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十四、初見

ふっといい匂いがする。

この匂い、私が知ってる匂いだ。


切ない気持ちは、体の中に溢れてきた。

この優しい匂いと全然違う。


【ーーーー】


男の子の声だった。

誰が私の名前を呼んだ。


【また泣いてるの?】


映像流れてないまま、声だけ響いてる。

この声、【蒼】だった。


【もう…泣かないでよ…】

【よっし、僕、特別に魔法を教えてあげるか?】


闇に囲われて何も見えないのに、

涙だけ溢れて、目ウロウロになった。


これは、子供の頃の私と【蒼】の記憶の断片だ。


【みんなに内緒してよ。】

【涙が止まる魔法だ。】

【この理不尽な世界を、少しずつ好きになりましょうね】


私、この魔法知ってる。


【僕の名前を呼ぶ。】

蒼の名前を呼ぶ。


そに瞬間、涙腺が崩壊した。

大人になって、まともで泣いたことない気がする。

久しぶり、子供の私みたいに、蒼の名前呼びながら激しく泣いた。


しかし、今回私がどんなに呼んでも、

【蒼】も、蒼も、私の前に現れなかった。


どのくらい泣き続いたでしょう?

重かった瞼が、突然軽くなった。

ずっと目を閉じてたから、光はいつもより眩しいと思った。

視野に入るものは全部ぼやけて見えるけど、3秒後にしっかり見えるようになった。


「あ、お…」

無性にある名前を口に出した。


ここ、誰の世界(パラコズム)だろう…?


私はソファに座ってる。

しかし、実家のソファではない。

清潔感のある空間だ。

白基調で清潔感を出したし、木製の家具で優しい雰囲気も出してる。


栞の世界パラコズムではないんだ。


ここ、一体誰の世界パラコズムなの…


「あら、目を覚めたか?」

突然、ある男性が部屋に入ってきた。


「さてっと、何か違和感がない?…あっ、何か飲む?そんな何時間も経ったし、喉渇いたよね?紅茶入れてくるね、君、ぼくが淹れた紅茶一番好きだと言ったね。」


男は、私の前にあるソファに一度座ったけど、また立ち上げた。


…私、この人知らないし、紅茶飲めないけど?


男は鼻歌を歌いながら紅茶を淹れている。


そういえば、彼はここに入ってから驚いた表情は一切出てこなかったので、私がここにいること知ってるということでしょう…私と顔見知りぐらい?


いや、でも、私と知り合ったら、紅茶飲めないぐらいわかるだろう。

彼が淹れた紅茶が好きだと言い出した時点で、なんかおかしい。


私は、男が戻る前に、もう一回この部屋を見てみよう。

見上げると、ここ天井高いことを気づいた。


…これだから開放感があるんだ。


「頭がまた痛いの?」

男の方に見ると、紅茶を持ってきた。

何回顔を見ても、やっぱいこの人は誰か知らない。


「あっ、もしかして、まためまいがある?ふわふわしてる?」

男は、様子みるために私の顔を触ってくる。

頭が回る前に、私の体が先に反応して、無意識で避けた。


「悲しいからやめて。そんなビクビクしなくてもいいのに…警戒心を持つことのは良いけど、ぼくは大丈夫だって。」

男は少しムスッとなった。

「……ごめんなさい。」

彼が来てから、初めて口から言葉を出たかも。

なんか、自分の声はこんな感じなの?

「はいー敬語禁止だ。」


…なんか、この男、苦手かも。


そう思いながら目をそらして、外の景色を見える。


「紅茶飲み終わったら、外に出てみよう?この焼菓子は近くにあるケーキ屋さんで買ってきた…」

男の声を聞こえるけど、話の内容は全然理解できない。


…そうか、蒼に聞けば良い。


もし会ったことあるなら、蒼はわかるはず。


男はまた焼菓子の話を続いてる。

私は話を聞いてる風にして、バレないように小さい声で言った。


独り言のように、蒼の名前を呼んでみた。

しかし、何もなかった

たとえ世界パラコズムに移動しなくても、私が名前を呼ぶたびに、蒼は絶対応える。


でも、何もなかった。

…なんで?


「へぇーあいつが応えないだけでこんな茫然な顔するんだ。」


ビクッ。


あいつ。


動揺を隠せながら、男の目を見つめた。

男は満面の笑顔になってる。


「やっとぼくを見てるよね。あいつは凄いなぁ…」

「何を言ってますか?」

「もぅー敬語使わないでよ。ぼくは君と仲良くしたい!」


この人、先から意味不明な話しか話せないの?

でも、彼は蒼のこと知ってる?

いや、そんなはずがない。

蒼を知ってる人は、私しかいない。


「あいつって、誰のことで…なの?」

私はゆっくり話した。

「うん?君、さっき蒼を呼ぼうとしたよね。」

「……」

「あっ、でも安心ください。君は呼んでも彼は応えないから、無駄に呼ばなくてもいい。ぼくとお茶しながら話そう。」

「…なんで…」

「え?これはどれについて聞いたか?お茶する気分じゃないか?…じゃ、お菓子だけでも食べよう…」

「…私は紅茶飲めない。」

「あら、ぼくの認識には、君はコーヒーより紅茶派だけど?」


いや、それはあり得ない。


「一口でも飲んでみない?」

「…いや、大丈夫だ。紅茶の話はもういい、私が聞きたいのは…」

「なんで蒼が知ってるか、と聞きたいよね。」

「うん。」

「君が言ったじゃない?」


…この人のテンション、なぜこんな高かったの?


てか、おかしい。

友達ともかく、知らない人に蒼のこと言うわけない。


「まず、君はそろそろそんな警戒をしなくていい。ぼくは何もしないから。」


男は紅茶を一気飲みした。


「ぼくは、お前を助ける人だよ。うーん、ナイトと呼ぶかなぁ?」

「…私、助けを求めないけど?」

「あぁ、それは確か、君の両親から頼まれた。だから、この件に対して、君の記憶は正しいと思う。」

「どういうこと?」

「娘の様子はちょっとおかしいから、治療しなくてもいいけど、彼女の話でも聞いてくれない?って。」


…おい、おい。勝手に病人扱いしないでほしい。


「…ってことは、あなたはカウンセラーみたい人だね。」

「正解。ぼくのこと思い出したか?まあ、思い出したよりも推察できた、だけかななぁ?」

「私は病気ではないし、治療も要らない。ここで帰る。」

私はきっぱりで言って、ドアの方向に歩き出した。

もう訳わからない会話を続けるよりも、今一刻も早く帰りたい。

蒼に会いたい。


「気になってるじゃない?ぼく、蒼くんのこと知ってるけど?」

「……」


私は止まった。


気になると決めってるだろう。しかし、その前に…


「おお!やっぱり気になってるよね。」

「…前を呼ば…で」

「ごめん、ちょっと聞こえないから、もう一回言ってくれない?」

「蒼の名前を呼ぶな。」


もう、なんで誰でも勝手なことしてるかよ。

私は不満に彼の顔を睨んだ。


「ふーん、いいよ。ぼくは説明するから、こっちに戻って来なさい。」


私、一体なにをしてるでしょう。

何を求めてるか。何を避けたかったか。

私が動いてないせいか、男はまた声かけた。


「はぁ、ごめん、嘘をついた。君から、蒼くんのこと教えてなかった。」

「じゃ、どうやって?」


…なんでそんな嘘をつく?いや、それ、嘘をつく意義あるの?


「彼が自分で言ったからね。」


あぁ、私、頭が痛くなる。

ねぇ、蒼。


君なんで出てこないの?

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