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遭遇

 

 ずっと同じ光景だったのに、前方に黒い点が見える。


 あれは何だ?


 ふと、走り出したい衝動に駆られたけど、ちょっと待った!


 焦らない、焦らない。


 森の中に潜んで、ゆっくりゆっくり確認しに行こう。


 何があるか分からないしね、用心に超したことはないよ。


 だんだん、なんだか見えてきたけど、あれば馬車かな?幌がついてるな。

 傾いて見えるけど、車輪でも外れたのかなぁ?


 ・・・・・


 人が倒れてる!


 う~ん、この距離だと細かい状況まではまだ判別できないけど、あれは人だよね・・・


 なんか分かんないけど、悪い予感しかしない・・・

 関わりたくないけど、一本道だし、今更来た道を引き返すってのもどうかと思うし。


 最大限、警戒しながら近づいてみるしかないな・・・


 そろり、そろり。


 あぁ、やっぱり人だね・・・

 ピクリとも動かないけど、地面に広がって染み出てるのは・・・血・・・だよね・・・

 幌もボロボロだし、明らかに何らかの襲撃にあったって感じだな・・・


 ここでいつまでもジッとしてる訳にもいかないし、腹を決めるか。


 あれ?

 足が前に出ないな?

 どうした、これ?

 ビビってるのか、シキ!?

 男だろっ!!!


 ・・・・・・・・・・・・


 まぁ、待て。落ち着き給え。

 一旦、深呼吸しよう。


 すぅ~、はぁ~。すぅ~、はぁ~。


 よし!


 ・・・・・

 次は屈伸運動してね!

 いっちに~、さんし、ご~ろく、しっちはち!


 ・・・・・


 剣はあるな!

 魔法は6発まで打てるぞ!


 よし、いくぞ!俺!


 ゆっくり静かに立ち上がって、それはもぉ、足音を立てないように慎重に近づいていく。


 ・・・・っ!!!


 幌馬車の前方に回り込んでみると、オオカミに似た獣が2匹。


 1匹は、少女と思わしきそれの内臓らしき臓物に食らいついている。

 もう1匹は、スカートを履いた成人と思われるそれの頭部に食らいついていて、時折、オオカミらしき獣がぶんぶん首をふると、人間と思われる胴体が振り回されている。



 うげぇぇ~・・・・・

 瞬間で吐いてしまった・・・


 しまったっ!


 ゲロを拭いながら顔を上げると、2匹の獣がこっちに意識を切り替える。


 ヤバい・・・


 キラーマウスの時は、無我夢中で剣を振り回したら倒せたけど、もうね、一気にち〇こがちっちゃくなったよ。

 そりや、あんなグロいの見ちゃうとね・・・


 オオカミは、めっちゃグルグル唸りながら、明らかに次の標的を俺に切り替える。

 一匹が左に回り込みだして、もう一匹が右に大きく回り込む。


 キラーマウスは大きさで言えば、小型犬くらいの大きさだったからそこまで威圧感を感じなかったけど、このオオカミは、あきらかに大型犬のもう一回りくらいのデカさがある。


 威圧感、パネェっす・・・


 これはさすがに死の恐怖が全身にビンビンくるね・・・。


 怖ぇぇ~・・・



 でもね、


「マナストライク!」


 左の手のひらに意識を集中する。


 俺は知ってる!

 こいつらは、「ソーサリア・オンライン」の個体名『ハウンド』で間違いない!

 今の俺でも充分、戦えるザコだってさ!


 バックステップで距離をとる。


「お前らごときに、やられてたまるかーーっ!!」


 二匹が同時に飛び掛かってくる。


 ピキーン!


 左から飛び掛かってきたハウンドに手のひらを突き出すと、「キャイィーーンっ!!!」と叫びながら突然軌道を後ろに変えて吹っ飛ぶ。


 ガリッ!

 ッ!!!!


「あげゃぁあああーーーっつ!!!」


 痛えぇーーーーー!!

 マジ痛ぇええええーーー!!!


 ちょ、マジ痛い・・・

 ぐぬぬぬぬ・・・

 シャレにならん・・・



 うわっ!?

 脇腹、抉れてんじゃん!!

 ヤバ、なにこの血の量・・・


 魔法を当てようと左のハウンドを意識しすぎて、右への対処が遅れた・・・



「・・・ぷちヒール・・・」


 お!全身が淡く光りだした。

 お!脇腹の欠損部分の肉片が盛り上がってきた!

 ちょっとキモい・・・


 お!痛みが・・・


 いや、激痛変わんない・・・


 しょせん、ぷちヒールなんてこんもんか・・・


「ぷちヒーーール!」


 お!やっぱり重ね掛けはできんだな!

 お!皮膚組織が薄く構築されてってる!

 お!いや、まだ痛ぇ~な・・・


「ぷちヒーーーーーッル!」

 ふぅ~。

 ようやく痛みが我慢できるレベルになってきた・・・



 くそぉーーーーっ!

 話が違えーぞ!

 ゲームの時は、4匹くらいまでなら、1撃も食らわず倒せてたの!


 これがゲームと現実の違いってか。

 くそー、めっちゃ痛ぇー!


 オオカミ野郎がぁ・・・

 クッチャッ、クッチャって、俺の脇腹食ってやがる・・・

 うわ~、なんかちょっと引くわぁ・・・


 あ!もう一匹は!

 お、口から血出して、のたうってやがる。

 あれはもう無視して大丈夫そうだな。


 てことは、マナストライク1発で充分倒せるってことだ!

 さっきから、ちょっと頭がクラクラするのは、血を流しすぎた影響なのかな?

 ん?MPの残りが35か。

 クラクラの影響は、こっちのせいなのか?


 マナストライクの1発が25だから、これならあと1回は打てる。


「マナストライク!」


 1・・・

 呑気に俺の肉片食ってやがる。


 2・・・

 今更、威嚇したってもう遅ぇ~んだよ、オオカミ野郎。


 !


「死ね」





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