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黒の暴食<Black Gluttony>  作者: マーブル
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スターリベル

初めての投稿です。至らぬ点が多々あると思いますが、よろしくお願いします。

 マッシブリー・マルチプレイヤー・オンライン・ロールプレイングゲーム…通称MMORPGはただらなぬ進化を遂げていた。その代表例となるのがこの「スターリベル」である。3ヶ月前に発売され、インターネットではこのゲームの話題で持ち切りである。今一番売れているゲームと言ってもよいだろう。話題となっている一番の理由は、今俺が持っているこのヘルメットである。スターリベルを買って同時についてくるヘルメットを被ると、まるでゲームの世界に入ったような感覚となり自由自在に体を動かせるのである。


 キャッチコピーは「何もかもが自由な世界へ」であり、ゲーム性もキャッチコピー通り自由度が高い。指定されたモンスターを狩りながら、未知なる世界へと歩んでいくのも良いし、生産職になって商売するのも良い。それに見合ったジョブ…この世界の職業もかなり多い。1人のプレイヤーにつきジョブ1つという縛りも無いので、組み合わせを考えたらまさしく無限という言葉が相応しくなっているのだ。


 しかし自由といっても何をしても許されるわけではない。窃盗や強盗の犯罪等はもちろん、性的行為も禁止されており、それらを行ったプレイヤーは永久BANされて2度とゲームが出来なくなるどころか、現実世界で警察にお世話になってしまうのだ。ちなみにこのゲームを始める際には、身分証明書が必要なので仮に捕まって釈放されたとしても、アカウントが作れないのだ。


 まるで第2の現実と言っている人もいるが、俺はそう思わない。絶対に現実世界で見ることができないモンスターがいるし、魔法やスキルでそのモンスターと戦うことが出来る。これだけでもかなりワクワクしたし実際に楽しい。


「しかし本当にどうなってるんだこのヘルメット…」


 部屋の中でヘルメットを持ち、1人で呟く。ゲームが発表されてから事前に予約をしており、発売日当日からプレイをしているが、どういう原理であの世界に繋がっているのか全く分からない。


「まっ、どうでもいいけどさ」


 考えて分かるものでもないしそういうものと思っておけばよいだろう。俺はヘルメットを被りスターリベルにログインをした。







 景色が賑やかな街に変わった。ここはスターリベルの中にある街の1つである。名前は…忘れた。このゲームの街の名前は長い横文字が多く、かなり覚えづらいのだ。例を出すと、最初の街の名前は「ウメデウケネウユマユミア」という名前である。意味が分からない。ゲームを始めてからしばらくいた場所なので勝手に覚えていた。しばらくしてからウメデウケネウユマユミアを出ていき、別の街へ向かった。別の街に着いて街の名前と思われる文字が書いてある看板を見た。その時から俺は街の名前を覚えることを諦めた。略称もあるようだが、プレイヤーによって呼び方が違っており、インターネットの掲示板では、日々これに対する熱い議論が行われている。もちろん俺はそんなくだらない議論に参加するわけもなく、その街を2つ目の街と呼ぶことにした。ちなみに今ログインした場所は3つ目の街である。


 ログインして数分歩き、大きい広場にある噴水の近くで腰を下ろした。いつもの待ち合わせ場所である。一見するとデートの待ち合わせに見える状況であるが、実際に来るのは…


「おっ、ロジャー来てたか」


 1人のガタイの良い男が声をかけてきた。


「お疲れ、ジーク」


 俺はその男に返事をした。ロジャーとジーク…それが俺らのニックネームである。ロジャーという名前は…特に意味は無い。いつもゲームで使ってる名前を今回も付けただけだ。ジークも同じような理由と言ってた。そんなものだろう。


「今日はどうする?」


「んー、特に決めてねえな」


「だろうな」


 ガハハとジークは笑いながら言う。


「まっ、いつも通り何かクエストあるか見てみようぜ」


 俺は立ち上がってそう言った。


「おう」


 2人で歩き出し、街にある掲示板を見に行くことにした。




 俺は現在このゲームをジークとペアを組んでやっている。こいつとの出会いは、チュートリアルを終えて初めてのクエストをたまたま一緒に挑戦したというものだ。俺がクエスト対象のモンスターと戦ってる際に回復呪文を使ってくれて、それから一緒に戦いだした。そのモンスターを倒した後、お礼を言って少し話してたら結構馬が合ったので俺からペアを組まないかと誘い、ジークがその誘いに乗ってくれた。それから一緒にログインできる日は、ペアでゲームをプレイしている。


 このゲームは何もかもが自由なので、プレイスタイルは人それぞれだ。ソロでコツコツとプレイしている者もいるし、パーティを組んでいる者たちもいる。それぞれメリットデメリットがあり、一概にどっちが良いとはいえないが、俺はその間を取ってペアでやるのが1番良いと思っている。それに俺たちはジョブの相性も良い。


 俺は「シールドブレイダー」というかなり大きな剣を持って攻撃を引き寄せるタンク職だ。他のタンク職と違い、盾が無い分防御力はやや落ちるが、そこそこの火力を出せる。また俺はスキル面で若干の防御力の低さをカバーしている。純粋な盾持ちタンクでスキル面も防御系のものを取った方が強いという意見があるが、実際にその通りである。ただそれには大きなデメリットがある。とてもつまらないのだ。攻撃を受けているだけで爽快感も無いし、敵のヘイト管理も難しく結果的につまらないと感じるプレイヤーが多い。実際インターネットの掲示板では盾持ちタンクの引退表明と思われる書き込みも多い。それに比べて、シールドブレイダーは戦闘している感があるのでタンク職では1番人気となっている。そもそもタンク職の人気が無いので全ジョブから見るとそこまでの人気では無いのだが。


 ジークは「プリーストモンク」という籠手を装備しているアタッカーであり、回復魔法も少し使えるという中々の人気ジョブだ。純粋なモンクと比べて、攻撃方面はやや劣っている。ただそのデメリットより回復魔法が使えるというメリットが大きく、多くのパーティでサブヒーラーとして採用されることが多い。ジークも性能面で気に入って採用したとか言っていた。このガタイの良い筋肉野郎が回復呪文を使うのは恐ろしく似合ってないが、世話になってるのでそんなことは言えない。


 俺らはこの通りそこそこ火力が出せるタンクと回復もできるアタッカーといった最高の組み合わせと言っても過言ではないペアなのである。


 (マジで色々偶然が重なり嚙み合ったことで生まれたペアだよなあ。)


 なんてことを思っていたらジークが話しかけてきた。


「どうした?見ないのか?」


 いつの間にか掲示板の近くまで着いていたらしい。


「ああ、悪い。考え事してた。見ようぜ」


 2人で掲示板を確認する。



「これにしようぜ」


 ジークが掲示板から一枚の紙を取り出し俺に見せてくる。そこには『ドラゴンナイト討伐』と書かれていた。


「ドラゴンナイトか。良いんじゃねーか?報酬もそこそこおいしい」


「んじゃ決まりで」


 ジークが紙を持って近くの建物内へと入っていく。ここの掲示板や建物内にある張り紙を見て俺らはどのクエストを選ぶかを決める。決めた後はその張り紙を建物内への受付に持っていったら、クエストを受注したことになる。実にシンプルだ。ちなみにここの建物の名前は「クエスト案内所」らしい。


 (運営よ…途中で名前考えるの面倒くさくなっただろ…)


 そう思っているとジークがクエスト案内所から出てきた。


「よし行くか」


 俺たちはドラゴンナイトがいる場所に向かって歩み始めた。






「あいつが噂の…?」


「ああ、そうらしい」


「ペアで討伐難度Aのドラゴンナイトか…すげえな」


 ジークがクエスト案内所を出た後、その中にいた3人の男達が話していた。


「難度Aのモンスターをペアで討伐とかどんだけこのゲームやってんだよ…」


「初めて見たけどマジなんだな…」


「全員100レベルの5人パーティが推奨レベルだろ?どうやって倒しているのか1回見てみたいな」


 このゲームのクエストは2種類ある。1つは納品クエスト。指定したものを納品したらクエスト達成するものだ。プレイヤーのほとんどは討伐クエストから帰った後に、この納品クエストを見て指定されたものがあったら納品するという形をとっている。このように討伐クエストのついでになることが多い。一方、多くのプレイヤーがやっているのが討伐クエストだ。指定されたモンスターを倒して報告し、報酬を貰う。


 それぞれのクエストには発見難度、討伐難度がそれぞれ設定されていて、下はGランク、一番上はSランクとなっている。討伐難度はソロの限界がCランクと言われており、結局ぼっちには厳しい世界じゃないかと嘆いているプレイヤーもいる。普段ソロで活動している人も討伐難度B以降は臨時でパーティを組むことが普通とされていて、ペアで難度Aのクエストは無謀でしかないのだ。しかしあの2人は当然のようにこなしている。


「装備も大体課金か」


「多分な。このゲーム課金してもすぐ強くなれるわけでもないから時間も相当使ってるだろ」


「いわゆる廃人プレイヤーってやつ?良いねえ、時間のあるやつは」


 3人の男達の他愛ない会話が続いている中、近くにいるクエスト案内所の受付嬢は、お前らもさっさとクエスト行けよと思いながら仕事をしているのであった。

ここまで読んでいただきありがとうございます。

忌憚のない意見、感想をお待ちしております。

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