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第三章 第四話

 小太刀と脇差を仕舞い、鍵を掛けてからシャワーを浴びる。

 髪を拭きながら時間を確かめると十八時を回っていた。

 お勤めは終わっているだろうが、夕食が近い時間帯だ。

 押し掛けるのも迷惑が掛かると判断して直接行くのは諦める。

 問い合えず「時間が出来たら電話を欲しい」とメールをしておく。

 連絡が来るまでの間に食事を済ませるべく台所に移動して料理を開始する。


 食事を済ませた所で棗からメールが来た。

 向こうの夕食が終わったら電話する旨の返信に短く返事をして、その間にPCで今日の検証結果を簡単に纏めた資料を作る。

 とは言え、資料と言っても箇条書き程度の代物でしか無いが。

 取り敢えず完成した今日の検証データを纏めた表を見直していると電話が掛かってくる。

「おう、待たせたな」

「いや、無理言って済まない、少し知恵を借りたいんだ」

「研究職のお前に貸せる知恵と言われると怖いんだが?」

「もしかしたら完全に棗のフィールドなんじゃないか? って考えてるんだ」

「ん? 具体的には?」

 そこで今日の検証テーマと結果をまず話し、モンスターの地域差異を説明する。

「ん~、世界的に死者と言うか、まあなんだ、アンデッドの類がモンスターとして出てる事は聞いていたが、そこまで厄介だったか……」

「うん、少なくとも動画で見た限り、欧米ではそこまで手古摺ってる印象は無いんだよ。日本と言うかアジアは一際倒しにくい感じでね」

「それで水晶や数珠は武器として効果的で、鉈とか普通の武器は非効果的だと分かった、と」

「で、水晶で出来た数珠だと相乗効果が有ったって点と、日本でニホンオオカミが出現した理由が今後のヒントに成りそうだ、と見てるんだ」

「まあ、結論から言うとお前が試した数珠や水晶に特別な効果が有ったとしたら、除霊浄霊のイメージが効果を発揮してるんだとは思うが、塩と火打石、刀と翡翠以外神道と言うより仏教密教側だな。厳密には霊では無いんじゃないか?」

「やっぱりそう思う? 欧州でも米国でもモンスターが出現しても別に墓が荒らされた形跡は無いらしいから……やっぱり」

「やっぱり?」

 言葉を切って考え込む僕に棗は聞き返した。


「これは僕の憶測でしかないけど、迷宮はその土地や地域の記憶を吸い上げてモンスターを創り出したって事に成る」

「だから国や地域で違いが出るって言いたいのか?」

「うん、変遷の前、狼の頃のデータを調べてみたんだけど、日本ではニホンオオカミ、絶滅種。欧州ではタイリクオオカミ、既存種。米国ではダイアウルフ、絶滅種、が出現していたらしいんだ」

「お前が言いたい事は分かった、それで今回出現しているモンスターはどうなんだ?」

「除霊浄霊がどんな事をするのか分からないけれど、イメージとして霊にダメージが出ると思われている物が弱点と言うか、効果的な武器って事に成る可能性が高い、と」

 そう言うと棗が唸って沈黙する。

 ここからは棗の知識に頼らざるを得ない。

 オカルトと宗教は同じでは無いが、隣り合わせの存在だと思うからだ。

 実際は、オカルトと言うよりファンタジーかSFの様な気もするけど。


「刀と数珠や水晶は同じだけの効果が有ったって事だな?」

「うん、そうなるね」

「で、水晶で出来た数珠はもっと効果が有った、と。それなら最も効果的な組み合わせを検証するしかないだろ」

「神道的に何か有る?」

「ん~、後は鈴位だな、見た事無いか?」

「御神楽の時の、あれ?」

「そうそう、神楽鈴な」

「他には無いかな?」

「まあ、後は身も蓋も無いけど、神社で武器をお祓いして貰うか、だな」

「確かに、身も蓋も無いけど一番分かり易いね」

「一度刀だけじゃなくて、お前の現代具足もお祓いした方が良いかもな」

「うん、来週にでもお願いするかも知れない」

「分かった、宮司に話しておく」

「よろしく」

 そこからはお互いの近況報告を軽くして電話を切った。

 棗からのアドバイスで色々と考えたが、次の土曜日に一通り試してみる事にして今日は休む事にする。

 寝る支度を済ませてベッドに潜り込んで目を閉じる。

 真っ暗な中、脳裏には幽体をどれだけ効率良く倒すかを考えながらゆっくりと眠りに落ちた。

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