じたことのないこの気持ちがどういうものなのか考えていると、


「やっても良いんじゃないか、ロジャー」


 ジークがそう言いながら続ける。


「討伐クエストもマンネリ化してきたしよ。確かに自由が売りのゲームだし他にも色々出来ることがあるが、やっぱ1個の大きな目標があることは悪いことじゃねえ。あと…」


 ジークは俺の顔を見ながら、


「お前はやりたくないことは即断る。最初がそうだったしな。でもこうやって悩んでるということは…そうだろ?」


 と言ってきた。悩んでる時点もう俺は…


「うるせえ、勝手に決めつけんな」


「あれ?違ったか?」


 ジークは疑問符を浮かべながら言っているが、俺はそれを無視して…


「ケージ」


「は、はい」



「その話乗ってやる。俺たちはこれからパーティだ。」


 そう告げたのである。



ここまで読んでいただきありがとうございます。


忌憚のない意見、感想をお待ちしております。

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