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レンド  作者: 粟田三輝
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004 扱い方





「治癒できるって聞こえたのか。成功だね」

アルサ君が言った。もはやテレパシーだな。

 全力で走ったため判断力が鈍ったこともあるが、能力が見えるという彼の話を信用し過ぎた。まさかナイフ持って襲って来るとは思わないだろう。しかも押し倒された。切れたらどうする。

「あ、大丈夫。これは切れない模造品ですから」

ぼくの不安を察してくれた。アマネが慌てて近づいてきた。

「びっくりしたじゃん! そんな危ない事して」

ちょっと目が潤いつつも心配してくれている。どぎまぎしている。そして衝撃的な発言をした。

「アルサ君、指が切れちゃってるよ。手当てしないと」

あれ、切れてるの? 安全ではないのか。死にかけた。

「ちょこっと強く押しただけだから」

「でも血が出ちゃってるよ?」

「レイのためだもん、いい」

アルサ君が意地張ってる。精神年齢って瞬時に下がるものなのか。二人は言い争っている。

 確かまた能力得たよな。回復できる。手を差しのべる。アルサ君は分かっていなさそうだ。一言。

「手を繋いで回復出来るよ」


 それからしばらくはその状態だった。二人がこっちを見てくる。アルサ君は隣からたまに無表情の上目遣いを送っている。何を考えているか見当も付かないので、迂闊に目を合わせられない。アマネはアマネで後ろからニヤニヤしている。何故なのか聞いた。だって親みたいにしてるんだもん、と返ってきた。あまりそんな風にはしてないけどなあ。彼女が一風変わった嗜好を持っているのかもしれない。

「あ、ポスター作ったんだよ。レイ」

アマネが急に話を振ってきた。

「学園で一番目に付く所に貼ったから、どんどん人が来るかもね」

なんてことしやがる。ぼくの労力がインフレーションしてしまう。シータ君に実験では会えなかったけれども。あれ、でもこきつかうと宣告されたよな。

「そういえば、ぼくを実験に利用するのはどうなったんだ」

「いない時はいいよ。それよりポスター見に行かない?」

いいのか。それにそうだな、確認しておきたい。その案に賛成した。


 予想した通り、学園の中心部にあった。許可さえあれば誰でも何でも貼っていい場所だ。だが、なんだこの胡散臭い物は。他に比べてアクセントが効いてる。誘い込もうとする意図は分かるがどこかインチキしてそうな雰囲気がある。どんなインチキかは考えられないがそう捉えてしまった。アルサ君とはまだ手を繋いでいる。

「これがもし好評だったら、掲載場所増やそうと思う。いいでしょう?」

嘘だろ、増やすんじゃねえ。戦乱まっしぐらになる。オブラートに否定をしてやろう。

「あまり目立つのは良くないと思うぞ」

「そうかな? ホームページも作ってもらったけど」

手遅れだった。作ってもらったのか。誰にだろうか。

「誰に作ってもらったの?」

「電子工学専攻の友達。初めてだけどやってみるって。すぐに出来てた。持つべきは善き友だね」

押し付けですね。快諾してくれたようでよかった。

「その子も能力が気になるみたいで、今度来るってさ」

それに積極的な姿勢だ。将来有望。


 会話が終わり、アルサ君にちょんと叩かれた。今まで黙ってたから存在を無視していたのに。繋いでいない手を何かの形にした。ああ、耳を寄せろってことか。後ろの休憩席を横目に見ながら小声で言われた。沢山の人が座っている。

「あそこにいる女の人がこっちをチラチラ見てる。僕らに話があるんだと思います。アマネさんに誘ってもらいましょう」

軽く頷き、アマネにその旨を伝えた。そしたら一直線にその女性のもとへ歩いていった。

 二人は話をしている。アマネは堂々としているが、その学生はおどおどとしていて怯えたようにも見える。けれど陰湿ではなさそうだ。二人は対比していてなんだか面白い。熊とりすを画面に収めた感じだ。しばらくして決着が付いたらしく、手招きされた。

「拠点に戻ろう。アマネさんがそういってる」

「了解」

アルサ君に指示されたが、従っておこう。ちなみに拠点とは能力クラブの資料がある、主な活動教室のことだ。空は暗くなり始めた。


 はい。という訳で今四人で教室にいます。相変わらずアルサ君と手を繋ぎっぱなしです。不思議な状況。おどおどしていた子は状況を把握しきれていない様子。どうにかするためこう言った。

「まずは自己紹介しましょう。レイです」

「アルサ」

「アマネ、だけどもう知ってるよね」

皆が続いてくれた。そして残りは、

「ええと、チルロっていいます。相談があって来たんです」

という。果たして何を持ち出すのか。アマネが先に教えてきた。

「チルロさんは自分の能力が全く分からず、様々な所を歩いており、どうしようかなと悩んでいたところ、ここにたどり着いたらしいです」

なんだそのゲスト紹介みたいな話し方は。

「あの、私たまに体がちょっと光るんです。よくわからないんです」

チルロさんがそう言うと、アルサ君が論述した。

「真面目に聞いてください。僕は人を見ると能力が分かります。そのうえで、あなたの能力は危険です」

チルロさんは失望した目をする。まだ早いよ。

「あなたが不安定な心境の時に、その能力は発動します。なので常に落ち着いて行動してください」

そういうとチルロさんは姿勢良くした。それで変わるんですかね。


「他に気になることはありますか?」

いきなりアルサ君の質問コーナーだ。ひとつ手が挙がった。

「チルロさんどうぞ。」

「はい、アルサさんとレイさんは親子ですか?」

は?何故そうなった。光ることはいいのか?断言しよう。

「違います」

「やっぱりそう見えるよね! 仲間がいてよかった!」

アマネがチルロさんの手を掴む。宝くじにでも当たったのではないから、喜ぶな。文句を言う。

「この歳でいるわけないって。だよなアルサ君」

振り向くとアルサ君は照れている。何で、何でだよ!

「もう手を繋がなくていい。どうせ治らないし」

アルサは手をぱっとほどいた。窓の外を注視している。手の傷は癒えていない。能力が上手く使えなかったか。


 チルロさんに問う。

「能力について他にないですか?」

「ないですよ」

がっかりして見える。何を期待してたの?

「あ、でもその、ここは誰でも自由に出入りできるんですか?」

学園の出入りか。確かに他の学園は特定の日や、学生や先生ぐらいに立ち入りが制限されている。アマネが答える。

「いつでも誰でもね」

キラキラした瞳で見るな。少女漫画みたいだぞ。

「ありがとうございます。おかげで色々分かりました。帰ります」

さっと帰った。あれ、どっかで見た光景だ。

「僕たちも帰ろう」

アルサ君に促されて、みんな帰った。自転車が欲しいな。

 しばらく三人で同じ道だったので、朝の事件についてを駄弁った。それに今日は自己の能力についてよく理解できた。敵に遭遇すると発動し、様々な効果を発揮する。そして、敵がいなくなると使えなくなる。以上の事。その日は疲れていてすぐに眠った。


 次の日、朝早くから連絡があった。アマネからだ。ホームページを経ていくつかの依頼があったらしい。意外と効果あり。アルサ君もぼくに頼みがあると言ってたらしい。ぼくはまだアルサ君と連絡できる状態じゃない。それでアマネを通しての伝言だろう。今日は簡単に、おにぎりひとつを買ってすぐに向かった。

 場所は先の地下室。既に二人は着いていた。何故早い。ぼくは筋肉痛があるのだが。そして依頼人らしき人物も。アルサ君はぼくを見るとすぐに始めた。

「では。自身の能力について何か知っていますか?」

赤っぽい髪の毛のおじさんが返事をする。

「ええ、最近は楽しいですよ。能力とやらが役に立ちましてね。炎が出せます。ライター程度ですが燃料も必要ないですから便利ですよ」

随分知っている方だな。凄い。だが、アルサ君は違った。

「そんなに分かるなら、来なくてもよかったのでは?」

当たりが強い。その考えも分からなくはないけれど。

「いえ、推測混じりですから、はっきりさせたいんですよ。お願いします」

「分かりました」

アルサ君はそのおじさんに触れた。そしてすぐに離した。謎の動きだが意味があるんだろう。一呼吸おいてから話す。

「では、実際に着火させてください」

おじさんは人差し指を立てて火を出現させた。指先に乗っている。仄かな光はそれだけを保っている。静寂。ただただ静かだ。アマネは記録をしている。

「手を変えてもらえますか?」

アルサ君の要望で、おじさんは次に左手を出した。だが、何も現れない。


 それからアルサ君の要求に応えて結果を得る事の繰り返しだった。足はどうか。右手の小指はどうか。薬指はどうか。火傷はするか。意識を集めて消火できるか。別の指に移せるか。体力を大幅に消費するか。火に特殊な効果はあるか。そんなことを言っていた。

 結果分かったことは、右手の人差し指がライターのような状態になり、エネルギー消費は見られない。左手や別の指ではできず、風が強ければ簡単に消える程度の炎だ。レベルが4と24であること等だ。

 以上のレポートのような紙を、アマネはすぐにコピーして持ってきた。おじさんは嬉しそうだ。アマネは最後に、毎回するらしい提案を持ち出した。

「あなたの能力の情報を使用してもいいですか?」

「他の情報が漏れないなら構いませんよ」

おじさんはすぐに帰っていった。そしてひとつ、アルサ君の言葉。

「こんな調子で試すんです。レイはできる?」

一応できると返事した。


 入れ違いで誰かが入ってきた。アマネが徐に立ち上がる。そしてその人物に向かって発言する。

「クロウ久しぶりだね」

「そうね、しばらくでしたってね」

アマネは次にこちらに向き直った。

「私の友達のクロウです。ホームページ作ってくれたのはこの人」

なるほど、例のとばっちりを食らった人か。よくぞ来てくれた。

「後で友達も来るので、その点よろしくね」

クロウさんはそう言った。そうするとすぐに誰かきた。ぼくと同じ年齢くらいの男の人だ。何かを喋り始める。

「ここで調べられるんだって? 今からお願いできるか?」

意外に図々しい奴だ。彼がお友達ですか、何か勿体ないな。アマネも同感らしく、思ったことをすぐに話した。

「その方が友達?」

クロウさんは首を横に振る。どうやら違ったらしい。

「とりあえず始めよう」

アルサ君の声でみんなは動き始めた。


 その後、調査は順調に進んでいった。男の人はたまたまポスターが目に映り、暇潰しを兼ねて来たという。クロウさんの友達もそのうちに到着した。彼らの能力をまとめて調査した。

 まず、クロウさん。簡潔に言えば、炎の色を変えるだけだ。先ほどのおじさんの件で、ちょうどライターがあった。ぼくは必要性を感じないが、ライター持ち係をした。見つめるだけで赤いものはもちろん、青くしたり緑にしたりすることができる。その色を濃くはっきりさせたり、ほとんど透明にすることもできていた。上手く使いこなすことで幻覚は作れそう。本人曰く、めっちゃ疲れるのだと。

 ただし、ここまでの結論に辿り着くのに小一時間。何故なら、途中参加の男の人、ミキの能力が消していたから。つまり消火する能力だ。手をかざすと消えるらしい。手袋越しならあまり使えない。それにしても勝手に実験の邪魔をするなよ。勝手にぼくのおにぎりも食べていたし。お客のじゃねえのとか、来客用な訳がないだろう。自分勝手な奴だ。アルサ君は何かに驚いて自分の手を見ていた。多分、ミキの馬鹿らしさに驚き呆れてしまったのだ。


 そしてクロウさんの友達。結構可愛いのだが、笑顔が半端じゃない。一瞬見惚れたぐらいだ。まあ、それも能力のおかげですと言っていた。笑顔にする、これが彼女の能力。自分にも他人にも効果が及び、己の意思で自在に笑わせる。劇団にいると大いに役立つタイプの能力だ。ごく自然に作れる笑顔も恐ろしい。

 かくして実験終了。やはり身勝手でミキはいつの間にか帰った。本気でただの暇潰しか。どっかにそんな奴いたな。二人もいらない。アマネと友達とその友達は教室に戻り、能力の基本事項を鼎談していた。ぼくとアルサ君は別行動しろと言われた。

 アルサ君はまだ怪我をしている。全く治らなかった。そのことを言及する。

「あのさ、能力今は使えるかもしれない。もう一度手を」

とそこで拒否された。そして、

「今は使えないこと知ってる。僕が一番理解してるから」

なんて言われた。反抗期なのか? 言葉は続いた。

「もう誇示しなくていいのかな。僕の能力分かりましたよね」

かなり正確なものだとは知得した。

 そのとき、一人の男が目の前に現れた。教授だ。





ちなみにクロウの友達の名前はアリサといいます

ややこしいので注意してくださいね

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