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彼がいない日の過ごし方

作者: 葉色

目が覚めた私は時計を見て、大きな欠伸をする。

昼過ぎか…。春眠暁を覚えず、とは言うものの、さすがに寝過ぎてしまった。

大学生の彼はとっくに家を出て講義を受けていることだろう。

んー、と伸びをする。凝り固まった身体が解れて気持ちいい。

私はもう一度欠伸をして、居間に向かった。





居間に行くと机の上に私用のご飯があった。彼が用意してくれたみたいだ。

私が昼に起きると予想してか、一食分だった。

さすが、分かってらっしゃる。

ご飯は魚。昨日と同じやつ。別に手抜きだとは思わない。忙しい朝に用意してくれただけで十分だ。

私は有難くご飯を頂いた。




さて、お腹もふくれたしこれから何をしようか。

今後の予定は無い。

彼が帰ってくるのは夕方。それまでは私一人だ。

もう一度寝てしまおうか。

食後の睡眠はとても魅力的だ。

畳に寝そべる。太陽で温まった畳は心地よい。

そこで少し考える。

最後に外出したのはいつだったっけ?

最近は寒さを理由に外出を避けてきた。

このままだと太ってしまうのでは……?

……………。そ、それはまずい!ただでさえ痩せてるとは言い難い体型なのに。

彼はどんな体型がタイプだっただろうか。彼と3年間一緒に住んで体型に文句を言われたことはない。が、これ以上太ったら何を言われるか分からない。

もしかしたら食事制限をされるかもしれない。彼のおいしいご飯が食べられなくなるのはとても辛い。 

外を見る。

今日は日も出ていて暖かい。まるで私に動け!とでもいうような散歩日和だ。

く、仕方がない。今日は散歩をすることにしよう。




裏口の隙間に身体を滑り込ませて外に出る。

花のような若葉のような春特有のにおいが暖かい風に乗って私の鼻に運ばれる。

とてもいい匂いだ。

たまには散歩も悪くないかもしれない。

気分が良くなって歌を歌う。

最初は小さく歌っていたが、だんだん大きくなっていく。

まぁ、人もいないし問題ないだろう。

「あらあら、かわいらしいねぇ。」

私を追い越しながら歩くおばぁちゃんに微笑ましい目を向けられる。

聞かれてた!?

恥ずかしさに悶えるが十秒後には、まぁいいか、と開き直ってまた歌を歌い始める。

あてもなくふらふら歩いていると、家と家の間にまだ通ったことのない道があるのを見つけた。

この辺りの道には詳しいつもりだったんだけど。

よぉし、暇だし行ってみるか。




道を抜けると、そこは公園だった。

もう使われてないのだろう。草は伸びっぱなしだし、遊具は錆びついている。

落書きの残る滑り台や小さなスコップが放置された砂場を横切り、ブランコにとびのる。

ギギギ、と軋む音がして少し焦るが、壊れる様子はない。

私は思ったより軽いのかもしれない。

風に揺られてブランコが揺れる。揺り籠みたいだ。

暖かな陽気と緩やかなブランコの揺れが私の眠気を誘う。

今寝たら気持ちいいだろうな。でも、運動のために外に出た意味がなくなる気がする。

悩んだのは一瞬だった。


私は結局寝ることにした。




寒さを感じて目を覚ます。

日が落ちて景色が随分変わっている。

思ったより寝てしまったみたいだ。

そろそろ彼が帰ってくる頃だろう。

私は彼が帰ってくるときはなるべく玄関で出迎えるようにしている。

間に合うだろうか。

私は足早に公園を出た。




近所の子供たちへの挨拶もそこそこに家に帰ると、

彼はまだ帰ってきていなかった。

よかった。何とか間に合ったようだ。

玄関で鍵を開ける音がする。彼だ。

私は玄関に向かった。

私が玄関についたのと彼が家に入ってきたのは同時だった。

私を見て、彼の顔が緩む。


「ただいま、ミケ。」




「ニャァーー」



尻尾を振り、私が愛想よく答えると彼はふわりと笑う。

この顔が私はとても好きだった。


愛想を尽かされないようにしよう。

そう考えながら、私は彼に駆け寄った。


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