プロローグ
「おーい、彰人~」
「ん?」
「ほい、忘れもん」
「あ、教科書…ありがと」
帰りのHRが終わり、さっさと帰ろうと思い、校門を出ようとした時だった。
後ろから俺の名前を呼びながら俺の教科書をブンブンと振り回している親友。
どうやら忘れ物を届けてくれたらしい。教室に戻るのが面倒だったから取りに戻らなかったなんて言えないね。
そんなことを考えながら、俺は忘れ物を届けてくれた親友と一緒に帰る。
親友とは家が隣同士だから親友兼幼馴染かもしれない。というか絶対そうなんだろうな。
俺と親友は、ゲームの話や「あの子可愛くね!?」と言われて見る女性の話やたわい無い会話をしていると……
「あ、なぁあそこに犬がいねぇか?」
そう言って親友が道路のど真ん中を指さした。
指さしたところにいたのは、まだ生まれて間もないであろう仔犬だった。
俺は動物が大好きだ。特に犬とか猫とか。
そんな大好きな犬が、ましてや子犬が車に轢かれそうになっている。
こんなの放置できるわけがないのだ。
俺は学校の鞄を親友に投げ渡し、急いで走った。
なんで急ぐかって?信号無視の車が突っ込んできているから。
これがトラックとかなら車の下の空間があるから仔犬ぐらいは轢かれないが、車高が低いのだ。
多分子犬でも轢かれちゃう。
そして俺は車がぶつかるギリギリの所で、子犬に覆い被さった。
仔犬を一瞬で抱えて白線の中に入るのは難しかったから最善の手だと思う。
そんなことを呑気に考えていると、全身が軋んだ。
車が突っ込んできたからだ。
俺にぶつかった勢いで車は速度が落た。
だが、俺は衝撃が強すぎて意識を失いかけていた。
隣では親友が俺の名前を呼びまくっていたけどそれももう聞こえなかった。
俺は抱えた仔犬を意識を手放す瞬間に見て、しっかり動いているのを確認した。
(無事だった。仔犬を助けたんだから自分のことはよしとしよう)
そう考えて俺は意識を手放した。
~~~~
(ん………ん…?)
俺は意識を取り戻した。
目を開ける前に、ここは病院か?って思ったけどどうやら違うようだった。
風で木が揺れる度にチラチラと太陽の光が俺に差し込んでくる。
そして手で感じるベッドシーツのすべすべした感じではなく、動物の毛のようなふわふわした感触。
そのふわふわした感触に顔以外の全身が覆われているようだった。
疑問に思い、目を開けるとそこには__
『目が覚めた?』
俺の顔を覗き込んでくるめちゃくちゃ大きい狼?だった。
その狼は俺のことを温めていてくれたようで、俺の全身はこの狼に包まれていた。
物凄くふわふわ、もふもふの毛並み。触り心地が良すぎる。
(ん…?喋った…?)
俺は触り心地が良すぎて、この狼が喋ったことを完全に忘れていた。
『主?大丈夫?』
「え…あ、大丈夫だと思います」
心配そうに俺の顔を見てくる狼。
その狼は、青い瞳に真っ白な毛並みを持っていた。なんだろう。北欧神話に出てくるフェンリルみたいな感じだった。
「え…っと、俺何も理解できてないんですけど…」
『え?神様から説明受けなかった?』
そう言って頭を傾ける狼。あ、すっげぇかわいい。
まぁ今は一旦置いといて…
神様っていうと多分俺はネットで流行ってる異世界転生っていうのをしたんだろうな。
それでありきたりな神様からの説明を普通だったら受けるはずだけどなんらかの手違いで俺は説明を受けてない…と。
こんな感じだろう。
「多分受けてないですね」
『あのダメ神……まぁいいや。えっと、じゃあステータスオープンって言ってみて。そうすれば自分のステータスがわかるから』
一番最初に何かをボソッと言ったが俺には聞こえなかったので放置しておく。なんか聞いちゃいけない言葉だった気もするから。
まぁそうじゃなくて…ステータスっていうとなんかゲームとかで見るような奴なんだろうなぁ。
とか考えながらやってみる。
「【ステータスオープン】」
俺がそういうと、ありがちな半透明のウィンドウが出てきた。
そこにはこう書いてあった。
【ステータス
名前 犬飼 彰人
性別 男
年齢 5歳
種族 狼獣人(人間寄り)
Lv 1
HP 4000/4000
MP 3000/3000
スキル 武術lv 1 身体強化lv 1 体術lv 1 魔術lv 1 言語理解 アイテムボックスlv 1 創造lv 1
称号 異世界転生者 神狼 フェンリルの主人】
うん。色々突っ込みたいところがある。
いや…俺獣人なの?
そして獣人って身体能力がえげつない種族だったよね?普通に魔法も使えるの?まぁ身体強化もあったけども。
というか年齢だよ。一番大きいの。なんだよ5歳って。俺17だったんだぞ。まぁいいけど。
次に称号の中にある、神狼 フェンリルの主人という称号だ。何だよこれは。神って文字がついてるってことは、この手触りのいい狼は神ってことか?
『色々聞きたそうだね?僕に聞いてくれれば答えられるものは答えるよ』
俺がうーんと唸りながら考えていると、見かねたフェンリルが教えてくれると言い出した。これは絶対聞いた方がいいよな…