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電気使いは今日もノリで生きる  作者: 歩海
第1章 失われた学校生活の続き
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血は水よりも濃いんだな

皐月一週目水曜日


「ミライ、起きろ」

「え?・・・んん?」


朝早くから起こされる。えーっとこういうときって美少女に起こされるのがお約束だったっけ。うちのギルドならばシェミン先輩かなぁ。呼び方が明らかに違っていたけどまあそれは気にしないことにする。そうだ起きたらきっとシェミン先輩が


「何言ってるんだ。早く起きてくれ気持ち悪い」

「・・・わかったよ」


まったく、この男子高校生の健全な思考を理解できないだなんて人生の2割くらいを損しているぞ・・・すみませんなんでもないです。わかったから起きるって。わざわざごめんな、クレア


「はあ、なんかシオン先輩が今日は早くここに行くんだって朝一からずっと張り切っててね」

「嫌な予感しかしない」

「それはそう」


どこか不安を抱えながらも食堂に向かう。そこにはいつもの先輩がたがみんな集合していた。


「おはようミライ。よく眠れたかい」

「眠れたかいじゃないでしょ。シオンあなたちゃんと伝えて差し上げてなかったのですね」

「え、あ、いや・・・・まあ伝えそびれてて」

「いつもそればっかりでしょ」


シズク先輩も知っているっていうことはそこまで危険ではないのかな。明らかにやばかったら止めてくれるからね。それで、今日はいったいなんの御用でしょうか


「ミライ今からすぐに裏山に向かうぞ」

「は?・・・あ、すみません」


脊椎反射で返してしまったらかなり失礼な態度を取ってしまってた。思わず心の声が漏れてしまった。この頭のおかしい人たちが唐突に頭おかしいことを言うのはいつものことだけど


「おい誰が頭のおかしい連中だ」

「すみません本音が」

「本音なのか?」

「グレン、黙りなさい」

「ええ、サリアまで」


サリア先輩代わりに説明してください。というか全部説明をお願いします


「わかりました。要約しますと」


今日午後から行う予定の授業を朝から受けるとのこと。言っている意味がわからないんですけど。


「そんなことできるんですか?」

「この授業の担当がセリアの兄ですので可能です」

「だから大分無茶な授業になってるんだよね〜」

「そのせいでなかなか新規参加者が増えないがな」


怖い、何度でも言おう。怖い。怖すぎるなにそれ。


「心配しなくても今日はあなたたち一年生がいるのでそこまで大丈夫ですわ・・・タブン」


不安を取り除こうとしてくれるサリア先輩には申し訳ないんだけど余計に不安が増しました。あなたまでもがそこまで言うってことはよっぽどじゃないですか。


「・・・早く・・・いこ?」


そうですね。いきましょう。もう出発しなければならない時間らしいし。もうどうにでもなれ






向かった先にいたのは全部で30人前後。思っていたよりもいたな。・・・まさかこの人たち全部化け物クラスなのだろうか


「へえ、今年はそこそこいるね」

「でも何人残るかな〜」


つまりは途中でやめる人が多いってことですね。なにするんだろう。あ、集団の真ん中にいる人がこっち向いた。どことなくセリア先輩と似ている気がするな。この人が話に聞いていたセリア先輩のお兄さんなのだろう


「セリア!久しぶりだなぁ」

「ユン兄・・・」

「サリアにシェミンにグレンスバルレイも久しいな」

「「「「「・・・・・」」」」」


すげぇあの人達をそろって絶句させちゃったよ。やっぱりやばい人なんだな。このユンさん


「いや〜今年は二年生がそれなりに来てくれてありがたいね〜相変わらず一年生は誰も来てないけど」

「ああ、この二人が一年だ。ミライとクレア」


あの、この流れで僕たちを前に出さないでもらえませんか。ほら、めちゃくちゃ目を輝かしているじゃないか。絶対目をつけられましたよ


「おお!そうかそうか!ミライにクレアね。覚えたぜ。1年か〜去年はいなかったからな俺はユン。よろしくな」

「「よろしくお願いします」」

「よし、じゃあ今日やることを伝えるぞ〜一年生もいるから最初っから飛ばしていくぞ」


聞いていたことと違うんですけど?あのサリア先輩?・・・露骨に目をそらさないでください。


「まさか逆効果だったとは」

「・・・予想外だったんですね」

「お前達にやってもらうことは簡単だ。まずは・・・一年生と新規生はこっちに来てくれ」


僕は一年生だからユンさんについていく。・・・さっきの30人のうちほとんどが来てるんですけど。どんだけ新規生多いんだって話だよ


「お前らこれをつけてくれ」


そう言ってユンさんが取り出してきたのは特になんも変哲もないリストバンド。


「これはいわゆる『魔力感知』を施してあるリストバンドだ。これをつけた状態で力を使うと大きな音がなる・・・例えばこんな感じだ」


ピーーピーーピーー


力を込めたんだろう。音が鳴り出した。結構大きくなるんだな。でもそれよりも


「ミライ、あの人なにした?」

「わからん」


あの人がなにをしたのかまったくわからないのが怖い。またよくわからないスキルの持ち主が現れたよ。隠しているだけかもしれないけど


受け取ったリストバンドを巻いていく。本当にただのリストバンドだよな。これがまるで魔道具だなんて信じられないよ


「受け取ったな。お前達にやってもらうことを伝えるぞ。まあなんだ。『鬼ごっこ』だ」

「「「「「は?」」」」」


鬼ごっこってあれだよね。よく子供の頃に遊んでるスポーツというか遊びの一つだよね。最初に鬼役と逃げ役を決めて鬼が逃げ役を捕まえたら鬼役を交代するっていう。地方によっては影踏みだとか高鬼とか色々なローカルルールを交えた遊びもあるとか


「場所はそこの山で鬼役は俺を含む上回生だ。時間はそうだな・・・一旦昼までだな三時間くらい」


初回でやるような内容じゃない。鬼役って一人じゃないのかよ。どちらかっていうと鬼ごっこよりもケイドロの方が近いのかな。そもそもグレン先輩から逃げられるわけないんだけど。僕だけじゃないにしても先輩達の恐ろしさを知っている二年生方からも不満が出てくる。そんなの不可能だろって


「もちろん魔力は使っても構わないぞ。なにをしても逃げ切れ」


いや、スキル使っちゃったらこのリストバンドによって場所がばれてしまうでしょうが。・・・ああ、さすがはセリア先輩のお兄さんだ。この人も頭おかしい


「まあさすがに俺も鬼じゃない・・・鬼役はやるけどな」

「くだらないこと言ってないで早く説明をしてくださる?」


突然聞こえてきた声。確かにくだらなかったけどほぼ初対面の人にあそこまで言える人ってすごいな「いやミライも同じだからね頭のおかしい人って」そうだけど・・・あ、なんだミラさんか。あの人も受けるのか


「お、ミラ来たのか。なんで去年来なかったんだよ」

「・・・」

「相変わらず釣れないな。ま、この条件でやるんだ。当然褒美も考えるさ・・・そうだなもし一度も捕まらなかったら鬼役の誰とでも1日デートできるとかどうだ?」


「「「うおおおおおお」」」


男たちの叫び声が響く。そりゃそうだよね。だって鬼役にはミラ先輩やサリア先輩、シズク先輩がいるからね。普通ならなかなかお近づきになれないような人たちだけどもしかしたら・・・って思いが出てくるもんね


「頭を冷やしてくださいね?ユンさん」

「・・・」


ユンさんに向けて魔法を放っていくミラ先輩とサリア先輩。女子側からしたらたまったもんじゃないよな。


「お、ちょ、待てってお前たちが全員捕まえればいいじゃないか。というかイオリやセレナを見習えって」


あの二人に任せておけば大丈夫だと思っているんじゃないかな。ひょいひょいっと簡単に避けていくから無駄に体力を使いたくないとか・・・なんであの攻撃を避けられるんだよ。そりゃ本気を出していない感じだけどさ


「じゃあ逆に全員捕まえることができたら私たちに褒美をくれますね?」

「わかったよ。じゃあ俺とのデート券・・・嘘です嘘です」

「新しい魔道具を一つ」

「わ、わかりました」

「一人一つですからね?」

「・・・はい」


うなだれるユンさん。いや、自業自得ですからね


「わかりました。ミラ、諦めましょう」

「・・・仕方ないわね。セレナ、イオリ、シェミン、シズクちゃんいいわね」

「ええ」「わかったわ」「・・・うん」「了解です」


というかそれで納得できるのかよ。それだけユンさんの作る魔道具って優秀なのかな。あ、シェミン先輩どうしたんですか?


「・・・さっき、・・・なんで私の名前を・・・あげなかった?」


さっき、ああデートに喜ぶ男たちにむけて抱いた感想ですか・・・確かに先輩の名前はあげませんでしたけどでも別に先輩が可愛くないわけではないですからね。むしろ普通に可愛い部類に


「・・・必ず・・・捕まえるから」


怖い・・・もう死亡が確定しましたクレア助けて


「無理」

「まあまあ〜シェミンちゃんもミライと仲良くしようって努力してるんだって〜これはそのスキンシップの一つだから〜」


たとえそうだとしても、もう少しやり方があったんじゃないですかね


「まあまあ諦めなって〜でも俺としては嬉しいかな〜」


どこか遠い目をするスバル先輩。この人がそんな表情をするなんて珍しいな。何かあったのかな。でも今はそれどころじゃない


「よーし、じゃあ。鬼ごっこ一回戦始め!」


よし、逃げ切るぞ!・・・・多分無理だけど。そしてユンさん、これ一回戦なのかよ

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