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とある魔法学園の問題児  作者: 冬空さんぽ
第一章:入学編
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第四話 入学式

冒険者ギルド ギルド証:ドックタグ ランク毎にタグに使われている金属が違う

A白金B金C銀D銅E石 見習いは木製 ○○専属冒険者は専属化前のタグと専用の制服を着用する


錬金術師ギルド ギルド証:イヤリング ランク毎にイヤリングの土台に使われている金属が違う

A白金B金C銀D銅E石 DランクからEランクは簡素なリング状。CランクからAランクは……



 忙しなく入寮した翌日。

 俺は入学式に参加していた。


 当学園の制服に初めて袖を通す。

 長袖のシャツにネクタイ。

 下は紺色のスラックス。

 それらの上からローブを羽織るように着用する。


 学園指定のローブも一応存在するが、使っている生徒はそんなに多くない。

 生地はそれなりに良い物だし、着心地も良さそうではある。


 ただ、付与魔法がほぼ付与されていないそうなので、よっぽど実家の財政が傾いていない限りは入学祝いとしてそれなりのローブを親が贈るのが半ば伝統になっているそうだ。


 俺は長年愛用しているローブをそのまま羽織っている。

 ワインレッド色の表地に、金糸でレイドホース帝国の国樹である宇宙樹と錬金術師ギルドを象徴する釜を掻き回す羽妖精が描かれている。


 帝都でAランクとして認められた際にギルドから贈呈された物だ。

 五年も愛用しているにも関わらず染みひとつ見当たらない。

 これは傷や汚れから生地を守る高度な<品質維持>の付与魔法が付与されている為だ。

 それ以外にも着用者に外気の変化・魔法や衝撃への各種耐性を授ける<守護天使の加護>や専用の魔道具には劣る物のポケットには<空間拡張>の付与魔法が付与されていて、ちょっとした小箱と同程度の収納スペースが存在する。

 錬金術師ギルドの最上位メンバーに贈るにふさわしい機能性に富んだ一品と言える。




 パーティーホールは一年生から十年生までの全生徒を迎え入れて余りあるほどの大きな一室だった。

 入学式の為に飾り付けられた室内は暗闇に包まれている。

 等間隔に置かれた空飛ぶランタンからの仄かな光のみが室内を照らしている。


 ホールに入る前に教員から新入生は壇上に近い席に座るよう指示を受けた。

 特に否やも無かったので最前列のど真ん中に座った。


 定刻に近付くにつれて人が増え、知り合い同士のささやかな雑談が時折聞こえる。

 俺は知り合いゼロなので黙って壇上を見据えていた。

 やがて定刻になると会の進行を務める教員が拡声魔法で声を響かせながら開会を宣言した。



 職員紹介、来賓紹介、生徒会長の言葉など欠伸が出そうな進行が続く。

 その後に学園長の話が始まったが長い長い。

 冒険者ギルド・アトリア支部の副ギルドマスター「禁呪詠唱のゴーシュ」も喋ったらこんな感じなのだろうか? 

 生憎風の噂でしか聞いた事が無く、実際にその「禁呪(説教)」の威力を体感した事は無いのだが。

 この校長の話と同程度の威力なら毎度聞かされるエリーを始めとしたギルド職員の辛さは相当なものなんだろうな。

 俺は心の中で面倒な上司を持ったギルド職員たちに合掌した。


 恐ろしい程長い学園長の話を要約すると「お前らを十年掛けて教育するが、大成するかどうかは結局ひとりひとりの努力次第だぞ」という当たり前過ぎる話だった。


 ただ、これは当校の校風を正確に示した内容なので入学直後のこの時期に改めて語ったのだろう。

 勘違い(・・・)をすると痛い目を見るのは誰の目にも明らかな授業計画なのだから、ここで念を推して注意喚起を行うのは必然とも言えた。


 永遠に続くと思われた学園長の話が終わると司会をしていた教師が閉会を告げた。


 新入生以外は速やかにホールから退出した。

 新入生はホールに居残り、壇上に居る教師の下へ本を受け取りに来るようにと指示された。


 すぐさま新入生が全員立ち上がり、ズラッと一本の列と化して並ぶ羽目になった。

 魔法学園とは何だったのかと思えるほどに原始的な配布方法だった。

 魔法で配れと最初は思ったが、教師の様子を伺いつつも思惑に見当をつける。

 恐らく、これは顔合わせの意味も含めたセレモニーなのだ。


 当学院は現在進行形で配られている分厚い本──シラバスを元に個人個人が好きな授業に参加して単位を取得する単位制の学園である。


 そうなると必然新入生が一同に会する機会は貴重になる。

 教師は資料だけでしか知らない学生の顔や雰囲気を間近に見て知る事が出来るし、生徒にとっては右も左も分からない当学園で頼っても良い教員の顔を至近距離で見て覚える良い機会になるのだ。


 となるとこの後の流れは必然目の前の教師の自己紹介だろうな。

 恐らく彼女は新入生を学年単位で管理・担当している教員なのだろう。


 自分の番になり間近で教師と相対する。

 長い艶やかな黒髪を結い上げた上品な印象の女教師だ。

 鋭い目つき、スッと伸ばされた姿勢から厳格な印象を受ける。

 五十代前後と思われる見た目だが、全身から放たれる覇気がまだまだ現役。

 むしろ今こそ魔法使いとして脂の乗った最盛期なのだと伝えている気がする。


 そんな彼女と目線を合わせ軽く会釈をする。

 彼女の視線に一瞬驚きと怯えが見えたのが少しだけ気になった。

 恐らく気のせいだとは思うが……



 人を殴り殺すのに最適な質量を持ったシラバスを受け取り席に戻る。

 それほど間を置かず全員に行き渡ったようだ。


 その様子を確認した先程の教員が壇上から声をあげる。

 数多の学生に教鞭を取って来た熟練魔法使いの深みのある声がホールに響き渡った。


「改めて入学おめでとう、新入生諸君。私はヒストリア・ブルーローズ。担当科目は『魔法史』。魔法という技術が黎明期から現代に至るまでどのような変遷を遂げ洗練されてきたかについてを君達に教える事になる。詳しくは手元のシラバスを後で確認するように。必修科目だから全員受講する事になる」


 新入生から「うへぇ……」という声が洩れる。

 恐らく座学があまり得意ではない生徒達だろう。


 当学園は単位制の学園ではあるが当然必修科目も存在する。

 『魔法史』もその中のひとつというわけだ。

 うめき声をあげた生徒を目線で制しつつもヒストリア先生は話を続ける。


「そして、私が今年入学したあなた達新入生を担当する学年担当でもあります。学園生活で困った事があれば何でも聞くように。……恋愛以外なら貴方達が満足する答えを返せる自信があります」


 先生がニヤリと笑うと生徒達からも笑い声が洩れた。

 第一印象で感じた規律に厳しい印象とのギャップが笑いを誘う。

 意外とイタズラ好きなのかもしれない。


「今週一週間は体験授業の週となります。本来当校は週に三日授業を行いますが、この期間中だけは今日を除いた六日間授業を行っています。シラバスだけでは伝わらない授業の様子を知る良い機会なので、積極的に参加し一年間受講する選択科目を熟考するように。……これで新入生へのシラバス配布の会は終了になります。疑問点がある生徒以外は自由にして構いません。しばらく壇上に居ますので疑問点がある生徒は壇上に来なさい。以上、解散」


 ヒストリア先生が解散を告げると同級生達はざわざわと騒ぎながらホールから去っていった。

 壇上に向かう生徒は誰も居ない。俺以外は。


「……トット・レッドラインくんですか。どうしました?」


 ヒストリア先生は若干間を置いた後務めて冷静に問い掛けてきた。

 何なんだろうな?この態度は。

 俺は若干訝しげな目で彼女を見つめてしまっている事を自覚しつつも彼女に質問した。


「学生は研究室を借りる事が出来る筈ですよね? 何処に行けばその申請をする事が出来ますか?」



 

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