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電気使いは今日もノリで生きる  作者: 歩海
第2章新人戦編
60/317

僕たちの秘密

???


ここはどこだろう・・・僕は死んだのかな。剣に貫ぬかれたし死んでも当たり前か。じゃあとなると天国かな。僕は日本人らしく?無神教なのでそんなに神様とか信じていないけれどさすがに異世界だし天国とかあるのかな。僕が天国に行くことができるのかといえば微妙ではあるけれども・・・ん?天国って別に善行を積まなくても行くことができるんだっけ?そこらへんのことがよくわからないんだけどどうなんだろう。


意識ははっきりしてる。僕という存在をきちんと把握することができている。あれ?死後の世界って自分の存在を認知することってできるんだっけ?誰か詳しい人教えてくれ。あ、もう死んでいるんだから意味ないか


「そんな軽口を叩けるのなら大丈夫でしょ」


そんな僕にかかる声。あ、これはクレアの声だ。ということはクレアも死んでしまったのか。惜しい人を亡くしたな。


「僕たちは死んでないよ」

「え?」


横を見る。そこにはベットに横に寝かせられているクレアの姿があった。多分。だって暗くてよく見えないからさ。


「まあもしこれが死後の世界っていうのならどうする?」

「それはそれで面白そうだな・・・」


ああ、きっと今僕は生きているんだろう。今更って話ではあるけども生き残ったことを理解したよ。あそこまでの傷を負ったけどどうして生きているのかな


「なあ、あいつはどうなった?」

「わからない・・・でもサリア先輩なら大丈夫だろ」

「そうだね・・・」


沈黙。二人の間に沈黙が流れる。まあ言いたいことはあるんだけどうまく言葉が出ない感じかな


「ねえミライ」

「ん?」


沈黙を破ってくれたのはクレアのほう。ああ、いつも僕は少し遅いかな。こういうときに先に言葉を発せられるようになりたいなぁ


「君には話さなければならないことがあるんだ」


ああ、そういうことか。それなら僕も言いやすいかな


「僕もあるんだ。君にずっと言いたくて言えてなかったこと」

「うん、わかってる。君の生まれについてでしょ?」

「知ってたの?」

「うん・・・でも、ミライの口から直接聞きたかった。友人だから」


そんな風に思ってくれていたのか・・・だからこそ、ごめん。知られていたことには全く驚かないけど。あれだけクラスメートに「紅」って言われ続けて気がつかなかったらおかしいもんね。あ、そうなるとサクヤやミロンさんはどうなんだろう。以外と気が付いていないのかな。それとももう知っているとか。ありそう。二人の所属しているギルドって1と3でしょ?1は青目がいるし3なんてそれこそクラスメートの巣窟だよ


「巣窟って・・・・ははは、君は同郷の友人にも容赦がないんだな」

「そりゃ僕の苦労をことごとく打ち破ってくれたからね」


そんなに回数はないけれどもそれでも僕がせっかくカモフラージュをかねて「ミライ」って名乗っているのになんで紅って呼ぶんだよ。そのせいでグレン先輩にばれちゃったじゃないか。


「ふうん、そうなんだ。他には・・・ないか」

「他って何があるんだよ」


実は僕はこの世界の住人ではありませんでしたってなかなかに重大なことだと思うけどな。それと同じくらい隠さなければならないことってあるのかよ


「まあそうだね。それで、僕のことなんだけど・・・僕もね故郷がちょっと特殊なんだ」

「?どういうことだ」

「僕はね孤児院で育ったんだけど・・・僕の祖先はね『冥』の国の王族なんだ」


『冥』の国の王族だって・・・それって、ということは


「クレア、お前にも名字あるのか!」

「突っ込むところそこ?・・・まあこの世界の人間じゃないから知らなくても当然だよね」


そこからクレアは話してくれた、クレアの過去を。まず、『冥』の国ユートピアについて。いや、ユートピアってあれだろ理想郷「それってアヴァロンじゃないの?」あり、そうだっけ


ユートピアは今は滅びた国だとか。もう何百年も前の話。かつては土地が優れた緑豊かな国だったとか。隣国との付き合いも悪くはなく、良好な関係を築くことができていた。


「ならどうして・・・あ、もしかして魔族か?」

「それなら良かったんだけどね」


ユートピアは魔族の侵攻によって滅びたそういうことになっているらしい。詳しいことを知ろうにも周りの国の人間が事態を把握したときにはすでに滅びてしまった後。何が起きたのか全くわかってない。ただ、ちょうどその頃に魔王が生まれ侵攻が起きていたので魔族のせいだろうってことになっている


「確証はないけど・・・多分魔族だと思う」

「そっか、ん?でもそれだとどうしてクレアの血は・・・」

「それはね・・・ちょっと国家の恥になることなんだけど」


どうやらその時のお姫様が部下の騎士に恋焦がれ、望まぬ結婚をするくらいならと駆け落ちしてしまったそうな、いやそれどんな過去だよ。結果として王族の血は絶えることはなかったけれどもそれを公表すればまた一悶着が起こる。だからそれを隠して生きていた。そして国から持ち出した朱色のペンダントを肌身離さず身に着け、子々孫々受け継いでいっていた。


「王族の血が流れていてももう自分たちはそんなことはないと、普通の庶民だとそう思っていたらしい。「火」の国の外れであまり外部の人間と関わることなくしみじみと暮らしていければそれでいいと」


ああ、お姫様が逃げたのが「火」国ってことかだからクレアの属性も火なのかな。


「どうだろう・・・というかこれは僕が孤児院に匿われたときに持っていた祖先の日記帳を読んで知ったことだから」

「匿われた?」


どういうことだ?こんなことを言うのはあれだけど捨てられたならまだわかる。何かしらの事情があって育てることができずにクレアを孤児院に捨てた。でも匿われたってなるとよくわからない。


「うん、僕の両親はね・・・殺されたんだ『朱雀』に」

「え?」


『朱雀』ってもしかして『麒麟』と同じような神獣だよな。火を司るんだっけ?不死鳥ともフェニックスとも時には迦楼羅、鳳凰と様々な呼び名があるけれどもそういった翼を持った炎の化身。・・・だよね?


「何を言っているのかわからないけど・・・あいつは自分のことを『朱雀』だと名乗った。姿は大きな鳥だったよ。確かに燃えていたけど・・・まあこれは院長様から聞いたことだから」


その『朱雀』にクレアの両親は殺されたらしい。ちょうど襲われているところに孤児院の院長がやってきてクレアだけを転移させて逃げ延びたのだとか。まだクレアが三歳の頃のお話。だから詳しいことなんてまったくわからないそうだ。全部人から聞いた話だからね。


「日記に書かれていたこととネックレス、そして僕の名前からきっと『冥』の国の王族だろうって言われたけど・・・正直わからない。でもはっきりしていることは」


ー僕は『朱雀』を殺す。そのために力が欲しい


そうだったのか。過去を聞いて愕然としたよ


「?どうした?笑わないのか?『朱雀』だなんて」

「笑えないよ・・・僕もね、『麒麟』に出会ったから」

「そうなのか!」


ああ、そして僕もクレアと大体似ているよ殺すとまではいかないけど。あの『麒麟』に一泡吹かせてやる。つーか一発殴る


「ははは、そうなのか・・・じゃあ僕達似たような目標を持っているのか」

「うん、あ、でも僕の一番の目標は『自分を認めたい』んだ」


僕は話す。この世界にやってきてからの最初の一ヶ月のことを。森の中で熊に襲われた時に何もできなかった自分のことを。そして前の世界からずっと、変わりたいと願い、動けていない自分のことを


「なるほどね・・・」

「うん、みんなは僕がいなくても特に何も思っていない。それは構わないけど・・・・少し悲しいんだ」

「まあ気持ちはわかるけどね」


さしあたって、これからどうしよう。あ、そういえば


「クレア、君の名前は?僕は紅 美頼」

クレナイ ミライ(暮れない 未来)か。いい名前だね。僕はねクレア・トリアス・・・なあミライ。悪いけど新人戦、僕が優勝するから」

「?」

「新人戦に優勝すればその報酬として図書館の禁書区域に入ることが認められるんだ。そこで僕は『朱雀』の情報を得る」

「そっか・・・悪いけど、僕も負けられない」


こないだは宣言できなかったけど、今なら言える


「優勝するのは、僕だ」


優勝したからといって何かが変わるとは思えない。でも、きっと、何かが起きるのだろう。自分に自信を持つために何かしらのタイトルがあったほうがいいかもしれない。少し邪だけどさ、人間って『一番』に弱いから。『一番』と『その他』では大きく違う。僕が誰にも声をかけられなくて周りの人たちを観察していて得た結論。僕は『一番』になる。そうすればみんなから認めてもらえる。


「・・・勘違いしてるようだけどさ、僕はもう、君のこと認めてるよ。ライバルとして、親友として」

「ありがとう・・・ま、最後のは僕の心の声とでも思ってくれたらいいさ。要は僕は僕に自信が持ちたいだけだから。何もない僕から」

「そ「わかってるよ。これはむしろ、僕の問題」ならいいか」


ありがとう、君の気持ちはとても嬉しいよ。だからこそ、ごめん。


「あ、でも僕も君のことは親友兼ライバルだって思ってるから」

「うわ、キモ」

「先に行ったのクレアじゃないか」


なんだよ・・・少し恥ずかしかったのに。でもいっか。また明日から頑張ろう。先輩たちと一緒に・・・あ、


「「シェミン先輩は!」」


すっかり忘れてた!やばい、どうしよう。連れ去られでもしていたら・・・・


「大丈夫だぜ。シェミンもサリアも無事だ」

「「グレン先輩」」


いつからそこにいたのだろう。暗闇の中でもわかる。ニッと笑って


「お前らが目覚めてくれよかったぜ・・・まってろ今あいつらを呼んでくるからな」


どたどたと走っていく音が聞こえてくる。とにかくよかった・・・全部、解決したんだ


「ははは、・・・はあ、シズクさんとかに怒られそう」


それを言うのはやめてくれ。考えないようにしていたのだから

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