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十一、【蒼】という人物

「綺麗にまとめたんだね。」

『それはどうも。まぁ。これからの話の方が重要だけどね、この家の存在価値は何だろうか知ってる?』


私は、逆に自分の存在価値はなんだろう。


『あの子の主張から見ると、ここはお前のために作ったよ。』

「…え?」

『一つは、お前が「みんなのこと忘れたくない」と言ったから、彼はここを作り出した。たとえ、お前がいつか忘れてしまっても、ここに来てみんなの名前を見る度に記憶を引っ張り出せると信じてる。』


私は言葉を出せない。


「関連付け」が出来たら、以降その「関連付け」で記憶にたどり着ける。

【蒼】がこの仮説をわかったのは、私が教えたからね。


あの頃の私は、【蒼】にひどい話を言ってた。

みんなと出会えなかったら、別れもない。

どうせ忘れるなら、最初から何も知らない方が良い。

どうせいつか無くなるなら、最初からくれないでほしい。


頭の中に【蒼】の返事を響いた。


【大丈夫ですよ。僕に任せて。】


彼の【大丈夫ですよ】は、

私にとって世の中のどんな薬も効果的だよ。

そのひとことだけで、安心になる。


「…願ったことなら、なんでも叶わせるなんて…こういうことなの…」


私がみんなのこと忘れたくない。


しかし、私は自分の力でコントロールできない。だから、【蒼】に甘えた。

そして彼は私が願ったことを叶わせるように頑張ってた。


『…先も言ったけど、忘れるのは悪いじゃない。しかも、お前がみんなのことを見捨てたとも思わない。』

「…ここまでしてくれたのに…」


結果、私も忘れた。


『あぁ、仕方ないけど、でもここはそのための世界(パラコズム)だった。』


ボソッと言った蒼を見ると、なんで笑顔してるのに泣きそうと見えてしまった。


「…そういえば、ここ、【蒼】の部屋があるの?」

『ないよ。てかーお前さ、彼はお前にとってこんな重要だったら、彼との繋がりは部屋一つになるわけないだろう。』


いたずらように、蒼から頰をつねられた。


「…うぅ。」

『俺だよ。』


ビクッ。


一瞬頭が真っ白になった。


『お前にとって、一番忘れたくない気持ちだろう。一緒にいた日にちが長い分で、そんな簡単に繋がり出来ないよ。』


…私、もしかして聞いていけないことを聞いたじゃないか?


『言ったでしょ。この家は、お前が今まで出会った子達との繋がりで構成させてるんだ。だから、この家にしか居られない俺も、その一つだった。』

「そんな…」


言葉がうまく出ない。

だって、こうすると蒼は…


『だから、あの子はお前に恨んでない。お前が自分よりも大切にしてるこそ、姿を消した。恨んでるなら、お前が別れる時に出てこないだろう。』


『ここは、この世界(パラコズム)は、彼がお前へのプレゼントだった。』


予想外の言葉。

今までずっと怖かったかも。

その怖さや不安が、この一瞬で溢れてしまった。


【蒼】が自分のためにそこまで大事してくれたから、嬉しくて泣きそうになった。

しかし、蒼がずっとこの家に閉じ込めるのは、私のせいだと気づき、申し訳ない気持ちがいっぱいで泣きそうになった。


多分、へミアがいなくなった日よりも、【蒼】がいなくなった日よりも、

今回一番泣いてたと思う。


私が泣き止むまで、蒼は私の背中を撫でてやった。


『最初で会った頃の話だったけど、あの子とどこで会ったか覚えてる?』

少し落ち着いたから、蒼は話した。


「…ええ、真っ黒な世界(パラコズム)だった。」


本当に真っ黒だった。

なんでも溶け込んだように、何もなかった。

あそこで【蒼】と話したり遊んだりしてた。


『あれはさ、元々俺たちの世界(パラコズム)だったみたい。』

「え?」


思わず顔を上げた。


『だから、ここを作り出したのは、確かにお前のために作った。その一つ目、お前がみんなとの繋がりを保管する所だった。それで、もう一つ…』


蒼はいつものように私の頭にポンポンした。


『彼はお前と遊ぶ場所が欲しかったよ。』


【蒼】はずっと一人だった。


蒼と同じく、どこにも行けないので、遊ぶ所も限りになった。

しかも、蒼と同じく、私としか喋れないので、普段喋る相手もいなかった。

だから、寂しくないの?とずっと聞いてた。


「私、と…あっ…そうなんだ…」


蒼たちは、他の世界(パラコズム)に行けないんだ。

彼達は私がいる時にしか他の世界(パラコズム)に見えない。

【蒼】はずっとあの真っ黒な所にいたから、彼にとってあれは世界(パラコズム)だった。

それで、私がおかしいと言ったから、他の子達の部屋を参考した。

見たことない場所が作れないから、私と一緒にみた部屋でここを作り上げた。


『だから、彼はお前を可愛がりすぎたって。』

「何を言ってるの…」

『まぁ、実際はそうだろう。』


色んなこと気づいた。

毎日生きてて、新しい経験をして、新しい趣味出来たりする。

その中に、色んな人と出会って生きてる。


中学時代に仲良くした友達も、中学時代に出会ったイリスも、

記憶ほとんど薄くなった。


高校時代に仲良くした友達も、高校時代に出会ったヘミアも、

記憶段々薄くなった。


大學時代に仲良くした友達も、大學時代に出会った栞も、

いつか忘れてしまうかなぁ。


もし、私が栞のことを忘れた日が来たら、

今度こそ、蒼が消える日がくるだろう。


「蒼。」

『うん?』

「…【蒼】もそうだけど、蒼もずっと私がいる場所しか行けないでしょう?」

『ええ。』

「今は夜しか時間がないけど、昔、蒼が寂しくないの?と思って声かけたよね。授業中にも、仕事中に声掛けたりするけど、蒼も『俺は平気だから、気にすんな。』と返事した。」

『…いきなり俺との思い出話をする?』

「今までどうやって過ごしてるの?。」


私はそう思った。


私がいる世界(パラコズム)も含めて、多分蒼との関係が一番深くて、良い関係だと思う。

実家暮らしだから、もちろん家族といる時間が一番多いけど、

家族の次に長く付き合ってるのは、蒼だった。


けれど、【蒼】の話とこの世界(パラコズム)を聞いた後に、妙な感覚があった。

彼達の物語が、今までも見ようと思ったことない。

一緒にいたから、見なくてもわかってる。


しかし、私、案外に何もわかってない気がする。


『…へぇ…』

「あっ答えにくいや教えたくないなら、直接言っていいよ。」


私に教えなくてもいいと決まれば、私はそれでいい。


『いや、やましい事じゃないし、いいと思う。』


あの子はきっとお前に教えないだろう。

蒼は小さな声で囁いた。


「…いいの?」

『ちょ、先に聞いたのはお前だけど?』

「そうだけど、蒼が素直に答えると予想してなかった…」

『まあ、最初はそのつもりが無かったよ。だから、今まで教えたことない。でも、お前は、「信じてほしい」と言ったから、今度信じてみたいと思う。』

「…なんか、プレシャーが…」

『ふっ、大丈夫だよ。』


蒼は、先からずっと私の隣に並んで座ってる。

正直いちいち座り方を変わるのもめんどうくさいと思うから、

お互いの顔を見えなくていいだろう。


蒼がそのまま喋り始まった。

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