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電気使いは今日もノリで生きる  作者: 歩海
第3章エルフの森
96/317

惨劇は悲劇に

今回は少し短いです

また、少し表現がおかしいかもしれませんがご容赦ください

みなつき5しゅうめ???


「ごふっ」


男は口から血を吐き出す。貫いたままの僕の腕にそれらはかかってくる。自分の腕に血がかかってくる感覚を感じながら・・・僕はただ呆然とするしかなかった


「え・・・あ・・・」


さすがにわかる。今の一撃は確実にこの男にとって致命傷になったと。先ほどの攻撃で多分だけど内臓を幾つか攻撃したのだと、そしてその衝撃で幾つか破壊してしまったのだと。いや、もしかしたらこのまま死んでしまうかもしれない。それだけの攻撃を僕はしてしまったんだ。内臓を破壊されて・・・いや、腹をくり抜かれて生きていることのできる人はきっといない


だからこそ、僕は動くことができなかったすぐにでも腕を抜くべきだとわかっているのに、体が思うように動くことができない。こうしている間にもこの男の命の灯火は消えかかっているというのに。


「ミライ・・・」

「・う・・・あ・・・・」


クレアが何か言っているけど全く耳に入ってこない。自分がしてしまったことの大きさを痛感している。僕はどうすればよかったのだろうか。あのとき、あの状況で『電気鎧(armor)第三形態(third)』以外の魔法を使う選択肢がなかったのだろうか


「・・・」

「ミライくん!」


腕を引き抜いた後、ヒザに力が入らなくてそのまま崩れ落ちてしまった。僕の手にはどす黒い血で染まっていた。ポタリポタリと血が滴り落ちてくる。そうだ、リンナ先輩に治療をしてもらおう。先輩の回復術ならきっと・・・きっと、この男の命を救うことができるはずだ。一言言うだけでいい。「先輩、回復術を」と、でもそれだけの言葉を発することができない。


「ガ・・・グフえあ」

「!」


引き抜いた衝撃で男は後ろに倒れる。その際に、フードが外れてその顔が明らかになってしまった。クレアが生み出した火の魔法で、そしてまた月明かりによってその顔をしっかりと見ることができた。そしてその人物は僕らの知る人物であった。


「おじいさま!なんで・・・」


最初に僕らを罪人扱いにした老人だった。昨日森から帰ってきたときにリンナ先輩に声をかけていたことを覚えている。え、あ、と、ということは、僕はリンナ先輩の知り合いを殺したっていうことなのだろうか・・・


「あ、あああ・・・」


別に区別をしたいわけではないが、知り合いとなれば余計に自分の罪悪感が生まれてくる。手が震える。思考がまともにはたらかない


「ぐふっ・・・はあ・・・リンナよ・・・このものたちは・・・・・・の素質があると神託を賜ったのじゃ・・・そして・・・はあ・・・こうして・・・ワシがこのものたちを・・・襲うのも・・・神託のお告げから」

「どうして?おかしいと思わなかったの?子供を襲えだなんて」

「それが・・・神託なら・・わしは・・・それを・・・実行する・・・リンナ」

「なに?おじいさま」

「エルフ里を・・・たの・・・ん・・だ・・」


最後に何かを言いかけて老人は目を閉じた。それが意味することはつまり、この老人が息絶えたということ。つまり僕は、この世界に来て、初めて、殺人を犯したということ


「あ・・・あああ・・・」


いつかはこんなことになるとはわかっていた。覚悟をしていたつもりだった。


「ああ・・あああああ・・・」


でも、現実は非情だ。急に起きた出来事のせいで、僕は今、頭の中はパニックでいっぱいになっていた。


「ああああああああああああああああああああああああ!」


叫ぶ。自分のしてしまったことを打ち消すように。自分がいましたことが何かの間違いであったことを信じるかのように。これは悪い夢だ。きっと、現実ではない。目が覚めたらきっとまだエルフの里で目覚めるんだと、いや、もっと前、こんな里に来ることがなかったのだと信じるかのように


「ミライ・・・」

「ミライくん」


なんて言われるんだろう。リンナ先輩の顔を見ることができない。僕は今、先輩の大切な人の命を奪ったんだから大切な人を失って平常心を保つことができるはずがない。そしてその怒りが僕に向けられてもおかしくない。復讐されるのだろうか。


また、クレアにはなんと言われるのだろう。この世界の住民で、きっと人を殺すことに耐性があるのだとしてもそれでも殺した人をこれまでと同じように友人として扱ってくれるのだろうか。


いや、それだけじゃない。このことがクラスメートに知れ渡ったりしてしまったら、きっと、もう誰も僕と会話をすることがないだろう。僕らは日本人だ。そして日本人が犯罪者にたいしてどんな反応をするのかなんて

わかりきっている。臭いものには蓋をしろの精神で無視されるに決まっている。例えば角先が人を殺したとしてきっと僕だって同じような態度をとるに決まっている。


「あああ・・・・あああああああ」


そんな風にいろいろなことが頭の中を駆け巡ったけれども、ただ僕は、ひたすらに叫び続けることしかできなかった。

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