クマめっ!
そうと決まれば!
左右の森を見回す。
あれじゃ、高すぎて届かない・・・
あれじゃ、細すぎて折れちゃいそう・・・
あれだと、最初がイケても次が高すぎて続かない・・・
アレだ!
全力ダッシュで当たりをつけた木まで近づき、全力ジャンプで枝に飛びつく。
「木登り名人のシキ様、なめんなよー!」
ほいっ!ほいっ!なろっ!うんしょっ!
どう?この華麗な木登りさばきは。
きっと、周りに観客がいれば、今頃拍手喝采のスタンディングオベーションってくらい、我ながらスイスイ登れた。
下を見れば、そこそこの高さ。
何メートルかは分かんないけど、自宅の2階のベランダよりも高いくらい?
え?分かんない?
こんだけ登れば、さすがのクマも手が出せないっしょ。
てか、クマって木登りできるのか?
ようやく追いつきましたか、クマさん。
にしても、間近で見ると、なんてまぁ狂暴なお顔なんでしょ・・・
てか、目が全部真赤じゃん。
なにあれ?目ん玉ないの?
全身白毛なのに、目が異様に赤いからよけいに怖い・・・
「グルワアァァァーーーー!!!」
おおぉっ!!!
雄叫びで、体がビリビリ震える!
ただの空気振動が、ここまで響くの!?
・・・
念のため、も少し登っておこ・・・
うわ、こっち、めっちゃ睨んでるわぁ・・・
ま、そのままいつまでも睨んで遠吠えしてればいいわさ。こんだけ木々が密集してみれば、枝伝いに移動できそうだな。
ガシッ
お?
なんか、木が揺れる・・・
ガシッ
ん?
!!!
登ってきてんじゃん!
クマって木登りできんの!?
てかさ、木登り中のクマなんて、ただの的じゃんね。あんだけデカきゃ、外さねっての。この角度なら顔面直撃でマナストライク当てられよ。
「くらえっ!」
見事顔面に命中して、そのまま背中から地面に落っこちていく。
おぉ、揺れる。
どんだけ体重があんのさ、あのクマ。
消えないってことは、まだ息してるってことかぁ。
あ、起き上がった。
めっちゃ普通そうなんですけど、顔面に直撃もらって背中から受け身なしで落っこちたのにダメージないのかな?こんな時ゲームとかなら、HPバーみたいのが頭上に掲示されてて、ダメージの有無とか一目瞭然で、あとどのくらいで倒せるとか判断できんのにね。
あ、また性懲りもなく登ってきたよ。
再度、顔面直撃のマナストライクをプレゼントすると、さっきと同じように落下していく。
うん、やっぱり知能は低いようだね。この隙に、次の移動先を確保しながらクマから逃ねば。
残りMPは、130か。
1発25消費するから、あと5回は撃てるとして、でもそうするとMPが5しか残らないから、その時の自分への影響がどうなるか分からない以上、ちょっと怖いな。4発撃っても残りが30かぁ。ま、3発までは大丈夫だと思いたい。
クマを見ると、またのっそりと起き上がりこっちを睨んでいる。
顔面には、特に目立った傷跡は見られない。
マジかぁ・・・。マジで効いてないのかなぁ・・・。
クマが、再び大音声の咆哮を放ってくる。
ふん、いつまでも吠えてりゃいいわさ。ここは逃げるが勝ちだね。大木が林立してるから、枝も十分太いし、このまま枝伝いに移動してけば、そのうちクマも諦めるっしょ。時間が経てばMPも回復するし、とにかくは時間を稼がなきゃ。例えクマが登ってきても、その間に別の木に移っちゃえば、さすがにこの枝を移動するのはあの巨体には無理っしょ。
そうと決まれ・・・
ドガァーーーッン!
おわわゎっ!
突然の大きい揺れに足場を踏み外しそうになる。
あっぶね!あーっぶねっ!
今度は何だよ!?
クマを見れば、相変わらずの形相でこっちを睨み続けてる。目ん玉ないから分かんないけど、雰囲気的にそう思う。
あ、目反らした。
お、離れてくよ?諦めたくれたのかな?
そうだよね、そうだよね。それが利口だよ。俺なんかに時間を費やすよりも、その辺のウサギでも狩ってる方がよっぽど確実だよ。ウサギいるか知らんけど。
ん?こっち向きなおしたよ?忘れ物ですか?
え?なになに!?なんで急に走り出したの?
そんなダッシュして、その振り上げた右手は何をする気で・・・!?
ドガァーーーッン!
メキメキッ
「どわぁぁっ!」
木が再度大きく揺られる。
さっきの正体もこれだったんだ!?
てか、今メキメキって音が聞こえましたけど!??
ただの張り手で、この大木が悲鳴を上げるって、一体何の冗談ですか!?
てゆーか、次の一撃にこの木が耐えられるのかな・・・