向こう側の世界
なんにもなかった。
もう、なんにもなかった。
向こう側はなんにもなかった。
だろうなとは思ったけど。
真っ白と真っ暗が存在してるだけの世界。
それは以前食べたドーナツの真ん中に似ていた。
どうやら自分が最後だったらしい。
すべてがなくなったのは、
正直ちょっとホッとした。
世界で痛い思いばかりしていたから。
吸われる恐怖とも これでおさらばだ。
もう、恐くない。
安心して消えられる。
世界も、きっとこれでよかったのだ。
ある日神さまが
空にぷすりと針を刺したように
突然穴が出現した。
黒い太陽に見えたけど
それはブラックホールのように
命を消して 吸って 奪っていった。
死んでいくのもいいじゃないか。
消えていくのもいいじゃないか。
そんなふうに、
今は思う。
世界は 広くて
世界は 脆くて
世界は 壊れて
世界は 消えた。
突然世界が終わることだってあるよ。
最期に浮かんだ言葉
生まれて初めて聞いた言葉みたいに
あったかかった。