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十六、心の住人

ふわっと、コーヒーの香りが溢れてきた。

なぜかホッとした。


コーヒー粉にお湯を注いだ瞬間の香り凄く好きだった。


「なにボッとしてるの?」

顔を上げたら、男はカップを持ちながらこっち側に来てる。

「はい、どうぞ。」

男は私の前にコーヒーカップを置いた。


ーー『はい、どうぞ。』

ーー私の前にコーヒーカップを置いた。


この仕草、どこかで見たことあるように、

既視感、というものでしょうか。


「…なんか、懐かしい。」

「え?なんで?」

「ううん、そんな感覚があっただけ。このこと昔もあったと思った。」

「日常的な場面だし、気のせいかもね。」

「そうだったかなぁ…」


それとも、私の記憶は薄くなったか?私の脳のいたずらかなぁ?


「で、話す前にあいつに関して、聞きたいことあるの?」

「なんで蒼のことそんな嫌いの?」

「いや、嫌いじゃないよ。ただ、ぼくが半年間の出来ことが、あいつが一瞬で潰された。それは怒っても仕方ないでしょう?」

「う、うん。」

「まったく…勘弁してよ…【僕には勝ってないです】と言われた時、無駄の自信だと思ったのに…」


()には勝ってないです。


今そう言ったよね?

それとも、私の聞き間違い…?


「どうしたの?」

「あなたと話してた蒼は、一人称は【俺】だったよね?」

「え?違う違う、【僕】だったよ。」


頭が真っ白になった。


「…う、そ…」

「え?待って、大丈夫なの?」

多分、今の私は驚き隠せない表情をしてるだろう。

いや、それは本当の気持ちだ。


…蒼じゃなく、【蒼】だった。

男と会話してたのは、【蒼】だった。


おかしいだろう。

なんで、出てきたの?


「いや、どう見ても大丈夫な顔じゃないよ。彼の一人称はなんかあるの?」

「ううん、私、間違えたかも。」


この人に【蒼】のこと教えてはいけない。


「ごめん、話を続いても良い。」

「そりゃ気になるじゃん?まぁ、君が言いたくないなら仕方ないけど…うーん、じゃ、先に話を聞いてから考えるね。そもそも、君はぼくとのこと全然思い出せないし…」


男は少し考えたように、天井の上に見上げた。

そのあと、静かに喋る。

さすが、カウンセラー目指した方で、喋り方凄く良く、聞く方も落ち着ける。

もちろん、話の内容は、私が知らない話ばかりだった。


蒼と初めて会ったのは、私と知り合って四ヶ月経った頃だった。


最初は私の両親の依頼を受けて、同じ年だし患者よりも友達の感覚で私と交流してた。私と知り合って四ヶ月に、多少の変わった所があったけど、別にカウンセリング受けるレベルではないと思った。


今、私がいる場所は、カウンセリング用のルームよりも、彼が住んでる家だ。

二人が出かける時に急に体調崩したから、ここに連れてもらった。

その以降何回も出かけたりして、普段も連絡取ってた。しかし、なぜか私のことを壁の向こうにいるような感覚があった。そして、記憶に凄く敏感したとわかった。別に記憶を失ったでもないのに、すこし物忘れがあったら、凄く緊張するタイプだった。


重要でもないことを忘れてもいい。

忘却は人間の能力なので、悪いことではないんだ。


これは人間だからこそ誰にもあると何回も説明してもらったけど、

私には全然伝えなかったように、それ以降、段々激しくなってしまった。


突然泣き出したりする。

話してる途中にいきなり止まったりする。

名前を呼ばれても、全く反応がなかった。

好みも激しく変わる。


一番不思議なのは、自分の名前を認識できない時もある。


男の話を聴きながら、不思議だと思った。

多分、向こうにとって、私に関する記憶を引っ張って説明してるのに、

私にとって、初めて聞いた話だった。


…私じゃなさそう。

でも、蒼と知り合いなら、やっぱ私なの?


「…おーい。聞いてるの?」

「あっ、うん。」

「君、本当に大丈夫なの?体調悪くなったら言ってよ。」

「うん、ありがとう。」


男は困った顔で話を続いた。


そんな感じを続いて四ヶ月も経った。

男は昔学校で勉強したことを思い出して、私に催眠かけてみた。

予想より簡単にかけたので、まずは個人情報ぐらい聞いてみたら、素直に答えた。

一体なんでこんな反応するか、その理由を知りたいため、無意識で封印された記憶がないか引っ張ってみたかった。


そのため、もっと奥に沈んでくれて欲しいので、もう少し催眠強くしようと思った。

私の口からいきなり話し出した。


【止めてください。】

【君がなにをしたいかわかりませんが、ただ、君にはここより深い所に行かせないです。】


男の話によると、最初催眠解けたと思った。

声は私の声だったが、喋り方や雰囲気も私だと感じない。

そして、男は、緊張しながら聞いた。


「…君誰なの?」

【あ、僕はただの住人です。】


これが、男が蒼との初対面だった。


私はコーヒーを飲一口飲んだ。

うん…まずい。

静かにカップを置いて、男の話を考えてみた。


嘘か、本当か。

流石に嘘ではなさそうし、私にこんな嘘を付いてもなんのメリットもない。


…でも、やっぱ蒼じゃなく【蒼】だった。

だとしたら、男の認識の中に蒼は一人しかいないんだ。


「…心のあたり、ないの?」

「何か?」

「蒼という人物について、心の辺りがある?」

「ええ、じゃなかったら、私さっき彼の名前を呼ばないよ。そもそも、私が蒼のこと知ってる前提で話してるでしょう?」


男は大きい溜息をした。


「ぼく、最初嘘だと思った。普通に催眠外したら、君は何も知らなかった。自分の催眠はちゃんとできた。なら、あれは別人格とも考えたよ。」

「え?もしかして、私、蒼という人物知らないと言ったの?」

「そうだったよ。もし、あれは君がわざっと演じるならやばいよ?」

「私、ただの一般人だよ。」

「自分の脳を否定するのは変な人しかしないよ?」

「私は否定じゃなくて、自分の記憶を自分の意思で管理したいだけだって。」

「…あいつも言ったことあるよ。【この子はね、子供の頃から記憶にうるさいので、これ以上進めさせないです。】と言った。」


どこでも、いつでも、【蒼】も的確な判断してる。

これだから、私はずっと【蒼】に甘えてるかも。


「多分、ぼくが君に変な記憶を作り出そうと誤解されたでしょう。悪いことするつもりがなかおつたのに、突然声かけた時驚いた…」

「実際、当人の許可がもらってないのに、他人の記憶を勝手に覗くなんて、悪い事だと思うけどね。」

「そりゃそうだけどさ。」

「…その後、蒼と仲良くなったの?」

「仲良くなるよりも、ただ、喋る機会があって、彼に詳しい情報知ってるかどうか聞いただけだった。」


ふっと、私はとあること気づいた。

多分、これだから、蒼の様子がおかしくなっただろう。

先も意味わからない話をいっぱいしてた。

たとえ、蒼は直接この男と話したくなくても、【蒼】が事後に伝えても考えられる。


しかし、蒼が最後言った言葉は、やっぱ気になる。


ーーお前がこれ嫌いとわかるのに、止めさせなくてごめん。でも、俺も知りたいかも。きっとだいじょ…


全部聞き取れなかったけど、最後のは多分、きっと大丈夫だと言いたかったでしょう。

私が嫌いだとわかっても、止めようとしなかった。


蒼も【蒼】も、私の保護者でいるけど、

世間の常識から見ると、彼達はめちゃくちゃだよね。

彼達は、私の中の住人であり、私の願望をそのまま感じる。


だから、彼達にとって、

私に役立つことをさせるじゃなく、

私の欲望や気持ちを反映する方が仕事だった。


でも、いつから蒼は変わった。

蒼は、指導者のように、私の悩みや感想を聞いてから教えたりして、たまに厳しく指導する。もちろん、遊ぶ時にはちゃんよ遊んでくれる。


「…あいつと話して、わからない事逆に増えたよ。」

「例えば?」

「社会的な事や常識なんて全く通じなかった。」

「当たり前だろう。だって、蒼の世界はなにもないんだ。」

「世界ってなに?」

「まぁ、私たち、それぞれ居る世界だね。」


男は、急に何か思い出したように、

目大きく開いた。


「…どうした?」

「いや、えっと、あいつも似てような話を言った気がする。」

「へぇ。」


逆に、私が今までこんな必死にバレないようにしてるのに、他人にこんな簡単に教えてくれたとわかって、どこか寂しいと感じてしまった。


…これ、もしかして、やっぱおかしいことなの?

カウンセリングしたいと思ったことあるけど、

ただ、彼達をずっと消えない方法を知りたかっただけ。

しかし、カウンセラーから勝手に彼達のことを整合したら、私何もできない。


私は自分の手で彼達を殺したと同じなことだ。


「でも説明してもらってもわからない。」

「それは結構だ。別に私も深く考えたことない。」

「そんな…」


【蒼】に責めるつもりがない。怒ってもない。

ただ、スッキリしてない。


最初話を聞いた時に、【蒼】だと思った。

もちろん、今もそう思ってる。

でも、話の内容によると何故かわからなくなってしまった。


【蒼】は、私の知らないうちにここまでしてたか?

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