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『元聖女』は『元天才魔術師』と軟禁先に踏み込む 3

 

 厄介になり得た専属魔術師の三人は全員意識を失っていて、しばらく目を覚まさないはずだ。

 とすれば、後はファティアをどこかへ追いやった張本人──ロレッタのみ。


(あの女には、色々と確認しないといけないことがある)


 ライオネルは鋭い視線でロレッタに送った。


「さて、後はお前だけだ」

「ヒィィィ……!!」


 恐怖に飲まれたのか、ロレッタは体を震わせながら、ずるずると後退る。


 おそらく、ライオネルの魔法の威力に恐れをなしたのだろう。

 猛火に包みこまれた専属魔術師はローブとライオネルの慈悲のおかげでそれほど大事にはならなかったが、ロレッタにはローブも、ライオネルに慈悲を向けでもらえる可能性もないのだから。


「ねぇ、鬱陶しいから逃げないでくれる?」


 いち早くファティアのもとに向かいたいライオネルはそんなロレッタのところまで走って向かう。

 そして、ロレッタを壁際に追い込むと、ライオネルはすぐさま彼女の手から手鏡を奪い取って、地面に響くような低い声で問いかけた。


「一応聞くけど、これって対に手鏡に人を転移させる魔道具で合ってる?」

「……し、知らない……!」

「じゃあ、この手鏡は誰からもらったの?」

「し、知らないってば……!! しつこいわね……!!」

「……ふぅん」


 ライオネルに、人をわざわざ怖がらせてその様子を楽しむ趣味はない。

 先程、レオンの専属魔術師の一人を殺したように見せかけたのだって、残り二人の戦意を削いで、いち早くロレッタに話をつけるためだった。


 だから、ロレッタがここで手鏡について知っていることを話すのであれば、必要以上に脅かすつもりはなかった。


(けど、この女を懐柔して話を聞き出す暇はないし、そんなことをしてやる義理はない)


 相手はファティアを苦しめた張本人。彼女の生きる希望だった母の形見であるペンダントを奪い、聖女の力さえも奪った女なのだから。


「……ファティアはお前みたいな最低な女でも、可能な限り傷付けずに済ませたいみたいだったけど」

「は? な、なによ急に……っ」

「俺は、ファティアほど優しくないよ」


 ライオネルはそう言って、右手に水魔法の応用の氷を作ると、それを刃のような形に変えた。


 ロレッタは目をぎょっと見開き、口を大きく開いた。


「……! なっ、何をするつもりよ……!!」

「正直に話すまで、この氷の刃でお前の顔に傷を作ってやろうかと思って」

「いっ、いやっ! やめて……!!」


 氷の刃の切っ先にロレッタの頬の近くに持っていけば、彼女の目にはじわじわと涙が溜まり始めた。


 そんなロレッタにライオネルは一切同情することなく、言葉を続ける。


「ああ、氷がお気に召さないなら、さっき俺が彼らにやられたように、風の刃を作ってあげようか? なんなら髪の毛も切ってあげてもいいし、顔だけじゃなくて体ごと切り刻むのも良いかもしれないね」

「……あっ、あっ、やめ、やめて……っお願い……っ」


 ロレッタの頬にツゥ……と涙が伝う。


 ライオネルはロレッタの涙を見て、苦虫を噛み潰したような顔を見せた。


「ファティアも今のお前みたいに何度も頼んだはずだよ。ペンダントを返してほしいって、何度も、何度も……っ。それなのに、お前はそれを聞いてあげたわけ……?」

「あ……」


 ──ああ、腹が立つ。本当だと言わんばかりの、目を見開いたその顔。


 自分はファティアの望みを聞いてやらなかったくせに。何故自分の望みだけは叶うと思っているのだろう。


「……実は本気で傷付けるつもりはなかったんだけど、気が変わった」


 ライオネルは手に持つ氷の刃を振り上げる。 

 そして、それをロレッタの顔に向けて振り下ろそうとした、その時だった。


「……っ、いやっ、やめて、おねが……っ、言うから……っ、言うからぁ……!! この手鏡は、レオン様にもらったのぉ……!!」


 ──ピタリ。

 ライオネルは振り上げた腕を一旦止めてから、ゆっくりと降ろす。

 ロレッタを鋭い目で睨み付けたまま、「それで?」と問いかけた。


「あんたの言う通り、この手鏡は魔道具よ……! 人を転移させるね……! 対の手鏡を持っているのはレオン様で、私はレオン様の命令に従っただけなの……! 仕方ないじゃない……! レオン様の命に従わなきゃ、私も家族も死刑になっちゃうんだからぁぁぁ!!」


 それからロレッタはボロボロと泣き始めると、膝から崩れ落ちる。


 ライオネルはロレッタに対して一切同情の気持ちは湧かなかった。

 けれど、手鏡のことについての確認ができたため、手に持っていた氷の刃を消してから、ロレッタと目を合わせるためにしゃがみこんだ。


「……そう。これからお前がどんな目に遭おうが、どれだけ辛い目に遭おうが興味はないけど、脅すような真似をしたことは悪かった」

「えっ……」


 これは、ファティアへの贖罪だ。

 ファティアが平和的な方法を望んでいたのに、ロレッタに対して脅しという方法を使った自分への、けじめの言葉だ。


(ごめんね、ファティア。……すぐに助けるから、無事でいて──)


 それからライオネルは立ち上がると、ロレッタから奪い取った手鏡に魔力を注いだ。

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