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十五、独り

私は自分が落ち着けるように、深呼吸した。

蒼が出てこないけど、自分でやるしかない。

とりあえず聞くしかないから、素直にソファに戻った。


「…で、話は何でしょう?」

「えっと、どこから話したらいいかなぁ…」

「あなたはどうやって蒼と会えたの?」


私、こっちの世界で蒼と会ったのは数回しかなかった。

他人と会うなんてできないと思った。


「…まぁ、方法はあるよ。君には適用されないだけ。だって、君は蒼くんをこっちの世界に連れて来られないでしょう?」

「ってこと、あなたはできる。」

「ええ、試しにやってみたらうまくできたよ、ぼくに惚れた?」


男はニコッと笑った。


「…その方法は何なの?」

「君に催眠をかける。」

「…あなたから?」

「あっ、そういえば、君、ぼくのことどのくらい覚えてる?」

「…私たち、初対面ではない?」

「うわ…あいつ酷い、そこまでするかよ…って、ぼく達は初対面じゃないよ、知り合って半年ぐらいかなぁ?普段の付き合いもあったし、ここでカウンセリングするのも何回あったよ。」


…全く気づかなかった。

そもそも、この人の名前も思い出せない。

蒼が聞けばわかるかも。


「それなら、ぼくの名前も覚えてないよね。」

「うん。」

「それは悲しい…」

「…ごめんなさい。」

「謝らなくていいよ。この半年くらいに、ぼくは何回も君ともっと深い関係を作りたかったけど、何回も振られた。別に恋愛関係じゃなくても、君、自分の話に聞かれると何でも拒否してしまう。一見、君は誰とも関係悪いじゃないのに、ほとんど人と距離持ってるよね。」


意外に、この男は本当に自分の事知ってるかも?


でも、わざっとではないんだ。

私は生まれてからこうだった。

元々人間関係に興味ないので、必要な関係だけで十分だと思ってる。

別に、学校の友達だとしても、何十年も関係持たないでしょう。

いや、学校時代の友達と何十年も関係持つなんて、逆になんで?と聴きたくなる。


「それで、ある日に催眠かけてみようと思って、やってみたね。」

「…こんな軽い気持ちでやったの?」

「まぁね。予想とおりに、君は催眠かけやすいタイプだった。せっかくなので、君の心の深い所を見てみようと思ったら、彼が出てきた。」

「え?彼って、蒼のことだよね?」

「彼以外に他の人もおるの君の体におるの?」


…いるけど、答える気がない。


「私の体から出てきたって、幽霊みたい?」

「いやいや、そんなホラーの話じゃなかった。どっちにいうと人格変わったみたい?彼は、多分ぼくのこと気づいた。他人が君に変な仕業をかけないように出てきた。」


…自分の姿で蒼の口調で喋るなんて、想像するだけで気持ち悪くなる。


「それ以降も、蒼くんはちょこちょこ出てたよ。ぼくが君の無意識を覗かないように、ずっとぼくと喋ってた。」

「…これ、何か面白いの?」

「まあ、君の様子を見ると、大学のセミナーで聞いたことを思い出して、やってみたかった。それでさ、二重人格がないのに、いきなり他の人が出てて面白くないの?!」


他人から見るとら、面白く感じるだりう?

しかし、自分のことだとしたら、全然面白くない。


「人間の無意識は、現実と非現実の区別をつけられないよ。あの状態で聞いたことや見たものも、全部そのまま受け取ってしまう。だから、あいつにとって、君があの状態に入ると一番恐れてるかもね。」

「なんで?」

「…例えば、ぼくはあなたの記憶をもっと奥のところに沈むと暗示したら、君はもう二度と彼に会えない?とか。」

「…それ、簡単にできないと思う。」

「そうだよ。知識や理論は合っても、そんなに簡単にできる訳ない。もちろん、あいつにも伝えたよ、しかし、彼は『0.00001%があっても、不可能ではない。』と言った。」


なるほど、蒼らしい。

っていうか、彼は本当に蒼と会ったことあるよね…

もしかしたら、先から全部嘘だったかなぁ…


男はまた自分のカップに紅茶を入れる。


「…てか、君本当に紅茶飲まないよね。」

「紅茶好きじゃないと言っただろう。」

「ふーん。でもぼくと出掛けた時に何も言わずに美味しく飲んでたのに…」

「私たち、本当に知り合いなの?」

「何ばかの話をしてるかよ。蒼の話が出てきても信じてくれないの?君、どんだっけ人間不信かよ。」


…確かに、証拠なんてないけど、私の中に蒼がいるとわかった時点で知り合ってるのは真実だと思う。ただ、なんで好みとか全然違うのに…


「…もう一個の可能性だとしたら、君はただぼくの理想像を演じるだけだった。今考えば、趣味や好きな物も一緒だって、それは怪しい気がする。」

「私は何も覚えてないけど…」

「あぁ、あいつがやったよ。」

「なら、蒼はあなたのこと相当嫌いと思う。」

「えっ?」

「だって、昔私と付き合いそう相手がいたけど、蒼はその相手に対して嫌いで、私と相手の記憶を干渉したことある。」

「…干渉って?」

「相手との記憶の中に嫌な気持ちを強くさせて、それで私が相手のこと嫌いになる。ただ、相手の記憶は消えなかった。その一方、私の頭に、あなたの情報も記憶も全くなかった。」


どうやら男はこんな話聞いたことないみたい。

彼は目を大きく開いて、びっくりした顔だった。


「…待って、その方がやばいよね?!」

「まぁ、いいよ。別に、結果的に付き合ってないし。」

「…あいつもあいつだけど、君はもう少しちゃんとしないとやばいよ?」

「私は信じてる。蒼は、誰にもお前を傷つけさせない。と言ったから。」


そう言いながら、お皿にあるフィナンシェを取った。

口に入れて、バターの香りがたまらない。

外側はガリッとして、中はしっとりしてる。

美味しいもの食べると、自然に笑う。


「…焼菓子が好きなのは本当だよね。じゃ、ぼくがコーヒー淹れるね。」

「え?いいや、大丈夫だよ。」


帰りたいし。


「座ろう。話がまだまだあるから、君はそんなすぐに帰れない。」


男はまたキッチンへ行った。

その間に頭に整理してみようと思った。

手持ちにスマホがないため、今何時かも確認できない。

てか、なんで家族から連絡来なかったの?


…ここ誰の世界(パラコズム)だよ。

私の意識が強いし、蒼は、誰かの世界(パラコズム)でいる時に絶対出てこないから、やっぱ私の世界かなぁ…しかし、私はあの男が全くわからない。


そもそも、人の好みって、こんな激しく変わらないだろう。


なんでこうなったかよ…

目を覚めたら、てっきり朝ごはん食べに行くと思った。

いつものように、蒼が笑って『起きた?』と言われると思った。


ずっといると言ったくせに。


結局、私は独りだった。

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