想い
俺たちはセイラに協力してもらいながら、下級職のレベルを上げることにした。強いモンスターをセイラにほとんど削ってもらい、俺たちはそれをちょっとつつく。俺とジークはプレイヤースキル高さがあり、3人は元々こういうレベル上げをして慣れていたので、作業自体は滞りなく行うことが出来た。それぞれ対応した下級職がレベル100になると…
「本当にステータスが上がった…」
上がり幅自体は下級職ということもあってそこまで大きいものではないが、中級職なら更に多いボーナスが貰え、それをいくつも習得できるとなると確かにステータスはかなり上がる。
「言ったでしょう?私嘘は嫌いですの」
「いやー、セイラさん疑って悪かったっすよー」
「え、あなたも疑っていたのですか!?ロジャーさんならまだしも…」
セイラとジークが話している傍ら俺は再び頭を抱えることになった。
(本当だった…となるとセイラが運営側の人間である可能性もある…後はなぜ俺らに近づいたのかだな…)
セイラの正体を探るためにも俺は彼女に聞いてみた。
「セイラさん、1ついいか?」
「何ですの?」
「この仕様運営は隠したままにすると思うか?PVPにおいて大事なのは戦略性だと思っていたんだが、これだとステータスの差で勝ってしまうこともあるだろう。見ている人はつまらないと感じてしまう人もいるかもしれない。そうなると大会は成功とは言えなくなると思うんだが…」
「私はそう思いませんわ」
「え?」
「そもそも運営は隠しているわけではなく、ただプレイヤーが仕様に気づいていないだけ。確かにPVPにとって戦略は大事ですが、同じぐらい情報も大事だと思いますの。これぐらいの情報を得ていない時点でPVP大会で優勝するなど言語道断ですわ」
「なるほど…」
「まあ、あなたたちが優勝すれば、他のプレイヤーの方々もこの仕様を探し始めるでしょう。第2回からはステータスの底上げが前提になってくるかもしれませんわね」
ウフフと笑いながらセイラは言う。せっかくのPVP大会が廃人仕様になるのはどうなんだ…?
(ん…?)
俺はまた新たな疑問が浮かび上がった。そもそもこのPVP大会はeスポーツ事業の一環として行うと言っていたはずだ。なのになぜこんなPVPに有利に働く隠し仕様が存在している?またセイラは第2回からはステータスの底上げが前提と言っているが、俺が運営ならまずこの仕様を撤廃、もしくはPVPには反映させないようにする。
この発言、そしてほぼ隠し仕様みたいな要素を俺らに教えているという点でセイラが運営側の人間である可能性が少し減った。
「どうかしましたの?ロジャーさん?」
「いや、こんな半分インチキみたいな方法で優勝を取ったら若干冷めるんだろうなとか考えてただけだよ」
「それは制限しない運営が悪いですもの。あなた方は何も悪いことしていませんわ」
「・・・」
「あの…」
ケージが何か言いたそうな顔をしていた。
「どうした?」
「この仕様他のプレイヤーに広めたらダメでしょうか…?」
「えっ」
「どうしてだ?他の奴に知られたら俺らの優勝は遠のくぞ?」
「そうなんですが…こんな形で結果を残しても何か納得できないというか…」
「こんなせこいやり方で優勝しても嬉しくないということか?」
「まあ、言ってしまうとそうですね」
「ちょっと待ってください!」
セイラが若干慌てているような感じがする。
「先ほども言いましたが、これは情報戦の一種ですわ!ちゃんとした仕様ですし気づかない方が…」
「言い方を変えればそうかもしれませんが、やはり公平性に欠けると思います。他のeスポーツでも使っているキャラのスペック等はみんな同じです。それをどううまく使って他の人と競うのがeスポーツであると僕は考えます」
「うっ…それは…」
セイラがケージのeスポーツへの想いというもので殴られているようだ。俺も仕様ならいいかという想いがあったが…
「じゃあ、この仕様を早速掲示板でも書いておくか」
「え、良いんですか?」
「良いんですかってお前が言ってんだろ?」
「そうですけど…ロジャーさんは僕とは違う考えじゃないかと思っていて…」
こいつ結構人を見る目があるな。
「そうだったけど、お前の想いを聞いて考えが変わった。あとこんなことで優勝してもやっぱ面白くねーとも思ったというのもあるな」
これに関しては本音だ。インチキではないにしても、観戦者目線からするとやはり冷めることではある。別に無双したいわけでもないしな。
「えーっと…どうすれば…ん?でも…」
何かセイラがブツブツ言っている。内容を聞きたいところではあるが、声が小さすぎて聞こえない。
「ケージさんの考え分かりました」
「え?」
「そうですよね。こんな形で優勝しても誰も喜びませんものね」
「「「・・・」」」
全員が黙る。さっきと真逆のことを言っているのだから当然だ。
「いいのか?本当に掲示板に書くぞ?」
「ええ、構いません。確かに想定外のことでしたが、他にもあなた達を強化する手段はあります」
「何?」
「それも先ほどとは違い、あまり知られていない仕様ではありません。多くの方が知っているものです」
「知っているもの?」
「ええ、知っているでしょう?『変態の洞窟』のことは?」
「「!!」」
俺とジークが驚いた。それと比べて
「え?変態ですか…?」
「何よそれ…?」
「ヘンターイ?どんな人がいるのー?」
3人中2人が引いていた。そりゃそうだよな。
「あら?あなた達は知らないのですか?」
「まあ、こいつらはまだ始めてから日が浅いからな」
「あのー…変態の洞窟とは…?」
「変態って言っても変な奴のことではなくて体が変わる方の変体な」
「あっ、そっちなのね。良かったわ」
何が良いのかが分からないが、少し安心しているようだ。
「じゃあ、何がヘンタイするの?」
「まあ、その辺の説明も含めて久しぶりに講義の時間とするか」
3人に向けて変体の洞窟について説明することにした。
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